創意を尊びつつ良いことは真似ろ。
倉本長治の「商売十訓」第2訓。
アメリカにやってくるとき、
いつも強調すること。
かの地の良いところは真似る。
しかし自分の創意は尊ぶ。
ただひたすら真似るだけというのは、
まったくもってよろしくない。
トレーダー・ジョーの真似は、
とてもじゃないができない。
ウォルマートの真似も、
誰もできない。
ウォルマートはその50兆円を背景に、
すべてのマネジメントや、
オペレーションを組み立てている。
トレーダー・ジョーも、
1兆5000億円で500店。
それを背景に、
自分のイノベーションを展開している。
だからそこに至るプロセスを学ぶ。
それが何より大事だ。
すぐ役に立つことは、
すぐに役立たなくなる。
羽田空港から12時間。
大西洋が見えてきた。
朝日が上がってくる。
そしてニューヨークの端にたどり着いた。
ジョンFケネディ空港に到着。
すぐにバスに乗り込んで、
ホテルに直行。
ワトソンホテル。
そしてSeminar。
前田仁さんが口火を切って、
万代ドライデイリー会米国勉強会が、
始まる。
前田さんはドライデイリー会事務局長。
今日はゲスト講師。
山口光郎さん。
米国三菱商事会社、
生活産業グループニューヨーク生活産業部部長。
アメリカの買物に関する調査と、
米国小売業界動向を、
簡潔に報告してくれた。
最近のトレンド商品も陳列して、
具体的にホットなアイテムを紹介。
そのあとは結城義晴。
今回は事前講義ができなかったので、
基礎的な情報や重要な見方を、
これまた簡潔に講義した。
みんな疲れがあるにもかかわらず、
よく聞いてくれた。
そしてすぐにブルックリンへ。
ホールフーズの環境対策店舗。
2階の屋上に有機農法のハウスがある。
ここでつくられた商品には、
「ゴッサムグリーン」という、
ブランドがつけれている。
入口を入ると青果部門。
今日の一丁目一番地は花。
左手に素晴らしい花売場。
ホールフーズの生命線を握る青果部門。
いつ見ても美しい陳列。
その上、よく売れている。
いい店は、
売れていて、
しかも美しさが
損なわれない。
アマゾン・プライム会員には、
この商品が10%割引される。
昨年8月28日、ホールフーズは、
アマゾン・コムの傘下に入った。
それ以降、アマゾン+ホールフーズの、
ディスカウント攻勢が続く。
モッツァレラチーズと、
屋上菜園生産のゴッサムグリーン商品の、
関連販売。
よく売れている。
シーフード部門は、
圧倒的な品ぞろえと鮮度を誇る。
日本の鮮度と比べてはいけない。
アメリカのシーフードとして、
一級品ならいい。
コーヒーは豆からひいて販売される。
ひき肉もアマゾン・プライム会員に割引。
これは「レベル4」の放牧した牛の、
ポーターハウスステーキ。
ウォルマートは精肉を、
環境や肥育状態などで、
5段階評価している。
その4段階商品である。
牛乳は1ガロン4.09ドル。
1ガロンは3.8リットル。
ずいぶん安くなった。
乳製品売場はリーチインケースばかり。
環境対応のためだ。
卵もケージフリーが原則。
ノンGMO(非遺伝子組み換え)も原則。
チーズ売場のプレゼンテーション。
そしてチーズからデリへ。
生パスタの売場が新たに登場。
定評のあるセルフデリ。
湯気が立つ売場はホールフーズ特有。
そして新設されたのがこれ。
ジュースとコンブチャのバルク販売。
ラガービールのように取り出して、
好きな量を買うことができる。
そしてこの容器に入れる。
値段は容量ごとに3種類。
対面にある冷蔵多段ケースには、
コンブチャがずらり。
大ブームのコンブチャ。
日本でもブームになった紅茶キノコだが、
ホールフーズの差別化アイテムとなる。
デリ部門は対面とセルフをミックスして、
すぐに食べられる態勢を整える。
ホールフーズはグロサラントの先駆者だ。
バルク売場も環境対応である。
そして驚いたのがレジの後ろ。
デリバリーの作業場とストック場となった。
冷凍商品のストック。
スマホでオーダーを受けて、
店でピックアップされ、
デリバリーを待つ。
こちらは冷蔵ケースに保管されたデリバリー商品。
プライムナウは、
ホールフーズの全店で展開されている。
非冷商品の棚。
ホールフーズが、
ネットスーパーに変わっている。
屋上のハウス。
万全な管理でオーガニックが生産される。
2階にはビールバー。
ここで飲食もする。
雨が降っているがレジは混んでいる。
アマゾンはこの企業を、
135億ドル(1兆3500億円)で買った。
安い買物だった。
つづいて、
トレーダー・ジョー。
銀行跡に入って大繁盛店。
入口の第一エンドは、
サンクスギビング対応。
左手に入ると生鮮部門。
青果にも新しいアイテムが、
次々に導入される。
リンゴも楽しい売場だ。
そして正面がミート。
天井は高く快適な店だ。
乳製品はトレーダー・ジョーにとって、
いつも最強の武器となる売場だ。
そして必ずデモンストレーション。
レジ待ち顧客のための2つのレーン。
しかし今日は雨が降っていて、
金曜日の夕方としては、
顧客数が少ない。
駐車場がない店は、雨には弱い。
それでも他の店に比べると、
客数が少ないとはいえないが。
入り口わきに花売場。
そして今、強調されているのが、
