結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2019年05月31日(金曜日)

ASKUL岩田彰一郎・Planet玉生弘昌対談と「ダイバーシティ考」

今日の5月31日は、
「世界禁煙デー」
World No-Tobacco Day。

禁煙を推進するための記念日。
世界保健機関(WHO)は1988年に、
設立40周年を迎えた。

この40周年を記念して、
「第1回世界禁煙デー」を定め、
翌1989年から毎年5月31日を、
「No-Tobacco Day」としている。

日本では1992年から、
5月31日からの1週間を、
「禁煙週間」としている。

私も30代の終わりころまで、
煙草を吸っていた。

ショートホープが好きだったし、
Zippoライターのオイルの匂いも、
大いに気に入っていた。

ちょっと気取って、
手巻き煙草のDrumを、
持ち歩いていた時期もある。

商人舎最高顧問をお願いした、
杉山昭次郎先生は、
いつもパイプ煙草を嗜んでいた。

月刊食品商業の編集長となったころは、
ピースライトを吸っていた。

左手で煙草を持ちながら、
右手は万年筆で原稿用紙に執筆していた。
それが許される環境にあった。

㈱商業界のオフィスの5階フロアは、
編集部がデスクを連ねていたが、
大部屋が煙で濛々としていた。

ところが原稿用紙とペンが、
コンピュータに変わって、
両手を使わねばならなくなった。
さらに初期のコンピュータは、
煙に弱いと言われたりした。

そこでいつの間にか、
止めてしまった。

仕事のために「卒煙」した。
それがすんなり、できた。

それ以来、もう30年近くになる。
だから皆さんにお勧めする。

卒煙しよう。

さて今日は朝から、
東京・豊洲。

あの豊洲市場があるところ。

アスクル㈱本社。
フロアの中央を木製通路が走る。
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ワンフロアが広くて見通しがいい。
もちろん煙草の煙などない。
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こちらでは数名のグループが、
ワークショップのような形で、
議論している。
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さらにセミナーが開かれていて、
30名くらいが聴講していた。
講師はマネジャー。
テーマは「ベイズの定理」
ベイズ統計学の基礎理論。
「確率および条件付き確率に関する定理」
凄いことを学んでいる。
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私は学校のような会社だと思った。

そのアスクル代表取締役社長兼CEOが、
岩田彰一郎さん。
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そして㈱プラネット代表取締役会長、
玉生弘昌さん。
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お二人に対談していただいた。
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玉生さんも岩田さんも、
ライオン㈱ご出身の先輩後輩。

玉生さんはプラネットを興し、
岩田さんはアスクルを起業した。

大変面白くて、意義のある内容で、
私も乗り出して話を聞き、
資料を拝見した。
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詳細は月刊商人舎7月号まで、
お待ちいただきたい。

最後に三人で腕を組んでポーズ。
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ありがとうございました。

さて今日の日経新聞コラム「大機小機」
コラムニストは桃李さん。
タイトルは、
「ダイバーシティ考」

「デジタル革命で市場が一気に国際化して、
物理的、言語的、文化的距離が克服され、
ニーズや技術も多様化して
様変わりしている」

「この変化に対応して
競争力を持つ企業なら、
自然に人材は多様になる。
というより、
そのような多様性があるからこそ
発展する企業になる」

同感。

「変化への対応力が
企業成長の本質であり、
その欠如は競争力の低下や低成長、
デフレ継続の基本的な原因になる」

セブン&アイ・ホールディングスの社是。
「基本の徹底と変化への対応」

「見方を変えれば、
変化対応力ではなく、
男性中心の年功序列制に基づく、
現経営陣や従業員層の給与体系を含めた
既得権益が問題の本質である」

そう、既得権益こそ、
闘わねばならない壁である。

「そうした問題を知る
無私の精神を持つ経営者の率いる企業は
変化を受容して成長するが、
自己保身の経営者がいる企業は
急速に衰退する」

玉生さんも岩田さんも、
「無私の精神を持つ経営者」である。

ライオン㈱そのものが、
無私の精神をバックボーンとしている。

明治24年(1891年)の創業。
創始者の小林富次郎は、
熱心なクリスチャンだった。

「法衣を着た実業家」あるいは、
「算盤を抱いた宗教家」と言われた。

コラムニスト。
「変化は痛みを伴う厳しい過程を経る。
自らの任期は短いので、
当面の収益に貢献しない長期的課題を
先延ばしている間に衰退が進む」

だから経営者の任期は短くてはいけない。

「ダイバーシティの形式を整えるのではなく
ニーズ、市場、技術、思考法などの
変化に対応した新商品・サービスの
開発力、競争力を強化する」

「要は、企業経営の本質が
問われているのだ」

その通り。

月刊商人舎2015年6月号[特集]は、
女性が働きたい店・会社・産業
「日本小売業ダイバーシティ」を厳しく中間総括する!!
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もう3年も前になるが、
その[Message of June]

ダイバーシティ産業の強みを活かそう!

