結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2019年05月29日(水曜日)

川崎登戸通り魔事件の「絶望」とカード情報漏洩事件の「スケール」

人間とて
犬や猫と

さして変りはない
もっとひどいと
言えるくらいかも知れない

ただ人間には
それができる

その自分のひどさに
気づくことが

そしてそのために
祈ることさえ

故まど・みちおさんの詩『それが できる』
index

まど・みちをさんも、
絶望したのかもしれない。
その中からわずかの光明を見出した。

自分のひどさに気づく。
そして祈る。

それが人間だ。

中日新聞の「中日春秋」が、
この詩を引用。

川崎登戸通り魔事件。

51歳の岩崎隆一容疑者が、
スクールバスを待つ児童らに近づいて、
刃物を振り回し、2人を殺害、
17人に重軽傷を負わせた。

直後に岩崎容疑者は自殺した。

言葉がない。

ひどい事件であるし、
ひどい社会になりつつあるのか。

この痛ましい事件のあと、
ネット上では「無敵の人」論議が喧しい。

この言葉は「ネットスラング」。
つまりインターネット上で使われる、
俗語、卑語、隠語。

「ニコニコ大百科」の定義。
「簡単に言ってしまえば、
『失うものが何も無い人間』のこと。
失うものが何もないので
社会的な信用が失墜する事も恐れないし
財産も職も失わない、犯罪を起こし、
一般人を巻き込むことに
何の躊躇もしない人々を指す」

ネットスラングには嫌な言葉も多い。

しかしそんな言葉で、
早計に片付けてはいけない。

朝日新聞では、
新潟青陵大学大学院の碓井真史教授。
犯罪心理に詳しい社会心理学者。

「まだ詳しくわからない点が多いが、
疎外感や強い被害者意識から、
自分の人生を終わりにしよう、
周りも道連れにしようと思って、
無差別殺傷事件を起こす事例が多い。
死刑になってもいいと思っているから、
刑罰を重くしても
事件を防ぐことはできない」

ニコニコ大百科の「無敵の人」に通じる。

「気の長い話だが、
社会の中で
絶望を感じる人を

減らすしかない」

どんな人にも、
自分に合った仕事があるといい。
その中で商売の仕事は人間を、
絶望から救うと思う。

さて昨日5月28日と今日29日は、
2月期決算上場企業の株主総会のピーク。

今日はイオンやイズミ、ベルク。
昨日はユニー・ファミマ、ウェルシア、
サンエー、ヤマザワ、ケーヨーなど。

その中で、引退して、
名誉会長に退く人事が二つ。

イズミの山西義政さんと、
ヤマザワの山澤進さん。

商人舎流通Supernews。

イズミnews|
創業者山西義政会長(96歳)退任、名誉会長へ
ヤマザワnews|
役員異動で山澤進取締役会長は5/28名誉会長に就任

山西義政さんは96歳。
山澤進さんは89歳。

山西さんは1991年に藍綬褒章を受賞、
山澤さんは2010年に旭日小綬章を受章。

いろいろと経緯はあろうが、
心から功績を称え、
労をねぎらいたい。

もう一つ重大な流通Supernews。
ヤマダ電機news|
不正アクセスでクレジットカード情報3万7832件流出

ヤマダ電機の2つの通販サイト、
「ヤマダウェブコム」と「ヤマダモール」。

何者かから不正アクセスされて、
クレジットカードの個人情報が、
最大で3万7832件流出した。

そして一部のカードで、
カード番号と有効期限、
さらにセキュリティーコードが、
不正利用された恐れがある。

同じく5月14日の商人舎流通Supernews。

ファーストリテイリングnews|
ユニクロ・GU顧客情報46万件に不正アクセス

(株)ファーストリテイリングでも、
第三者による不正ログインが発生した。
「ユニクロ公式オンラインストア」と、
「ジーユー公式オンラインストア」。

今年4月23日から5月10日にかけて、
「リスト型攻撃」手法で侵入された。
正式にはリスト型アカウントハッキング。
こちらは46万1091件だった。

同社はすぐにパスワードを無効化し、
顧客にはパスワードの再設定を要請。

閲覧された可能性があるが、
情報流出による被害は確認されていない。

アメリカでも同様な事件が起こった。
2013年のホリデーシーズンでのこと。

「Targetの4000万件の漏洩事件」

盗まれたのは顧客氏名から、
カード番号、有効期限、
3桁のセキュリティーコード、
そして個人識別番号(PIN)などの情報。

すなわちクレジットカードの裏側の、
磁気テープに記録されている情報が全部、
ハッキング被害にあったわけ。

ターゲットの場合、
eコマースで使用した被害がない。
そこで店舗のPOSシステム周辺の、
ネットワーク・ハッキングと見られている。

この事件の深刻さは2点ある。
第1が情報漏洩は実店舗で起きたこと。
第2がそれが全店舗一斉であったこと。

この2013年末の事件のあと、
ターゲットは減収減益に陥った。

顧客から敬遠されてしまったからだ。

2014年1月期決算では726億ドルで、
前年比マイナス1.0%。
純利益は197億1000万ドルで、
こちらは34.3%の減益。

2015年1月期は売上高は726億ドルで、
プラス1.9%の伸びを示したが、
最終的な純損失は16億3600万ドル。

2016年1月期はちょっと持ち直して、
売上げは1.6%増の737億8500万ドル、
純利益は33億6300万ドル。

しかしまた2017年1月期には、
売上げがマイナス5.8%、純利益18.6%減。

2018年、2019年は、
従来のターゲットに戻りつつあるが、
回復まで3年もかかって、
企業体力は衰弱してしまった。

日本でも相次いで、
クレジットカード情報漏洩事件発生。

顧客は安心してカードを使えなくなる。
それが一番の問題である。

しかしヨーロッパは、
2002年にスマートチップを採用した。
ICチップ付きカード化である。

それ以降、クレジットカード詐欺は、
年々減っていった。

一方、米国では、それへの移行が遅れた。
ターゲット事件の原因の一つとなった。

しかし現在、米国でもICチップ決済が、
事実上義務付けられて、
安全対策が進んだ。

日本でも2020年に向けて、
「日本再興戦略」の改訂が閣議決定され、
その影響で日本クレジット協会が、
100%のICカード化を目指すと発表。

もちろん東京オリンピックが節目となる。

ヤマダ電機は今のところ4万件弱、
ファーストリテイリングが46万件、
ターゲットはなんと4000万件。

スケールが小さいうちに、
経済界こぞって、そして産業を挙げて、
対処しておくべきだろう。

ただしヤマダ電機の今回の対応、
ちょいと遅すぎる。

自分たちのひどさ、
至らなさに気づけ。

まど・みちをさんが、
あの世から祈ってくれている。

〈結城義晴〉

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