すべてのゴンドラに付けられたフック陳列。
歯磨き粉売場に歯ブラシ。
オリーブ油売場にオリーブ。
ホールフーズとトレーダー・ジョー。
凄い企業の凄い店。
堪能した。
しかしもう1店。
ホールフーズ。
ディスカウント型新フォーマット、
ホールフーズ365。
トレーダー・ジョーをターゲットにした、
新しいディスカウントフォーマット。
1階入り口にはイートインコーナー。
夕方でも混んでいる。
その1階にはアマゾン会員向けの、
ネット注文ロッカー。
プライム会員の特典が、
ブルーパネルに大きく書かれている。
プライム会員は、
ネット注文で10%オフになる。
入口を入るとすぐに、
オーダー式のカフェカウンター。
パンやスナック、飲料を販売する。
その横にイートインコーナー。
ビールやサイダー、ワインを、
グラスで販売する。
スーパーマーケットは、
地下1階にある。
エスカレーターで誘導する。
エスカレーターを降りると
美しい青果部門が見えてくる。
バナナ売場は、
多段什器でボリューム展開。
電子タグを使っている。
コロンビア産バナナが、
1本19セント。
つまり1本売り。
これはトレーダー・ジョーの専売特許。
それを真似ている。
葉物などは多段の冷蔵ケースに
クレートのままで陳列する。
省力化のために、
箱のまま陳列する。
ホールフーズのレギュラー店舗とは、
全く陳列が違う。
しかし葉物コーナーは、
通常店と同じく、フック陳列。
商品面がよく見える。
ニンジンやセロリ、
ビーツなどが入ったキット。
焼くだけ、ボイルするだけで、
メニューができあがる。
単品量販の店であるから、
アボカドとトマトは、
これだけの量を並べる。
マッシュルームなどのキノコ類は、
アウトパックされて、納品される。
それを並べるだけだ。
果物もクレートのまま並べる。
通常のホールフーズの陳列とは、
大きく異なって、
ローコストオペレーションに徹する。
加工肉などは蓋つきの冷蔵ケースで販売。
ビーフもパックのセルフ販売。
PB365の商品として、
特徴が記され、
精肉5段階評価が印字される。
ハンバーグ用ミンチも、
パッケージ販売されている。
売り方はウェグマンズの模倣だが、
ずいぶん安くて、お手ごろになった。
それでもホールフーズらしく、
通路は曲線で、お客を誘導する。
壁面の装飾が素晴らしい。
ディスカウント型ローコスト店舗だが、
デザインは斬新だ。
これがこの店の特徴で、
それがトレーダー・ジョーと、
異なるポジショニングをつくる。
シンプルな什器で、
パンの関連販売をしている。
多段の什器だが、
トレーを置いただけ。
しかも顧客が商品を取ると、
商品がスライドして下がってくる。
壁面は可視率が高い、
枠の細い冷蔵リーチインケース。
そして商品はフック陳列。
オリーブバーもある。
チーズ&ハム・ソーセージの売場も、
セルフセレクション。
飲料もリーチインケースで販売する。
ローコストオペレーションと同時に、
省エネを徹底している。
バルク売場は、
通常のホールフーズより狭い。
蓋つきの白いケースを置いただけの、
シンプルなつくり。
それでも色づかいが良いので、
小洒落れて見える。
ビールの6本パックを、
可動式4ウェイ什器で、
主通路展開。
ウォルマートの島陳列と同じ。
ここではウォルマートを真似る。
牛乳の売場。
1ガロン3.39ドル。
1リットル89円。
ここまで価格対応してきた。
冷凍食品部門は、
両サイドに蓋つき平ケース。
この売場もデザイン性に優れる。
最後にデリのセルフバー。
ローコスト店舗だが、
什器は薄いグリーン色で統一される。
つまりローコスト・ハイセンスだ。
ニューヨークはサラダ文化のメッカ。
売れ筋に絞ったサラダ。
ベーカリーもセルフ販売。
真ん中に餅アイス。
ガラスケースでパンを売る。
店内はすべてパステルの色調だ。
チェックアウトレジは、
銀行方式。
サービスカウンター。
ローコスト運営のホールフーズ365。
トレーダー・ジョーを狙い撃ちして、
若いミレニアル世代を中心に、
支持されている。
ローコスト・ハイセンス。
ロープライス・ハイクォリティ。
それがホールフーズ365だ。
3店舗の視察を終えて
夕食会場へ。
シーフードレストランの
ロージー・オグラデイ。
乾杯の音頭は木村敏弘さん。
加藤産業㈱専務取締役。
万代ドライデイリー会副会長。
参加者はグループに分かれて行動する。
その各班のあいさつ。
ニューヨークで何を学ぶのか。
それぞれが発表した。
㈱万代の阿部秀行社長。
万代からは3名が同行。
中締めは加藤健さん。
万代取締役総務担当。
長いながい一日だった。
ホールフーズはどんどん変わっている。
アマゾン・ドットコムと、
正面から向き合っているからだ。
その影響もあって、
ディスカウントタイプの365は、
明確なポジションを獲得しつつある。
そしてトレーダー・ジョーも、
変化を遂げている。
この変化のスピードと、
変化のベクトルが、
それぞれの企業の価値を示す。
そして変化のスピードは、
ひたすら真似る者からは生まれない。
真似られる者が真っ先に、
変化しているからだ。
変化のベクトルは、
何よりも自分の強みにこそ、
根ざしていなければならない。
(つづきます)
〈結城義晴〉