「男並み女を使え!」
故渥美俊一先生の言葉。
「なるほど・・・・・」
全員、目からウロコだった。

しかし結果としてこれは、
男社会を助長させた。
女性を排除した。
多様性を無視した。

時代はダイバーシティ。
いや、時代ではない。
流通業こそ、ダイバーシティ。
サービス業こそ、ダイバーシティ。

もともとダイバーシティ産業だからこそ、
かつてチェーンストアは標準化を強調した。
ダイバーシティ産業だからこそ、
最初はマニュアルが必須だった。

しかしそれは、
レース型競争下のセオリーだった。
コンテスト型競争下では、
ダイバーシティ産業の強みを活かせばいい。

象徴的な目標は、
女性が働きたい店を作ることだ。
女性が働きやすい会社に変えることだ。
女性が活躍する産業を構築することだ。

女性が働きやすい職場は、
誰もが働きやすい。
女性が活躍しやすい組織は、
誰にもそれぞれの活躍の場が約束されている。

女性がドキドキワクワク働く店は、
顧客がドキドキワクワクする。
女性がニコニコ働く店は、
顧客もニコニコする。

こんな店、こんな会社、
そしてこんな産業は、
人間の尊厳に対して、
真摯に向き合うことになる。

〈結城義晴〉

2019年05月30日(木曜日)

ライフ&アマゾンの協業とマハティール首相の「米中に自制求める」

昨日の雨が上がって、
梅雨までの凄く快適な季節。
二十四節気(にじゅうしせっき)では、
小満(しょうまん)。
「万物が次第に成長して、
一定の大きさに達して来るころ」

1年を24等分する二十四節季気に対して、
さらにそれを3等分して、
1年を5日ずつ72に分けるのが、
七十二候(しちじゅうにこう)。

今日はその小満の中の真ん中、
つまり「次候」の「紅花栄」の終わりごろ。
週末は「末候」の「麦秋至」へ。

紅花(べにばな)から、
麦秋(ばくしゅう)へ。

麦は秋に植えて、初夏に収穫する。
「麦秋」は、その麦が熟して、
畑が黄金色になって、
刈り取りの時期となる季節。

麦にとっての収穫の秋であることから、
この言葉が生まれた。

そういえば小津安二郎監督に、
「麦秋」という映画があった。
原節子主演の三部作の第二作。
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季節を楽しみたい。
そんな心を持ちたい。

原節子・小津安二郎麦の秋
〈吉田汀史『一切』2002年より〉

さて、商人舎流通Supernews
ライフnews|
アマゾンと協業/Prime Now会員への商品販売を年内開始

(株)ライフコーポレーションと、
アマゾンジャパン合同会社が協業する。

ライフが「Prime Now」に、
食品スーパーマーケットとして、
国内企業で初出店。

最短2時間で商品が届く配送サービス。

楽天とウォルマート西友。
セブン&アイとアスクル。

アメリカでは、
クローガーとウォルグリーン。
ターゲットとCVSヘルス。

アライアンス(同盟)や協業はもう、
当たり前の戦略。

それも巨大チェーン同士の、
超巨大なコラボレーション。

【結城義晴の述懐】を書いておいた。
いよいよ、来た。そんな感じだ。
アメリカでホールフーズマーケットを
傘下に収めたアマゾン。
日本でもスーパーマーケットチェーンを
物色していた。
もちろん買収や資本参加という
形にはこだわらずに。
そこにライフが手を挙げた格好だ。
ライフにとっても
アマゾンのネット販売によって、
売上げは拡大するし、
市場占拠率は高まる。
「Amazon Effect」と恐れるだけでなく、
懐に飛び込んで、成果を得る。

このラストワンマイルは、
勝者総取りの様相を呈する。

月刊商人舎5月号特集
「ラストワンマイルの優勝劣敗」

ご覧いただきたい。
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最後に日経新聞夕刊一面トップ記事。
マハティール首相の講演。
「米中に自制求める」

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その講演の場は、第25回国際交流会議。
「アジアの未来」(日本経済新聞社主催)

マレーシアのマハティール首相。
アメリカと中国の覇権争いに対して、
「世界にとって決して良いことではない」

たとえが、いい。
「2頭の大きな象に踏みつけられるのは草だ」
この草とはもちろんアジア諸国民のこと。

中国は南シナ海の軍事拠点化を進める。
「戦争に発展すれば
東南アジア全体が破壊される。
南シナ海に戦艦が停泊するようなことが
あってはならない」

一方、米国に対しても、
「戦艦を送る脅しのアプローチを
使うべきではない」

「すべての国が、
机の上での交渉で
解決すべきだ」

中国に対する向き合い方。
「新しい強力な中国を
認識しなければならない。
西側諸国は中国がいつか
民主化すると思っているがそうではない。
政権を変えようと強制してはいけない」

「お互いが良い関係を築けば、
そこから変化が起きる。
中国はオープンで開放的だ」

「軍事分野でお互い兵器を
開発するようなまねは金の無駄だ。
完全に禁止すべきだ」

日本と中国や韓国との関係。
「独仏は何世紀も対立し戦争をしたが、
過去に縛られていない。
日中や日韓などでは
過去の対立が今も続いている」

ASEAN諸国は領土対立を乗り越えてきた。
その過去にも言及して、述懐する。
「現在は交渉で解決するという合意がある。
だからこそ経済繁栄を享受できる」

マハティール首相は93歳。
22年間も首相を務めてきた。

有名な「ルック・イースト政策」は、
経済発展のモデルを、
欧米ではなく、日本に求める。

だから「東を向こう」の東方政策である。

200年かけて発展した欧米に対して、
極めて短期間で追いついた日本にこそ、
学ぶべきだという信念を持つ。

何よりもマレー民族としての誇りがある。
アジア的価値観を肯定的に評価する。
ヨーロッパ文明には冷徹な目を向ける。

「米国がイラクにしようとしていることは、
白昼強盗と同じだった」
アメリカに対しても真っ向から言い切る。

そして「戦争の無益さと犯罪性」を、
徹底的に指摘する。

イズミの山西義政さん、96歳。
セブン&アイの伊藤雅俊さん、95歳。
イオンの岡田卓也さん、93歳。
そしてライフの清水信次さん、93歳。

岡田さんと清水さんは今、
マハティールさんと同年だ。

90歳を超えて、
100歳に近づく人たちの、
正々堂々の発言と行動。

マハティールさんの言葉に、
心から感動した。

〈結城義晴〉

2019年05月29日(水曜日)

