12度目の5月4日のみどりの日。
祝日が土曜日と重なったが、
10連休となるとそんなことは、
どうでもいい気がしてくる。
みどりの日はもともと、
昭和天皇の天皇誕生日の祝日が、
ご崩御ととともに、
名称を変えて祝日となった。
したがって、1989年の平成元年から、
2006年の平成18年までは、
4月29日がみどりの日の祝日だった。
ところがこの日を、
昭和の日にすることになって、
黄金週間の5月4日が
「祝日と祝日の間の休日」だったから、
この名称があてられた。
「自然にしたしむとともに
その恩恵に感謝し、
豊かな心をはぐくむ」
これがみどりの日の趣旨。
日本らしくてとてもいい祝日だと思う。
海外では、
St. Patrick’s Day。
別名「緑の日」と称される。
聖人パトリックの命日が、
聖パトリックの祝日となった。
アイルランドにキリスト教を広めた人だ。
3月17日。
アイルランド共和国では、
もちろん祝日。
アイルランド移民の多いアメリカやカナダ、
オーストラリアやニュージーランド、
そしてイギリスでも、盛大に祝う。
日本でもパレードが行われる。
アメリカではケネディ家が、
アイルランド移民として有名だ。
聖パトリックは、
三つ葉のクローバーをシンボルとした。
キリスト教の「三位一体」を、
クローバーの三枚の葉にたとえた。
厳密にはクローバーではなくて、
シャムロックだが。
映画などでよく出てくるお祈りのセリフ。
「父と子と聖霊の名において」
「父」とは「神」であり、
「子」とは神の子イエス・キリスト。
そして「霊」「聖霊」は、
キリストを信じて洗礼を受けた人に宿る、
神聖な魂。
三つ目の「聖霊」がわかりにくいが、
これがキリスト教を世界宗教にした原動力。
この三つが唯一の神そのものであり、
「一体」であるとする教えが三位一体説。
聖パトリックは三位一体の概念を、
三つ葉のクローバーにたとえた。
そこで緑がテーマカラーとなった。
アイルランドもアメリカも、
この日は着るもの、飾るもの、
食べるもの、家の中を緑一色にして、
祝い、食べ、酒を飲む。
ニューヨーク五番街には、
セントパトリック教会があって、
JFケネディはここで、
結婚式を挙げた。
欧米の緑の日と、
日本のみどりの日。
趣旨は全く違うから、
世界中で日本だけのみどりの日。
今日は自然に親しみたいものだが。
さて日経新聞のシリーズ「令和を歩む」
エズラ・ヴォーゲル教授。
「ジャパン・アズ・ナンバー1」を書いた、
米ハーバード大学名誉教授。
「令和の”和”には平和への意志を感じる。
Beautiful Harmonyという訳もいい」
外務省は「令和」の英訳を、
「Beautiful Harmony」と決定して、
海外に向けて発信している。
「麗しい調和」だろうか。
「世界はいま混乱している。
米国は世界の戦後秩序づくりに貢献したが
トランプ政権は物足りない」
「日本の指導者は
米国がどう考えるかを見てきたが、
今後は日本が中国、欧州、
オーストラリア、インドと
どう向き合うかを自主的に考えるべきだ」
世界のなかで、
日本のポジショニングを考えよ。
「バブル経済の崩壊とともにはじまった、
平成は低成長だったが、
平和と安定の時代だった」
「証券会社は文句を言っても、
普通のひとのくらしや社会秩序では
日本は非常にうまくやった。
長生きで、健康で、教育の水準も高い。
貧富の格差も欧米ほどではない」
この観点は、清水信次さんと一緒だ。
㈱ライフコーポレーション会長、
日本小売業協会会長。
「中国経済が日本を追い越した、
2010年は転換期だった。
令和時代には、ほどなく米国も超える。
米中関係は悩ましい」
「中国は比較的抑えめだが、
トランプ政権には戦略が全くない」
では、日本はどうすればいいか。
「日本に米中という超大国の
橋渡し役は難しい。
だが米国の過剰な反応をいさめるなど、
助けることはできる」
「もちろん日米同盟は非常に深い。
中国の軍事増強を考えると
米国に頼るしかない」
だから平成時代には、
「中国とどう付き合うかが
日本に問われる」
そこで親中派の政治家が必要となる。
親中派の民間人も貴重だ。
例えば丹羽宇一郎さんのような。
中国に店舗やSCをつくることも、
その意味で日本のために、
極めて有益である。
今年6月には、
習近平中国国家主席が日本を訪れる。
昨年は800万人の中国人が日本を旅した。
イオンや平和堂、セブン-イレブン、
ユニクロやニトリ、MUJI。
もっともっと中国の店舗を強化していい。
ただし、日本で強い企業でなければ、
それはできない。
そして生鮮食品に関連する事業は、
一番最後の中国出店となる。
その意味で慎重であるべきだ。
私はずっと指摘している。
ヴォーゲルさん。
「高齢化、人口減少、中国との競争。
日本の若い人は問題の所在を分かっている。
新しい精神で会社を起こしたり、
大企業のなかで
創造力を発揮したりしてほしい」
安倍晋三首相の評価。
「豪州のラッド元首相のように、
中国語が上手で、北京とワシントンで
双方の指導者と真剣に渡り合える
国際派の政治家が出てほしい」
ヴォーゲルさんは、
故加藤紘一代議士の名を挙げ、
河野太郎外相や小泉進次郎議員を評価。
「戦後の日本の官僚には
幅広く物を考える人がいたが、
最近は視野が少し狭い。
政治家は強くなったが勉強をしない」
「世界での経験を積み、戦略を持つ
リーダーを育てないといけない」
新天皇陛下に関して。
「非常に謙遜され、
英語ができる立派な方だ」
雅子妃殿下。
「ハーバード大学で私が担当した
日米交流事業に参加された。
とてもまじめで優秀な国際人だ」
「お二人とも非常に良い、
国の象徴になると思う」
エズラ・ヴォーゲル教授の見方。
天皇皇后の評価は高い。
政治家は低いし、官僚は下がっている。
民間の若い人たちには期待する。
納得。
最後に「折々のことば」
第1452回。
剣をとる者はみな、
剣で滅びる。
(マタイによる福音書〈新約聖書〉)
編著者の鷲田清一さん。
「暴力で事を解決しようとする者は、
いずれ暴力でなぎ倒される。
暴力は何も生まない」
「同じように、
金で身を立てる者は
金で身を滅ぼす。
まるでブーメランのように」
ドナルド・トランプも。
「そうした宿痾(しゅくあ)から
言葉の力で脱出しようとする人もまた、
同じ言葉の力で崩壊することがある」
「人生の苦難は、
言葉を得ることで
解消されるわけではない。
人は同じ苦難にこんどは
言葉の世界でぶち当たる」
以て自戒とすべし。
人格と言葉と行動が、
三位一体でなければならない。
〈結城義晴〉