結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2018年06月27日(水曜日)

評伝|宗像守はドラッグストアに「永住権と本籍地」を与えた。

宗像守さんが亡くなった。
日本チェーンドラッグストア協会事務総長。
享年63。
〈日本リテイル研究所公式サイトより〉
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昨日の6月26日午前7時45分。
心不全と診断された。

私には突然の訃報だった。
心から哀悼の意を表したい。

しかし、早い。
早すぎる。

惜しい。
惜しすぎる。

宗像さんは1955年6月28日生まれ。
だから63歳の誕生日の2日前に、
永眠したことになる。

宗像さんは、
(株)日本リテイル研究所所長、
超一流のコンサルタントである。

その経歴。
大学を卒業してから、
政治家秘書などを務め、
(株)ダイクマで実務を経験。
その後、コンサルタントに転身。

[1985年9月、30歳]
日本リテイル研究所設立
[1995年9月、40歳]
ドラッグストアMD研究会設立
[1997年11月、42歳]
ドラッグストア産業化推進センター設立
そして[1999年6月、43歳]
日本チェーンドラッグストア協会設立
[2001年3月、45歳]
ジャパンドラッグストアショー開催
[2007年4月、51歳]
日本薬業連絡協議会設立
[2009年6月1日、53歳]
約50年ぶりの薬事法改正

いずれも、思ったより若い時の実績だ。

そのうえ公的な役職も数限りなく務める。
日本薬業連絡協議会議長
一般社団法人日本医薬品登録販売者協会理事
一般社団法人日本薬業研修センター理事
一般社団法人流通問題研究協会理事
ドラッグストアMD研究会主宰
公益財団法人流通経済研究所特任研究員

朝早くから、夜遅くまで、
仕事に次ぐ仕事。

「無茶をせず、無理をする」は、
結城義晴の標語だが、
宗像守は違う。
「無茶の上に無茶を重ねる」

日本チェーンドラッグストア協会。
初代会長は松本南海雄さん。
(株)マツモトキヨシホールディングス。
第2代会長は寺西忠幸さん。
(株)キリン堂ホールディングス。
第3代会長は関口信行さん、
(株)龍生堂本店。
そして第4代会長は青木桂生さん、
(株)クスリのアオキ代表取締役会長。

この人選と人事も、
宗像守ならではの仕事だ。

チェーン化を指向する、
ドラッグストアの社会的な役割を果たす。
宗像さんは、この協会創設時の、
縁の下の力持ちとして、尽力。

私も微力ながら、
お手伝いさせてもらった。

ドラッグストア産業化推進センターも、
日本チェーンドラッグストア協会も、
設立の時には宗像さんに請われて、
一役を担った。

そしてこの協会には、
ずっと追い風が吹き続けた。
日本の「少子高齢化」現象である。

宗像さんはこの潮流に対して、
「セルフメディケーション」の
新しいコンセプトを提言し、
強力に推進した。

セルフメディケーションとは、
患者、生活者が、
自ら(セルフ)責任を持って、
医薬治療(メディケート)することだ。

2002年3月、宗像守著。
「セルフメディケーションが日本を救う」
サブタイトルは、
「少子高齢化時代の健康国家づくりと
医療費軽減を両立するシステム」
(株)商業界刊。
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この本に宗像守のビジョンは、
余すところなく描かれていた。
当時の私は商業界取締役編集担当で、
この画期的な本の編集人として携わった。

そんな社会が、必ず訪れる。
だからドラッグストアは、
重要な社会的使命を持っている。

これが宗像守の信念だった。

そこで宗像さんは自ら、
二つのアプローチを実践した。

「産業化のためには、二つの軸が必要です。
社会は三権分立で出来上がっています。
司法はアンタッチャブルでなければならない。
だから、立法と行政に働きかけることです」

この考え方は、残念ながら、
他の小売業協会には欠落していた。

唯一、清水信次さんが例外である。
(株)ライフコーポレーション会長。
まさにポリティカルマーチャント。

宗像さんはまず、
2002年の経済産業省「商業統計」に、
「ドラッグストア」の業態区分を作らせた。

このとき、彼は発言した。
「ドラッグストアは、
永住権を手に入れた」

そして2007年、
総務省の「日本標準産業分類」に、
「ドラッグストア」が新設された。

「日本標準産業分類」は、
日本国内の産業分類の基礎をなすものだ。

ドラッグストアの定義は、
以下のようになった。
「医薬品、化粧品を中心とした
健康および美容に関する、
各種の商品を中心として、
家庭用品、加工食品などの最寄品を
セルフサービス方式によって
小売りする事業所」

これによって、
「ドラッグストア」という言葉は、
政令や省令などの公用文書に、
登用されるようになった。
予算措置を筆頭にした行政施策にも、
登場し始めた。

宗像さんは再び、発言した。
「ドラッグストアが、
本籍地を得た」

宗像守は「ドラッグストア」に、
「永住権」をもたらし、
「本籍地」を獲得させた。

宗像さんは、
私の良きライバルであるとともに、
心をひとつにする同志であった。

最後に会ったのは3月16日。
第18回ジャパンドラッグストアショー。
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ドラッグストア産業6兆8504億円。
現時点で唯一、伸び続けている業態だ。

宗像さんの貢献が実に大きい。

しかし宗像さんはずっと、
「10兆円産業」を謳ってきた。

そしてそれが実現する前に、
この世を去ってしまった。

日本のドラッグストア産業にとって、
本章はこれから始まる。

現在はまだ、序章である。

だからこそこれから、
宗像守の存在は必須だった。

だが、それはかなわない。

残った者たちが、
宗像守の遺志を引き継ぐしかない。

幸いにしてこの産業は若い。
経営者たちも若い。
それが希望の灯だ。

今は、心からご冥福を祈りつつ、
宗像守のビジョンを反芻するばかりだ。

合掌して、黙祷。

〈結城義晴〉

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