川崎登戸通り魔事件の「絶望」とカード情報漏洩事件の「スケール」

人間とて
犬や猫と

さして変りはない
もっとひどいと
言えるくらいかも知れない

ただ人間には
それができる

その自分のひどさに
気づくことが

そしてそのために
祈ることさえ

故まど・みちおさんの詩『それが できる』
index

まど・みちをさんも、
絶望したのかもしれない。
その中からわずかの光明を見出した。

自分のひどさに気づく。
そして祈る。

それが人間だ。

中日新聞の「中日春秋」が、
この詩を引用。

川崎登戸通り魔事件。

51歳の岩崎隆一容疑者が、
スクールバスを待つ児童らに近づいて、
刃物を振り回し、2人を殺害、
17人に重軽傷を負わせた。

直後に岩崎容疑者は自殺した。

言葉がない。

ひどい事件であるし、
ひどい社会になりつつあるのか。

この痛ましい事件のあと、
ネット上では「無敵の人」論議が喧しい。

この言葉は「ネットスラング」。
つまりインターネット上で使われる、
俗語、卑語、隠語。

「ニコニコ大百科」の定義。
「簡単に言ってしまえば、
『失うものが何も無い人間』のこと。
失うものが何もないので
社会的な信用が失墜する事も恐れないし
財産も職も失わない、犯罪を起こし、
一般人を巻き込むことに
何の躊躇もしない人々を指す」

ネットスラングには嫌な言葉も多い。

しかしそんな言葉で、
早計に片付けてはいけない。

朝日新聞では、
新潟青陵大学大学院の碓井真史教授。
犯罪心理に詳しい社会心理学者。

「まだ詳しくわからない点が多いが、
疎外感や強い被害者意識から、
自分の人生を終わりにしよう、
周りも道連れにしようと思って、
無差別殺傷事件を起こす事例が多い。
死刑になってもいいと思っているから、
刑罰を重くしても
事件を防ぐことはできない」

