明日は冬至。
1年で一番昼が短い。
明るい時間がいとおしい。
横浜商人舎オフィスの横。
浅間下からみなとみらいを望む。
一番奥にランドマークタワー。
横浜の象徴。
ランチのあと、
セブン-イレブンを視察。
鈴木綾子と城山佳代子。
この店は生鮮食品の品ぞろえが豊富だ。
しかも安い。
店から出てきたら二人は別の方向へ。
オフィスの窓から、
冬空が見える。
それでも暖冬の空。
今日は将棋の第31回竜王戦、
最終7局の2日目。
羽生善治竜王はもう48歳。
まだ48といったほうがいいか。
かつて1995年には、
将棋界のすべてのタイトルを獲得して、
史上初の七冠となった。
25歳の時だった。
現在はこの竜王のタイトルだけ。
だから今日の防衛戦最終局に負けると、
27年ぶりの無冠となる。
ただし今日勝利すると、
タイトル獲得100回目となる。
対する挑戦者は広瀬章人七段。
31歳となった天才。
23歳の時に王位のタイトルを獲った。
その頃は、見事な振り飛車を指した。
しかしその後、本格的な居飛車党に変身。
そして今期、竜王戦の挑戦者になった。
そしてここまで超天才の羽生と、
3勝3敗までこぎつけた。
平成最後の大一番。
夕方、決着がつきそうな局面。
AbemaTVで見ていた。
羽生竜王が8八歩と打って、
広瀬七段が8二金と飛車を取ったところ。
羽生の手番。
もう完全に終わっている。
羽生の負けははっきりしていて、
逆転は考えられない。
しかし投げない。
167手まで粘った。
そして投了。
羽生は深々と頭を下げた。
広瀬もそれに応じた。
この瞬間、広瀬章人竜王が誕生した。
羽生善治は無冠となって、
羽生九段と呼ばれることになる。
広瀬はやり遂げた満足感というより、
全力を出し切った脱力感。
羽生は悔しさよりも、
深い感慨にふけっている様子。
走馬灯のように、
たくさんの局面が頭を巡ったのだろう。
将棋界は新しい時代に入った。
藤井聡太という天才が登場して、
広瀬らの中堅や20代の若手が、
驚くほどの成長を見せた。
その意味で面白くなった。
七大タイトル保持者も6人の戦国時代。
名人は佐藤天彦/30歳、
王将は久保利明/43歳、
棋王は渡辺明/34歳。
棋聖と王位は豊島将之/28歳、
王座は斎藤慎太郎/25歳。
そして竜王に広瀬章人/31歳。
20代が2人、30代が3人、40代が一人。
羽生善治が無冠となって、
急に衰えていくか、
それとも復活するか。
そして今、16歳の藤井聡太はいつ、
タイトルを獲得するのか。
私は将棋ウォーズというゲームソフトで、
日本将棋連盟公認の四段を持つ。
少しは将棋のことがわかる。
50代から60代になると、
確実に衰える。
読みに対する「根気」がなくなる。
羽生にどこまでそれができるか。
昨日書いたが渋沢栄一翁の言葉。
「四十、五十ははなたれ小僧
六十、七十は働き盛り
九十になって迎えが来たら
百まで待てと追い返せ」
現代はそうもいかない。
特に将棋界は若返りが激しい。
しかしそれでも、
佐藤一斉の「言志四録」。
少(わ)かくして学べば
すなわち壮にして為すこと有り
壮にして学べば
すなわち老いて衰えず
老いて学べば
すなわち死して朽ちず
羽生に関しては、
壮にして学べば、
老いて衰えず。
故大山康晴十五世名人は、
晩年、ガンと闘病しながら、
60歳でNHK杯トーナメントで優勝、
63歳で名人戦の挑戦者、
66歳で棋王戦の挑戦者となった。
1992年、68歳で、
最高位のA級順位戦を戦い、
休場せずに生涯現役を貫き、
A級の地位を守ったまま逝去した。
私もこうありたいと思う。
人生、いつも、
冬至の前日だと考える。
その当時の前日に、
羽生善治が無冠となった。
その羽生善治の言葉。
楽観はしない。
ましてや悲観もしない。
ひたすら平常心で。
これが羽生の心。
同じ方法で悪くなる。
だから捨てなきゃいけない。
せっかく長年
築きあげてきたものでも
変えていかなくてはならない。
毎回石橋を叩いていたら
勢いも流れも
絶対つかめない。
自ら、変われ!
リスクを避けていては、
その対戦に勝ったとしても
いい将棋は残すことはできない。
次のステップにもならない。
それこそ、私にとっては、
大いなるリスクである。
いい結果は生まれない。
私は積極的にリスクを負うことは
未来のリスクを最小限にすると、
いつも自分に言い聞かせている。
リスクを避けてはいけない。
怖がってはいけない。
勝負の世界では、
「これでよし」と
消極的な姿勢になることが
一番怖い。
常に前進を目ざさないと、
そこでストップし、
後退が始まってしまう。
常に前進しなければ、
それは後退である。
遠回りしながらも、
もがいて身につけたものの方が、
簡単に得たものよりも
後々まで役立ちます。
もがいて身につける。
すぐ役立つことは、
すぐ役立たなくなる。
〈橋本武〉
山ほどある情報から
自分に必要な情報を得るには、
「選ぶ」より
「いかに捨てるか」の方が、
重要なことだと思います。
選ぶより捨てる。
誰でも最初は真似から始める。
しかし、
丸暗記しようとするのではなく、
どうしてその人が
その航路をたどったのか、
どういう過程で
そこにたどり着いたのか、
その過程を理解することが大切だ。
これが学び方の王道だ。
創意を尊びつつ良いことは真似ろ。
倉本長治。
小売流通業の仕事に役立つ言葉ばかりだ。
そしてこれらの言葉は、
これから羽生善治自身に向けられる。
頑張れ。
〈結城義晴〉