大坂なおみ。
テニス4大トーナメントの全豪オープン。
女子シングルスで優勝。
おめでとう。
感動した。
オーストラリアのメルボルン。
ロッド・レーバー・アリーナ。
懐かしい。
レーバーとローズウォール。
オーストラリアの両雄だった。
大坂はこの大会の第4シード。
世界ランキングは4位まで上がってきた。
21歳。
決勝の相手はペトラ・クビトバ。
ウィンブルドンで2度の優勝を飾っている。
今大会は第8シード。
チェコの28歳。
第1セットはタイブレークを制して、
大坂が先取した。
第2セットは、
このポイントを獲れば優勝という、
チャンピオンシップポイントを握った。
しかしクビドバの気力の粘りで、
第9ゲームから4ゲーム連続で取られ、
逆転された。
しかし、最終セットは大坂が、
気持ちを取り戻して、
ゲーム5対4の第10ゲーム。
それもフォーティ・ラブ。
大坂のサービス。
ダイナミズムにあふれている。
第3セットは落ち着いて、
しっかりゲームを決めた。
表彰式も感動的だった。
大きな銀のトロフィー。
準優勝のクビトバは大きな銀杯。
2016年、クビドバは、
オリンピックで銅メダル。
しかし12月20日に、
自宅に不法侵入した強盗に襲撃され、
利き手の左手に重傷を負った。
その左手の神経修復手術を受けて、
見事復帰。
このゲームでも復帰した精神力を発揮。
素晴らしい決勝戦となった。
大坂なおみは昨年8月、
全米オープンでグランドスラム初優勝。
そしてこの全豪オープン優勝で、
世界ランキング第1位。
ハイチ系アメリカ人の父と日本人の母。
法的には日米二重国籍だが、
所属は日本テニス協会。
日本、アメリカ、ハイチ。
なおみは、3つの国を、
代表している自分を誇りにしている。
すばらしい。
21世紀の日本人の在り方の一つだ。
それがさらに共感を呼ぶのだと思う。
レーバー・アリーナは開閉式のコートだ。
準決勝はコートの屋根が閉まっていた。
今、夏の南半球は酷暑だ。
なおみのコメントがいい。
「暑いのが好きなのに残念。
屋根が開いていると、
私が輝く日だと思えるから」
その大坂なおみに、
茨木のり子の詩を捧げよう。
最近凝っていて、
いつも読んでいる。
ぎらりと光るダイヤのような日
短い生涯
とてもとても短い生涯
六十年か七十年の
お百姓はどれだけの田植えをするのだろう
コックはパイをどれくらい焼くのだろう
教師は同じことをどれくらいしゃべるのだろう
子供達は地球の住人になるために
文法や算数や魚の生態なんかを
しこたまつめこまれる
それから品種の改良や
りふじんな権力との闘いや
不正な裁判の攻撃や
泣きたいような雑用や
ばかな戦争の後始末をして
研究や精進や結婚などがあって
小さな赤ん坊が生まれたりすると
考えたりもっと違った自分になりたい
欲望などはもはや贅沢品になってしまう
世界に別れを告げる日に
ひとは一生をふりかえって
じぶんが本当に生きた日が
あまりにも少なかったことに驚くであろう
指折り数えるほどしかない
その日々の中の一つには
恋人との最初の一瞥の
するどい閃光などもまじっているだろう。
<本当に生きた日>は人によって
たしかに違う
ぎらりと光るダイヤのような日は
銃殺の朝であったり
アトリエの夜であったり
果樹園のまひるであったり
未明のスクラムであったりするのだ
〈『見えない配達夫』より〉
なおみはどれくらい球を追うのだろう
どれくらいラケットをふるのだろう
なおみはどれくらい球を打つのだろう
なおみのぎらりと光るダイヤのような日は
センターコートの勝利のときである。
〈結城義晴〉