ニコニコ大百科の「無敵の人」に通じる。

「気の長い話だが、
社会の中で
絶望を感じる人を

減らすしかない」

どんな人にも、
自分に合った仕事があるといい。
その中で商売の仕事は人間を、
絶望から救うと思う。

さて昨日5月28日と今日29日は、
2月期決算上場企業の株主総会のピーク。

今日はイオンやイズミ、ベルク。
昨日はユニー・ファミマ、ウェルシア、
サンエー、ヤマザワ、ケーヨーなど。

その中で、引退して、
名誉会長に退く人事が二つ。

イズミの山西義政さんと、
ヤマザワの山澤進さん。

商人舎流通Supernews。

イズミnews|
創業者山西義政会長(96歳)退任、名誉会長へ
ヤマザワnews|
役員異動で山澤進取締役会長は5/28名誉会長に就任

山西義政さんは96歳。
山澤進さんは89歳。

山西さんは1991年に藍綬褒章を受賞、
山澤さんは2010年に旭日小綬章を受章。

いろいろと経緯はあろうが、
心から功績を称え、
労をねぎらいたい。

もう一つ重大な流通Supernews。
ヤマダ電機news|
不正アクセスでクレジットカード情報3万7832件流出

ヤマダ電機の2つの通販サイト、
「ヤマダウェブコム」と「ヤマダモール」。

何者かから不正アクセスされて、
クレジットカードの個人情報が、
最大で3万7832件流出した。

そして一部のカードで、
カード番号と有効期限、
さらにセキュリティーコードが、
不正利用された恐れがある。

同じく5月14日の商人舎流通Supernews。

ファーストリテイリングnews|
ユニクロ・GU顧客情報46万件に不正アクセス

(株)ファーストリテイリングでも、
第三者による不正ログインが発生した。
「ユニクロ公式オンラインストア」と、
「ジーユー公式オンラインストア」。

今年4月23日から5月10日にかけて、
「リスト型攻撃」手法で侵入された。
正式にはリスト型アカウントハッキング。
こちらは46万1091件だった。

同社はすぐにパスワードを無効化し、
顧客にはパスワードの再設定を要請。

閲覧された可能性があるが、
情報流出による被害は確認されていない。

アメリカでも同様な事件が起こった。
2013年のホリデーシーズンでのこと。

「Targetの4000万件の漏洩事件」

盗まれたのは顧客氏名から、
カード番号、有効期限、
3桁のセキュリティーコード、
そして個人識別番号(PIN)などの情報。

すなわちクレジットカードの裏側の、
磁気テープに記録されている情報が全部、
ハッキング被害にあったわけ。

ターゲットの場合、
eコマースで使用した被害がない。
そこで店舗のPOSシステム周辺の、
ネットワーク・ハッキングと見られている。

この事件の深刻さは2点ある。
第1が情報漏洩は実店舗で起きたこと。
第2がそれが全店舗一斉であったこと。

この2013年末の事件のあと、
ターゲットは減収減益に陥った。

顧客から敬遠されてしまったからだ。

2014年1月期決算では726億ドルで、
前年比マイナス1.0%。
純利益は197億1000万ドルで、
こちらは34.3%の減益。

2015年1月期は売上高は726億ドルで、
プラス1.9%の伸びを示したが、
最終的な純損失は16億3600万ドル。

2016年1月期はちょっと持ち直して、
売上げは1.6%増の737億8500万ドル、
純利益は33億6300万ドル。

しかしまた2017年1月期には、
売上げがマイナス5.8%、純利益18.6%減。

2018年、2019年は、
従来のターゲットに戻りつつあるが、
回復まで3年もかかって、
企業体力は衰弱してしまった。

日本でも相次いで、
クレジットカード情報漏洩事件発生。

顧客は安心してカードを使えなくなる。
それが一番の問題である。

しかしヨーロッパは、
2002年にスマートチップを採用した。
ICチップ付きカード化である。

それ以降、クレジットカード詐欺は、
年々減っていった。

一方、米国では、それへの移行が遅れた。
ターゲット事件の原因の一つとなった。

しかし現在、米国でもICチップ決済が、
事実上義務付けられて、
安全対策が進んだ。

日本でも2020年に向けて、
「日本再興戦略」の改訂が閣議決定され、
その影響で日本クレジット協会が、
100%のICカード化を目指すと発表。

もちろん東京オリンピックが節目となる。

ヤマダ電機は今のところ4万件弱、
ファーストリテイリングが46万件、
ターゲットはなんと4000万件。

スケールが小さいうちに、
経済界こぞって、そして産業を挙げて、
対処しておくべきだろう。

ただしヤマダ電機の今回の対応、
ちょいと遅すぎる。

自分たちのひどさ、
至らなさに気づけ。

まど・みちをさんが、
あの世から祈ってくれている。

〈結城義晴〉

2019年05月28日(火曜日)

ニコルソンの「外交」の鉄則と豊田章男の「数値目標はない」

68時間の滞在――。
そしてドナルド・トランプ大統領、
帰国した。
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全国紙、地方紙の巻頭コラムは、
各紙の達人たちが覇を競う。
情報網も読書量も豊富で、
したがって優れた内容ばかりだ。

その中で今日は、毎日新聞「余禄」

ハロルド・ニコルソンを登場させた。

20世紀初頭のイギリスの外交官で、
歴史家、政治家、作家。
「サー」がつく貴族でもある。

出身はオックスフォードで、
大学卒業後、英国外務省に入省。

パリ講和会議に参加。
著書の『外交』は世界中で、
教科書・必読書と位置づけられている。
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ニコルソンが活躍した20世紀前半には、
首脳同士の外交は例外的だった。

「ニコルソンは、
政治家の訪問外交を
批判した」

「その手の外交は
公衆の期待や誤解を引き起こし、
政治家当人の虚栄心を刺激して
誤った判断を誘発する」

ニコルソンの定義。
「外交とは会話や社交の術ではなく
国益を異にする国の間で
認証可能な合意を取り決める術だ」

余禄のコラムニスト。
「合意よりも首脳同士の親密さを
内外に示すショーが
“外交”となる時代の到来は
ニコルソンには想定外だったろう」

「首脳同士の親密な関係が、
もしや両国の国益の調整よりも
お互いの政権の都合の
すりあわせの場になってはいないか」

同じことは多くの人が感じただろう。

「国益を守るべき外交が
政治家の権力の小道具とされるのは
ニコルソンの悪夢であろう」

「仲良き事は美しき哉」
武者小路実篤。
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それもあるけど。

初夏の横浜。
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商人舎オフィスの裏の遊歩道。
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この数日は暑いけれど、
それでも快適。
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アジサイが咲き始めた。
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もう1週間ほどで梅雨入り。
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それまでは1年で最高のとき。

