「炎暑の列島への”急襲”」。
毎日新聞「余録」が表現した。
台風12号、本州中央部に上陸。
〈tenki.jpより〉
「小笠原諸島方面から、
左にカーブして列島を襲い、
そのまま西進する台風」
見たことがない。
経験したことがない。
空前の広域豪雨、
記録破りの猛暑、
そして台風までも。
世界的に異常気象が伝えられる、
「見なれぬ夏」。
だから私たちも、
従来の常識にとらわれてはならない。
「災害列島住民の用心と連帯」が必要だ。
昨日の日経新聞「大機小機」
コラムニストは見識のある追分さん。
日本は震災リスクを抱えている。
インフラ全体の強靱化が課題である。
ただし、これまでの教訓を踏まえれば、
「ハードのインフラ整備には限界」がある。
だからソフト面を組み合わせる。
さらにコラムニストの提案。
「これまでも国は防災の観点から
様々な取り組みを進めてきたが、
実際の災害発生時にも
国レベルで迅速に対応できる体制を
つくる必要があるのではないか」
米国には連邦緊急事態管理局がある。
1979年設立。
Federal Emergency Management Agency。
FEMAと略し、「フィーマ」と呼ぶ。
連邦政府の国土安全省に属する。
大規模災害が発生した場合に、
支援活動を組織、統括する。
かつて日本版FEMAの創設が検討された。
しかし創設は見送られた。
「積極的な必要性は直ちに見出しがたい」
コラムニスト。
「想定される災害は大規模化している。
これまでの経験を適切に生かし、
災害現場での対応力と調整力を
高める必要があろう。
FEMA創設を再検討すべきではないか」
大いに賛成だ。
それと同時に、
小売業や外食業、サービス業も、
店の機能をもつ企業に求められるのは、
「凡事徹底・有事活躍」。
店は、平時にはつつがなく営業して、
顧客の満足や価値を創り出し、
結果として売上げと利益を生みだす。
しかし有事のときには、
人間の生存の拠点となり、
インフラを超えて活躍する。
このとき平時の力が、有事に生きる。
ウォルマートには、
特別の部署がある。
「ビジネス・コンティニュイティ」
(Business Continuity)
ビジネスをつつがなく継続させる部署。
2005年8月24日の水曜日、
メキシコ湾にハリケーンが発生した。
有名な「カトリーナ」。
ウォルマートではすぐに本社内に、
非常時の指揮センターが立ち上げられた。
ビジネス・コンティニュイティの担当者が、
その指揮センターの中核を担った。
5日後の8月28日の日曜日、
カトリーナはニューオーリンズに上陸。
多くの店が被災した。
そのときに指揮センターは、
被災地周辺の店舗へ、
緊急物資の配送を始めていた。
29日月曜日と30日火曜日には、
2400台の自社トラックが動いていた。
その結果、9月2日の金曜日には、
15店の重大な被害を受けた店以外、
150店以上の被災店舗は営業を再開した。
もちろん被災した店舗では、
略奪や窃盗が頻発した。
しかし正常化した店々には、
顧客が殺到した。
1時間ごとに入場制限して、
顧客の入れ替えをするほどだった。
このウォルマートの活躍は、
FEMAよりも迅速で正確で大規模で、
あらためてチェーンストアや消費産業の、
存在の意義を内外に示した。
国レベルの日本版FEMAの創設。
地方自治体や地域コミュニティの連携。
有店舗消費産業の凡事徹底・有事活躍。
それぞれの企業だけでなく、
協会や団体の災害対策協力。
ちなみにウォルマートの、
ビジネスコンティニュイティは、
平時には各地域ごとに店舗を巡回して、
万引きの摘発などの業務を担う。
有事のときにはすぐに、
「プロトコル」なるマニュアルに従って、
自動的に動き出す。
これも「凡事徹底・有事活躍」である。
〈結城義晴〉