三月、去る。
時の移り変わりは早い。
しかし田中カ子(かね)さん。
福岡市東区に住む116歳。
世界最高齢のギネス世界記録に、
認定された。
明治36年(1903年)年1月、
旧和白村(現福岡市東区)生まれ。
福岡市東区で餅屋を切り盛りして、
実子4人と親戚の子ら4人を育てた。
好奇心旺盛で勝ち気な性格だそうだ。
私の祖母も福岡生まれ、
福岡育ちだったが、
99歳8カ月まで生きた。
福岡の女性は長生きが多いのか。
田中さんは老人ホームに入所している。
手押し車を押しながら歩いて登場。
朝日新聞によると、
甘い物が大好物。
私の祖母は、
タバコとウィスキーが好きだった。
亡くなる少し前まで、
タバコとウィスキーをたしなんだ。
田中さんは、
ひ孫からチョコレートを渡されると、
ぱくっと口に入れた。
「いくつ食べたい?」
「100個」
ユーモアも健在。
私の祖母と同じだ。
そしてこれが良かった。
「今までで一番楽しかった出来事は?」
力いっぱい答えた。
「今!」
黒澤明もチャールズ・チャップリンも、
「あなたの最高の作品は?」と聞かれると、
すぐに答えた。
「ネックスト・ワン!!」
「次の作品だ」
私の言葉でいえば、
「小さな喜び、
ささやかな幸せ、
明日への希望」
それが生きるエネルギーだ。
それに好奇心が加わるのだろう。
生きる意欲がわいてきた。
さて3月の商人舎標語。
そして月刊商人舎3月号の、
[Message of March]
不可逆性の転回を起こせ!
どんな現象にもライフサイクルがある。
もともとは人生を円環にして描いたものだ。
幼年、少年、青年、中年、壮年、熟年、老年。
それが商品や企業や業態などに当てはめられた。
これらのライフサイクルは、
導入期⇒成長期⇒成熟期⇒衰退期を辿る。
そしてここには不可逆性がある、とされる。
人生が二度と取り戻せないことと同様に。
しかし人生は別にして、
商品や店舗や企業や業態には、
それほど安易に実現するものではないけれど、
本当に稀に不可逆性の転回が起こる。
佐藤一斉は言葉を残す。
少(わか)くして学べば、
壮にして為すこと有り。
壮にして学べば、
すなわち老いて衰えず。
老いて学べば、
すなわち死して朽ちず。
最後の最後に、老いて学ぶことが、
奇跡を生み出すのだと思う。
衰退期に必死で生きようとすると、
死に体の組成が甦る。
それが不可逆性の転回である。
商品や店舗、企業や業態には、
ときとしてこの現象が起こる。
そしてそのメカニズムこそ生命の秘密である。
不可逆性の転回現象を探せ。
不可逆性の転回事例を追いかけよ。
そこからライフサイクルの秘密を発見せよ。
好循環の生命力はここに源を発する。
〈結城義晴〉
「不可逆性」ともいうし、
「非可逆性」とも表現する。
「逆戻りしないこと」
しかし、その不可逆性も、
転回させることができる。
人間の一生は、
「不可逆性」の代表例である。
しかし116歳の長寿は、
どこかで「不可逆性の転回」を、
しているに違いない。
それが長寿となる。
そしてそれは、
「小さな喜び、
ささやかな幸せ、
明日への希望」
そして旺盛な好奇心だろう。
〈結城義晴〉