今日から師走。
2018年12月。
関東地方ではまだ、
木枯らし1号が吹かない。
なんと39年ぶり。
39年前の私は、
㈱商業界販売革新編集部所属で、
駆け出しの編集記者だった。
西日本新聞巻頭コラム「春秋」
木枯らし1号を説明。
西高東低の気圧配置に伴って
北から吹きつける
毎秒8メートル以上の寒風のこと。
気象庁が毎年、関東と近畿で、
第1波の訪れを発表している。
関東は10月半ばから11月末、
近畿は二十四節気の霜降から冬至の間が、
観測期間とされる。
近畿地方の木枯らし1号は、
11月22日に吹いた。
二十四節季の「小雪」の日だった。
今年は「大雪」が12月7日、
「冬至」は12月22日だ。
まだまだ師走らしくはないが。
北海道新聞の巻頭コラム、
「卓上四季」
やはり師走を語る。
「芝浜」や「文七元結(もっとい)」は、
古典落語を代表する人情ばなしだが、
共通点は他にもある。
どちらも季節が年末なのだ。
立川談志は「芝浜」を得意とした。
「掛け売りが基本の江戸時代、
金策を巡る悲喜劇が
あちこちで起こる年末」
芝浜、は年越しの金がない魚屋が主人公。
文七元結も暮れに借金を抱えた男の娘が、
身売りしようとするはなし。
コラムは問いかける。
「現代は、年末だからといって
借金取りに追われることは
そうはあるまい。
ただ、この1年間にたまった
さまざまな”ツケ”を清算したいと、
少々焦ることはないだろうか」
そして八木久江の一句。
余白すぐ消ゆる師走の予定表
「どうか、心残りのないよう」
しかし私の師走は、
文月、神無月、霜月よりも、
忙しくはない。
日本に居続けて、仕事にまい進する。
さて日経新聞の記事。
「セブン、都内で灰皿撤去へ」
セブン-イレブンが、
東京都内の加盟店に対し、
店頭にある灰皿の撤去を要請する。
理由は、
「来店客や近隣住民からの苦情」
それが増えている。
6月に東京都議会で、
受動喫煙防止条例が成立した。
以降、セブンのお客様相談室には、
店頭の灰皿撤去の要請が増えた。
店付近での禁煙を求める声も急増した。
前年比で4倍。
「コンビニ大手が灰皿の大規模な撤去を
加盟店に促すのは初めて」
しかし「灰皿は加盟店の備品で、
実際に撤去するかどうかは
加盟店オーナーが判断する」
「セブンは東京都内に約2700店を展開。
このうち4割弱の1000店で、
灰皿を置いている」
「オーナーへの事前説明では
前向きに検討するという声が多かった」
「セブンの全国2万店超のうち
96%の店舗がたばこを扱っており、
タバコの販売額は全体の約25%を占める」
驚くでしょう?
売上げ全体の4分の1がタバコ。
いまやコンビニはタバコ屋でもある。
タバコは購買頻度が高い。
利用客の繰り返し来店につながる。
だから「灰皿を撤去した後の
売上げや客数などを検証し、
撤去要請を全国に
拡大するかどうかを判断する」
アメリカのCVSヘルス。
ドラッグストア第一の大チェーン。
2014年9月3日からタバコ販売を止めた。
それと同時に社名変更を断行。
それまでの「CVSケアマーク」を、
「CVSヘルス」へ。
ドラッグストアの店名は、
CVSpharmacy。
商人舎流通Supernewsは、
2014年9月4日にそれを報じて、
「米国民のマインドシェア高める」と高く評価した。
タバコ販売を中止した後の第4四半期。
調剤以外の商品群は、
既存店ベースで7.2%ダウンした。
タバコ販売停止の影響だと分析された。
しかし逆に調剤薬の売上げは5.5%増加。
タバコ販売のマイナスを相殺して、
既存店前年同期比は1.6%の増加となった。
これこそマインドシェア確立の好例だ。
売上げを減らしてでも、
マインドシェアを高める。
売上げを減らすほどの決意。
そうして客層を絞って、
アイデンティティを構築する。
マインドシェアとは、
生存を賭けた自己の確立である。
アイデンティティそのものである。
アメリカの喫煙率は、
1965年に42%だった。
それが現在、18%まで下がった。
サンフランシスコでは、
市条例でタバコ販売が禁止されている。
マサチューセッツ州でも、
いくつかの都市で販売禁止。
厚生労働省国民健康栄養調査によると、
日本人成人の習慣的喫煙者の割合は、
2017年段階で17.7%。
男性 29.4%、女性 7.2%。
セブン-イレブンの灰皿撤去要請も、
前向きな政策だろう。
しかし、タバコの販売は、
もちろん継続する。
4分の1の売上構成比だから、
死活問題になる。
ちなみに東京都は、
受動喫煙防止条例によって、
20年4月以降、
8割以上の飲食店が禁煙になる。
タバコ販売を止めること。
店頭の灰皿を撤去すること。
ずいぶん落差のある話だが、
セブン-イレブンがタバコ販売を止めて、
セブン-イレブン・ヘルスに社名変更したら
拍手喝采を受けることだろう。
初夢を先取りしすぎたか。
〈結城義晴〉