考えてみるとトランプ夫妻は、
最高の時季に日本にやってきた。
感じたかどうかはわからないが。

さて昨日の日経新聞「核心」
「トヨタ30兆円の城は盤石か」
論説委員の西條都夫さんが考察する。

トヨタ自動車の2019年3月期の連結売上高。
30兆2256億円。

「日本企業として初めて30兆円の壁を突破」

「大台突破は日本産業史の一里塚」
その意味を分析する。

まずは30兆円のスケール。
他社比較。

トヨタに続く2位はホンダ、
売上高は16兆円弱で約半分。

トヨタの連結営業利益2兆4675億円も、
ソフトバンクグループなどを抑えて、
日本一だ。

自動車と並ぶ「製造業の雄」電機。
日立制作所が9.5兆円、
パナソニックが8.0兆円。
トヨタの3分の1に満たない。

平成が幕開けした1989年頃は、
トヨタと日立、松下電器産業の3社は、
6兆~8兆円で団子状態だった。

平成の30年で差が開いた。

世界でも同規模の企業はそうない。
米フォーチュン誌の企業番付。

これは私の得意とするところ。
1 Walmart(アメリカ) 小売業5003億ドル。

ご存知、ウォルマート。

2 State Grid(中国)電力 3489億ドル。
3 Sinopec Group(中国)石油 3270億ドル。
4 China National Petroleum(中国)石油 3260億ドル。
中国の石油・電力・エネルギー。

5  Royal Dutch Shell(オランダ)石油 3119億ドル。

3000億ドル以上、
トヨタ以上はこの5社。

6 Toyota Motor(日本)自動車 2652億ドル。
7  Volkswagen(ドイツ)自動車 2600億ドル。

「有力な油田を掘り当てれば
数百億円単位の収入が転がり込む
資源会社などと異なり、
自動車会社は数万点の部品を組み合わせて
1台1台作り込む地道な仕事だ」

ウォルマートは10万品目の商品を、
1品1品売って50兆円だ。

「政府から独占権を得ているわけでもなく、
競争は激しい」

「そんな環境下での30兆円は、
相当に密度の濃い30兆円といえる」

ウォルマートも同様。

今年は豊田章男氏が社長になって、
10年の節目でもある。
もちろんトヨタ創業家ご出身。
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ここからが面白い。

「過去10年のトヨタの経営には、
他の会社にはあって当然のものが
なかった」

なにか。

「販売台数などの数値目標である」

おお。

「数値目標」がない。

「リーマン・ショック後の危機のさなか、
09年の登板直後から、豊田社長は、
前任体制へのアンチテーゼも込めて
“数値目標はあえて掲げない”と言い続けた」

数字なしでどうやって、
組織を引っ張るのか。

しかし、その後の10年で、
逆に数字のわなに足を取られた、
ライバルの失態が露呈した。

フォルクスワーゲンは、
「米国での100万台販売」を、
ヴィンターコーン元社長から厳命され
その技術陣は排ガス不正に走った。

世界販売600万台の旗を掲げたホンダは、
背伸びをしすぎて失速。

極め付きはゴーン日産の転落。
台数や利益率の「コミットメント」を、
経営の切り札として多用した。

考えさせられる。

コラムニストも言う。
「”数字なし経営”が、
どんな場面でも通用する
普遍的な手法かどうかは留保がつく」

しかし豊田章男さんは、
「頑固にこだわり続けることで、
独自の経営スタイルを確立した」

もう一つは、
「創業家出身ならではの大胆な意思決定」

住宅事業のトヨタホームを、
パナソニックとの共同出資会社へ移管。

米ゼネラル・モーターズとの合弁工場では、
「NUMMI(ヌーミー)」の閉鎖を決断。

電動化など「CASE」の新技術の領域でも、
ソフトバンクグループと提携した。

中国の新興メーカーへ、
小型車の設計ライセンスを供与する。

つまり、
オープン・イノベーション戦略を進める。

最近の一連の提携戦略も、
従来型自動車メーカーの殻を破る試みだ。

最後にトヨタの歴史の奇妙なジンクス。
⑴売上高が10兆円を超えた直後に
国内のバブル景気が崩壊。

⑵20兆円に届くと、
リーマン・ショックが起きた。

⑶30兆円に到達した今回も、
米中対立の激化など世界情勢は波乱含み。

「GAFAに代表される世界のデジタル企業も
自動車ビジネスの創造的破壊をもくろむ。
もしかすると嵐が来るかもしれない」

最後まで読むと、
西條都夫さんの豊田章男さんへの
一種のラブレター記事であることがわかる。

しかし、「数値目標なしの経営」は、
それ自体、ユニークだ。
アウトスタンディングだ。

かつて、鈴木敏文さんは、
「店を見るな!」と言い続けた。
セブン-イレブン創業者で、
セブン&アイ・ホールディングス前会長。
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それでもイトーヨーカ堂の社員たちは、
誰よりも競合他社を見ていた。

まったくの私見だが、
「数値目標」は表に出さないが、
トヨタの幹部や社員は、
どこよりも数字にシビアであるはずだ。

もともとシビアすぎるから、
「数値目標」を掲げないのだと思う。

それぞれの経営――
これこそ豊田章男のトヨタの経営だし、
鈴木敏文のマネジメントである。

〈結城義晴〉

2019年05月27日(月曜日)

トランプの「Commander in Cheat」と「噛む育」の食パン

Everybody! Good Monday!
[2019vol21]

2019年の第22週。
そして5月第5週。

1年で一番いい季節。
初夏のすがすがしさ。
花粉も飛ばなくなったし。

しかし昨日の日曜日は、
全国的な猛暑となった。

北海道佐呂間町では午後2時過ぎに、
39.5度を記録。

北海道内の年間最高気温記録を更新、
5月の最高気温の全国記録も更新。

53地点で猛暑日となって、
最高気温は35度を超えた。

そんな中、国賓の来日。
ドナルド・トランプ大統領。

新天皇即位のあと、
最初の国家元首の来日。

しかし到着直後にはヘリコプターで、
千葉県の茂原カントリークラブへ。

安倍晋三首相とのツーショットは、
「シンゾー」のスマホでの自撮り。
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こう見るとただの、
じいさんとおっさんのゴルファーだ。

楽しそうなところは、
同じゴルファーとして共感を覚える。

しかし。

リック・ライリー著『Commander in Cheat』
訳せば「イカサマ指揮官」。
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Cheat(チート)は動詞の場合、
「騙す、不正をする」という意味。

名詞の場合は、
いかさま(をする人)、いんちき(をする人)、
ごまかし、ずる、ずるいやつ、偽物、
カンニング、詐欺、詐欺師、詐取、
不正行為、だますこと、などを意味する。

