2月24日。日曜日。快晴。
日本という国のことを、
しみじみと考えさせられる日だった。
今上天皇陛下の在位30年記念式典。
5分24秒の「お言葉」。
「象徴」という人類の歴史にない役割を、
模索する日々だった。
その天皇像を模索する道は、
果てしなく遠かった。
「私がこれまで果たすべき務めを
果たしてこられたのは、
その統合の象徴であることに、
誇りと喜びを持つことのできる
この国の人々の存在と、
過去から今に至る長い年月に、
日本人がつくり上げてきた、
この国の持つ民度のお陰でした」
とてもいいスピーチだったと思う。
ただし、最後の万歳三唱。
1968年10月23日の「明治百年記念式典」。
当時の佐藤榮作首相は、
「天皇陛下万歳」ではなくて、
「日本国万歳」を三唱した。
今日、そのことに関して、
天皇ご自身はどう感じられたか。
一方、ドナルド・キーンさん、逝去。
ニューヨーク州生まれで、
日本文学研究の第一人者。
文化勲章受章者。
96歳だった。
コロンビア大学で、
英語訳の「源氏物語」に出会い、
日本へのかかわりを深めていく。
著者はアーサー・ウェイリー。
戦後の1953年、京都大学大学院に留学。
松尾芭蕉や近松門左衛門など、
日本近世文学を専門とし、
日本の古典文学の魅力を再認識させた。
同時に英語と日本語で執筆して、
日本文学を世界に紹介した。
キーン著『明治天皇』もある。
東日本大震災発生直後には、
有り難いことに日本に帰化して、
日本に居を移した。
「現在まで、
日本のことを
考えない日は
おそらく一度も
ありませんでした」
それは今上天皇にも通じるものだ。
私たちも、そうありたいと念じつつ、
ご冥福を祈りたい。
もう一つ、
沖縄の県民投票。
米軍普天間基地の名護市辺野古移設。
「辺野古埋め立て反対」が7割を超えた。
投票率は52.48%で、
投票資格者総数は115万3591人。
「賛成」「反対」「どちらでもない」の3択。
投票者総数の4分の1を超えれば、
知事は結果を尊重して、
首相と米大統領に結果を通知する。
県民投票条例で決められている。
玉城デニー知事は、
「辺野古埋め立てに絞った民意が
明確に示されたのは初めてで、
極めて重要な意義がある」
沖縄県民も「この国の人々」である。
朝日新聞一面の「折々のことば」
第1383回の昨日の言葉。
情報は
正確なときに
真理となり、
詩は
自立した
まとまりを持つときに
真理となる。
(エドワード・M・フォースター)
イギリスの作家・批評家。
評論『無名ということ』から。
「情報については
誰がどこで目撃したかが重要。
だからそこには署名が必要だ」
「が、詩は逆。
重要なのは誰が書いたかではなく、
目の前の事象以上に
“本質的”な世界を生みだす
作品そのものであって、
作者も読者もそれに
“創造的”にかかわる時、
作者が誰かはもはや問題ではない」
フォースターは言う。
文学は「無名の状態を目ざす」
天皇陛下の「お言葉」は、
情報である。
しかしそのお心の中には、
「詩」があると思う。
その「詩」の部分に、
強く共感するものだ。
〈結城義晴〉