結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2018年06月24日(日曜日)

日曜版【猫の目博物誌 その67】ガクアジサイ

猫の目で見る博物誌――。
IMG_6903-4-10
久しぶりです。
季節は梅雨。

梅雨の花はアジサイ。IMG_5311.JPG8
学名Hydrangea macrophylla。
アジサイ科アジサイ属。

しかし、同じ株から咲いているのに、
花によって色が異なる。IMG_5310.JPG8
場所によって、
赤い花が多かったり、
青い花が多かったり。

時間の経過によっても、
花の色が変わる。

「アジサイの色変わり」。

その原因は色素と土壌にある。
〈詳細は2016年06月12日(日曜日)
【日曜版・猫の目博物誌 その6】アジサイに〉

アジサイの咲き始めは薄い黄緑色。
それから色が変わる。
酸性土壌で青いアジサイ、
中性・アルカリ性土壌で赤いアジサイ。

さらに同じ株のアジサイでも、
色は変わる。
それは同じ株にも多数の根があって、
根の場所によって、
土中から吸収する成分が異なるから。

さらに盛りが過ぎると褪色して、
色調もくすんでくる。

それは花の中の酸性の程度が、
強くなってきたから。

アジサイの群生は美しい。IMG_5361.JPG8

しかし日本産のアジサイは、
「ガクアジサイ」である。IMG_5371
学名はHydrangea macrophylla f.normalis。
英語ではlacecap hydragea。

日本の本州以南の海岸沿いに、
ガクアジサイが自生していた。
房総半島や三浦半島、伊豆半島、
さらに伊豆諸島、足摺岬、
南硫黄島、北硫黄島など。

半島や島の海岸のそばに自生したから、
「ハマアジサイ」の名称もある。IMG_5372
高さは2mほど。
大きなものは4mにも成長する。

花序は真ん中に多数の「両性花」があって、
それを中心に「装飾花」が周りを縁取る。
IMG_5302.JPG8
「花序」とは花の配列状態のこと。

中心に小さな蕾のような花びらが集まる。
これが雄しべと雌しべをもつ両性花。

その外側には「ガク」が、
大きな花びらのように付いている。
これが「装飾花」で、
ガクは種子をつけない。

ガクは葉が変化した花を守る部分で、
花の色と同調している。IMG_5303.JPG8
だからガクは葉と同じ模様を持つ。

ホンアジサイは、
このガクの装飾花が、
本命の花のように見える。

ガクアジサイの名称の「ガク」は、
この花の配列が、
「額縁」に似ていることに由来する。

葉は厚くて、大きい。
葉の表面は濃緑色で光沢がある。IMG_5373
蕾はまだ開いていない花のことだが、
それが成長して中心の両性花となる。

横から見たガクアジサイ。
IMG_5307.JPG8

両性花が上に、
装飾花が下に。
IMG_5308.JPG8

それが群生している。IMG_5369.JPG8

赤紫のガクアジサイ。IMG_5363.JPG8

むしろガクアジサイのほうが、
本来のアジサイだ。IMG_5365.JPG8

ガクアジサイは俳句の世界では、
「額の花」と表現される。

才能に適不適あり額の花
〈1999年、「いろり」より桑垣信子〉

アジサイは色変わりする不思議な花です。
けれどガクアジサイは、
本物の姿を見せてくれる。
DSCN8963-2016-4-10-66666
ボクはガクアジサイのほうが、
好きなんです。

(『猫の目博物誌』〈未刊〉より by yuuki)

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