サブタイトルは「How Golf Explains Trump」
「ゴルフで明らかになるトランプ」

ライリーはスポーツライターで、
「Sports Illustrated」誌の元記者。

「政治でどんな不正をしているかは
知らないし、わからない。
しかしインチキゴルフは、
ゴルファーの一人として
見逃すことはできなかった」

ニューヨーク郊外の名門コースが、
「ウイングドフットゴルフクラブ」。
ライリーもこのクラブのメンバーだ。

キャディたちは大統領トランプを、
“ペレ”と呼んでいた。

「ラフに入ればボールを蹴り出していた」
だから彼をサッカーの神様にたとえた。

もちろんゴルフルールでは、
足でボールを蹴ってはいけない。
手で運んでもいけない。

クラブで打つものだ。

自称2.8のハンディキャップ。

タイガー・ウッズは、
「年齢を感じさせない、
パワーあふれるショットだ」と、
感嘆してはいるが。

昨日は青木功プロも一緒だったが、
どんなゴルフだったのか。

あまり興味はないけれど。

その後、やはりヘリコプターで、
アメリカ大使館に戻り、
夕方、国技館へ。

大相撲の観戦。

桝席を取っ払って、
椅子席を設けた。

相撲史上初の出来事で、
これにも批判や皮肉が飛び交った。

歴代天皇陛下や国賓が観戦するために、
貴賓席が設けられている。

しかしシンゾーの忖度か、
ドナルドのご要望かはわからないが、
桝席にトランプ夫妻と安倍夫妻が座って、
周辺をSPが取り囲んだ。

朝日新聞「天声人語」

「館内で取材した同僚によると、
腕を組み、笑みが乏しい。
取組の間、拍手を送る場面は少なかった」

私にはトランプ大統領は、
どこか退屈しているように見えた。

相撲は本来、奥深い精神性を有する。
そして裸一貫、土俵の上で、
cheatが許されないスポーツだ。

多分、そのこともあったろうし、
仕切りが繰り返されることに、
アメリカ人のトランプ氏は、
退屈したに違いない。

あるいは昼間のゴルフの疲れが出たか。

私も小さな子どものころは、
相撲の仕切りの間合いの長さが、
我慢できなかったことを覚えている。

一転、表彰式で土俵に上がると、
自信満々で満足げだった。

パンアメリカン航空日本支社長、
故デビッド・ジョーンズさん。

大相撲の千秋楽に欠かせない人気者だった。

大きな地球儀のトロフィーを贈呈するとき
「ヒョー・ショー・ジョー」と日本語を使って
全国の観衆を沸かせた。

私はトランプ大統領は、
これをやるだろうと期待していたが、
残念ながら、英語だけだった。

ジョーンズさんは語っていた。
「相撲は単なるスポーツを超えた文化」

米国大統領にはそれを、
少しでも理解してほしかった。
だがそれは無理な注文のようだ。

北國新聞の巻頭コラム「時鐘」

平幕優勝した朝乃山の、
恩師から学んだ「相撲の心」を称賛する。

「男は感情を表に出すな」

北國新聞にとって、
富山県出身はいわば地元力士だ。

しかし、「この日の国技館には
政治家や評論家の顔がいつになく多かった」

「千秋楽は見事な”政治ショー”と化し、
一歩間違えると後味の悪い
一番になるところだった」

「それを救ったのは、
人生一番の歓喜も抑え気味にできる
朝乃山の柔和さだった」

相撲の仕切りにおける「無言の間」は、
「男は感情を表に出すな」そのもの。

それに対して、
政治ショーの主役の二人は、
「俺が俺が」のポピュリズムだった。

その対比がいかにも面白かったが。

さて今日の午前中は、
第一屋製パン㈱のお二人が、
横浜商人舎オフィスを訪ねてくれた。

鎌田恒雄さんと松下隆哉さん。
右の鎌田さんは、
関西事業本部副本部長兼西日本営業部長。
左の松下さんは営業企画室、
ブランド戦略グループリーダー。
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今日は新製品の報告と相談。
食パンの「emini」ブランド。IMG_70859

松下さんが中心となって開発した新Brand。

コンセプトは、
「こどもにも安心して食べさせられるパン」

石臼全粒粉、天塩を使って、
湯種製法で丹精を込めて製造した。

管理栄養士の田中美智子さんは、
「噛む育」を標榜している。
つまりよく噛んで食べることで、
食育を振興しよう。

そこで「かむ食・かむ育カウンセラー」と、
称して大活躍中。

その田中さんが「emini」のコンセプトを、
高く評価してくれて、
互いに協力しながら「噛む育」を進める。

昨日と一昨日、
イトーヨーカドー小田原店で、
ワークショップが展開された。
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タイトルは、
「ママへのごほうびフェスタin小田原」

伊藤誠朗ストアマネジャーが積極的で、
管理栄養士の野口友美さんを招いて、
クイズを出して、「噛む育」を施し、
商品サンプルをプレゼントした。
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野口さんは上級食育アドバイザー、
幼児食アドバイザー。IMG_70969
マーケットニッチャーでも構わない。
良い商品をつくり、
その良さを訴えていく。

ひとつずつ、
すこしずつ、
いっぽずつ。

ブランドをつくるとはそういうことだ。

ゴルフも仕事も、
“in Cheat”ではいけない。

そのあと朝川康誠さん来社。
立教大学大学院の結城ゼミ第3期生で、
㈱USEI代表取締役社長。IMG_70899
経営の流儀はあくまで知識商人流。
経営モデルはLCCのサウスウェスト航空、
「安価多売」を標榜する。

今日は様々な報告をしてくれて、
今後のビジョンを語り合った。
ランチミーティングを挟んで3時間近く。IMG_70939
今日も、結城ファミリーが、
やってきてくれた。

うれしいものだ。

では、みなさん、今週も、
もちろんcheatなしで、
Good Monday!

