平成最後の原稿執筆。
平成最後の雑誌編集。
平成最後の責了。
「おつかれさま~」
商人舎の亀谷しづえと城山佳代子。
「夜中まで仕事が続くのは、
私の所為です」
「100%、結城義晴の所為です」
「すみません」
「社長なのに、自覚が足りない。
もう40年以上も書き続けてきたのに、
まだまだ修行が足りません」
「でも、絶対に手は抜かない。
いい原稿を書き続けます。
それだけは信じてください。
わかってください」
「令和に入っても、
よろしくお願いします」
日経新聞の経済コラム「大機小機」
コラムニストは硬骨漢の一直さん。
タイトルは、
「”令和”経済の最大課題」
いきなり大上段に構えたテーマ。
勇気あるなぁ。
ただし出だしの一文は慎重だ。
「世の変化を予測するのは
ますます難しくなってきた」
正直言って、同感。
「しかし、確かなのは
デジタル経済の急進展と
人工知能(AI)の進化で
生活環境が大きく変化することだ」
これも同感。
そこで重要な疑問を投げる。
歴史学者ユヴァル・ノア・ハラリ教授、
その名著『ホモ・デウス』
イスラエルのヘブライ大学教授。
「人知をも超えるAIの登場で
仕事がなくなる余剰人員をどうするのか」
「AIの開発やデジタル産業で、
必然的に二極化が生じる」
膨大な利益をあげる一部の企業家・資本家、
仕事のない大多数の人類。
その通りだ。
一方、『ネットワーク経済の法則』
カール・シャピロ&ハル・バリアン共著。
お二人ともカリフォルニア大学教授。
20年前に書いた、
インターネット経済の原理。
「情報経済の中心原理は、
利用者が増えれば増えるほど
利用者の便益が高まり、
利用者がさらに増える
というネットワーク効果だ」
その結果、
「”勝者総取り”現象が起きる」
奇しくも、
私が今日書いた平成最後の雑誌原稿は、
結論がこれだった。
グーグル、フェイスブック、アマゾン、
一握りがネットワーク世界を支配し、
所得格差は驚くほど拡大する。
そのフェイスブックの共同創業者、
クリス・ヒューズ(35歳)の近著。
『1%の富裕層のお金でみんなが幸せになる方法』
現在の米国の所得差を指摘。
「資産上位0.1%層が下位90%と
同等の富を所有している」
「大多数は臨時雇いなどで
不安定な生活を強いられている」
この層がトランプ大統領を支える。
そこでヒューズの提案。
「上位1%の富裕層の税負担を増やし、
それを原資に低所得層に
使途自由な一定金額を給付する」
つまり「保証所得」導入の提言。
「少額でも一定額が安定給付されれば、
人々の気持ちは安らぎ前向きになる」
ヒューズは多数の実証研究を示す。
そこでコラムニストの提案。
「日本でも就業者の約40%が
非正規労働者である」
「絶対的貧困層は減っているが、
仕事はあっても不安定な相対的貧困層が
米国と同様に増えている」
「この不安定な中間層への支援制度を
早急に確立すべきだ」
「財源は、日本でも
富裕層に依存せざるをえまい。
逆進性の強い消費税の大幅引き上げは
相対的貧困層を追い詰める」
「来るべき令和の時代の最大課題は
このままでは増え続けるとみられる
相対的貧困層対策である」
同感だ。
政治家にはこのあたり、
よく了解しておいてもらいたいものだ。
しかしこのとき、
亡き大髙善二郎さんの言葉を思い出す。
㈱ヨークベニマル元社長。
「われわれのコストダウンの努力を、
率直に価格に反映させる。
その結果、去年の今月と比べて、
同じ商品を同じ量、買っていただいて、
1カ月に1万円分、お客様に還元できたら、
それがこの地域のお客様全員に、
1万円のベースアップをしたことになる」
これはクリス・ヒューズの提案に繋がる。
「少額でも一定額が安定給付されれば、
人々の気持ちは安らぎ、前向きになる」
日経新聞夕刊の記事。
「イオン、割安PB7割拡充」
日経の割安PBのことを、
米国では「競争的ブランド」という。
「コンペティティブブランド」
イオンの場合、
ネーミングは「ベストプライス」。
「今後1年で食品の低価格品を
現状より7割多い約500品目に増やす」
「品質は維持しながら、
包装資材を簡素化する。
物流費用も抑える」
記事の分析は、
「食品メーカーが、
相次いで値上げに動くなか、
イオンは逆に割安感をアピールして
消費者を取り込む」
善二郎さんの考え方からすると、
消費者を取り込むのは副次的効果だ。
私もそう考えてほしいと思うし、
そう教えている。
「イオンは2019年度に、
同商品群の売上高を
前年度比1割以上増やす計画で、
販売増でも利益を確保する」
これは「利は売りにあり」
商売の原則だ。
今春、
ポテトチップスやしょうゆで、
ベストプライスを強化した。
ホームページにも掲載しているが、
「特選丸大豆しょうゆ」(200ml)は、
税別158円で、
メーカーの同容量の商品と比べて、
30円程度安い。
私が標榜するのは、
「値段下げずに売る商売」
月刊商人舎4月号。
しかしコンペティティブブランドは、
初めから超低価格が出せる開発を目指す。
バリュー・エンジニアリングの手法だ。
その品ぞろえを増やす。
イオンならばできる。
ウォルマートやアルディのストラテジー、
クローガーやテキサスのHEBの戦略。
本来はこのブランドこそ、
「値段下げずに売る商売」である。
もう、初めから、
ぎりぎりまで下げているのだから。
できる企業、できるグループと、
できない企業、できないグループがある。
しかしイオンはこれによって、
所得格差を埋める政策をとらねばならぬ。
イオンの責任において。
そうでない企業は、
自分のポジションを構築する。
どちらの戦略や政策でも、
小売業やサービス業は、
人々の気持ちを前向きにできる。
令和時代にもこの志は貫きたい。
〈結城義晴〉