〈結城義晴〉

2019年05月26日(日曜日)

[日曜日の雑記帳]橋田壽賀子の「オシンドローム」の紙一重

連続テレビ小説、
おしん。
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日経新聞「私の履歴書」
今月は橋田壽賀子さん。
ご存知、脚本家。
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その圧倒的代表作が「おしん」。

昨日のタイトルは「おしん症候群」

昭和58年のNHK連続テレビ小説。
「おしん」は4月から始まった。
1983年。

このNHK連続番組自体は、
昭和41年(1966年)の「おはなはん」が最初。

そして歴代人気ランキングは、
第1位が樫山文江のおはなはんで、
第2位がおしん。

おしんの放送が始まると、
瞬く間にブームが起こった。
それが”オシンドローム”。

おしんのシンドロームで、
“オシンドローム”。
語呂合わせだが、
世の中では語呂が大事だ。

おしんの子役は小林綾子。
いまや46歳のレディだが、
芯の強い、いい子どもを熱演した。

その演技に対して、
NHKに届いた封書は数千通。

まずはおしんへの同情、
そして過去の自分と重ねての感動、
そんな内容ばかりだった。

さまざまな現象が起こった。
橋田壽賀子さんが思い出しつつ語る。

おしんの奉公先は山形県酒田市。
「団体がバスを連ねて押しかけ、駅前には
赤ん坊を背負ったおしん像ができた」

母親の出稼ぎ先の銀山温泉の旅館。
“大根めし”がメニューに加えられた。

各地でおしんの名を付けた土産物が登場。

「おしんの子守唄」というレコード発売。
民謡歌手の金沢明子が歌い、
橋田壽賀子作詞、遠藤実作曲。
作詞したのは夫の嘉一さんだった。

衆議院の議院運営委員会。
「おしん後援会」が発足。

小林綾子は文部大臣に呼ばれて面会した。
政治は「おしん国会」と呼ばれたし、
中曽根康弘首相のキャッチフレーズは、
「おしん・康弘・隆の里」
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当時の横綱隆の里が辛抱の末に、
最高位に上り詰めたからだ。

しかし橋田壽賀子さんは述懐する。
「昔の貧しさに耐えて
生きてきた人を描いたことが、
修身の復活のように受け取られて
心外だった」

「明治から昭和の時代を、
おしんという架空の人物を通して
忠実にたどっただけなのに、
なぜそこに政治が入り込んでくるのか
理解できなかった」

幼少期が小林幸子、
成人してからは田中裕子、
そして晩年は乙羽信子。

その乙羽おしんは、
「スーパーの仕事に専念する」

すると視聴者からの反響。
「商売の鬼になっている」
「こんなおしんは見たくない」

なぜスーパーマーケットの経営が、
「商売の鬼」なのか。

しかし橋田。
「それこそ私が狙っていたことだった」

「あのころの日本人は
金もうけに走りすぎて、
本当の自分を見失っていなかったか。
金もうけと人としての幸せの区別が
つかなくなっていなかったか」

「私はおしんを通じて
そう言いたかった」

ドラマの中でおしんは、
「セルフサービスのスーパー」を開業する。
昭和30年(1955年)。

紀ノ国屋のオープンが昭和28年、
九州の福岡・小倉の丸和フードセンターが、
昭和31年のスタートで、
これが生活圏スーパーマーケットとして、
第一号とされているから、
ドラマとは言え、おしんの「スーパー」は、
日本の先駆けとなるものだった。

しかし 橋田壽賀子も、
スーパーマーケットやチェーンストアを、
「金儲け」の象徴としてとらえた。

私はここに「偏見」があるのだと思う。
残念ながら。

「1年間の放送が終わってみれば、
平均視聴率52.6%、最高視聴率62.9%。
その後、68の国と地域で放送された」

海外のテレビの最高視聴率は、
イランで82%、タイで81%、
北京でも76%を記録。

現在の中国やタイの経営者たちも、
おしんで学んだ、のかもしれない。

「耐えるおしん、
夢を捨てないおしん、
優しさを失わないおしん」

その姿が言葉や宗教を超えて、
人々に届いた。

おしんのモデルは、
和田カツさんともいわれている。
熱海のヤオハンの創業者だ。

現在の㈱イズミ社長の山西泰明さんの、
ご母堂ということになるが、
橋田壽賀子さんは言う。
「ヒントはいただいたが、
モデルはいない」

それは作家の自負であり、
真実だ。

「いるとすれば、それは、
苦難の時代を生き抜いてきた
“日本の女たち”だ」

そして最後に、
「私は昭和天皇にご覧いただきたくて、
このドラマを書いたような気がする。
だからおしんの生まれを
陛下と同じ明治34年にした」

しかし晩年のおしんが、
「金儲け」に走ったことは、
作家の自負から生まれた、
日本人批判でもある。

「商人と屏風は、
曲がっていないと
立たない」

この言葉に対して倉本長治は、
石田梅岩を引いて反論した。
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「商人も屏風もどちらも、
まっすぐで
平らなところにしか、

立たない」

おしんもそれだったはずだ。

「耐えるおしん、
夢を捨てないおしん、
優しさを失わないおしん」

この辛抱と商売は、紙一重。

人々の意識の中で、
結びつきやすいのかもしれない。
そして商売をする人間も、
紙一重で「金儲け」に走りやすい。

日曜日に、そんなことを思った。

〈結城義晴〉

2019年05月25日(土曜日)

商人舎オフィスそばに開業した「まいばすけっと」のLast1mile

5月のメッセージ[Message of May] caver_20190510_03
もっとお客に近づこう!

“Staying Close”――
「いつもお客さまのそばにいて、
お役に立ちます」
古くからのウォルグリーンのクレド。
ウォルグリーンは米国ドラッグストア。

「ネイバーフッドマーケティングとは、
お客さまの喜びに参加して、
その一部を分けていただくことです」
戦前のジョー・アルバートソンの言葉。
米国アルバートソンズの創始者。

マス・マーケティングから、
STPマーケティングへ。
そしてone to one Marketingへ。
どんどん、顧客に近づいていく。
それは我々の想像を超えて
スピードアップしてくる。

リージョナルから、
コミュニティへ、
ネイバーフッドへ。
さらにラストワンマイルへ。
そして最後にホームへ。

どんどんお客に近づいてゆく。
限りなくお客のそばに寄り添っていく。
商品そのものやサービスの中身よりも、
お客に近づくことのほうが重要になる。
とりわけコモディティの提供において。

生活が向上し、
消費が成熟してくると皮肉なことに、
コモディティ領域は拡大してきて、
ラストワンマイルからホームへが、
最も重要なカギを握ることになる。

しかしそのときにも、
顧客のそばにいるという姿勢と、
顧客の喜びに参加して、
その一部を分けてもらうという意識は、
永遠に変わることはない。

ラストワンマイル戦略こそ、
ネイバーフッドマーケティングである。
だから、もっとお客に近づこう。
お客のそばに寄り添おう。
お客の喜びを分けてもらおう。〈結城義晴〉

この「もっとお客に近づこう!」は、
月刊商人舎5月号の主張。
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お陰様で大好評。

[特集のまえがき]は結城義晴執筆。
「最後の顧客接点」が
総取りさせる競争時代

「ラストワンマイル」は、
直訳すれば「最後の1マイル」
すなわち商品が顧客に届くまでの、
最後の段階の「1610メートル」

半径800メートルの円を描けば、
これこそラスト1マイルの顧客が、
居住する商圏となる。

この「ラストワンマイル」は、
「最後にして最強の顧客接点」である。

その顧客接点が競争優位をつくり、
商売の生命線を握ることになる――。

日本の場合、その業態はコンビニだった。

「しかしこのコンビニ産業が
2016年3月から昨2018年7月までの
29カ月連続で既存店客数前年割れを示した」

「ラストワンマイルビジネス」の王者に、
陰りが見えた。

eコマースのラストワンマイルが、
彗星のように登場したからだ。

しかしそれだけではない。

横浜商人舎オフィスのそばの新田間川。61421139_2480046095391873_3904901875165560832_o

2013年1月31日に、
ファミリーマートがオープンして、
6年ほど営業していた。
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しかし今年、閉鎖。
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そのあとに、
イオンまいばすけっと。IMG_69639

オープン準備をしていた。IMG_69649

5月24日(金曜日)にオープンした。60877421_2480046105391872_3655739152898457600_o
私の自宅の妙蓮寺駅にも、
2店のセブン-イレブンの間に、
まいばすけっとが開店して、
顧客たちは重宝し、
店舗側は繁盛している。

身近にまいばすけっとがあると、
コンビニとは違うラストワンマイルの、
その利便性に納得させられる。

イオンにはまいばすけっと㈱がある。
関東地方の東京・神奈川で766店、
ドミナント展開している。

それ以外にはイオン北海道㈱が36店。
こちらはまだドミナントとは言えないが、
都市型小型食品スーパーマーケット。

コンビニエンスストアではない。

1号店はイオン㈱が、
2005年12月に新井町店を開業して始業。
横浜市保土ケ谷区の店舗で、
この店は閉鎖しているが、
東京23区と横浜川崎両市以外には、
出店しない。

新田間川の店のように、
コンビニが撤退した跡にも出店できる。

2008年にイオンから、
イオンリテール㈱へ事業承継。
さらに2012年1月21日、
まいばすけっと㈱として独立。
この時点で246店舗だった。

今年の2月期決算では、
売上高1537億円、前年比9.6%増。
イオンのなかでは超優等生。

営業利益19億7900万円、
経常利益19億9900万円。
どちらも今のところ、
売上対比1.9%と低く抑えられているが、
1000店を超えたら急速に高収益になる。

イギリスのテスコは、
大型の「エクストラ」と、
中型レギュラーの「スーパーストア」。
これらが主力フォーマット。

そして小型の「エクスプレス」
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都市型の「メトロ」
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つまりマルチフォーマット戦略。

テスコはこの4つのリアル店舗を、
メッシュのごとく配置し、その間を、
テスコ・コムとテスコ・ダイレクトで、
埋めてしまう。
これらがeコマースであり、
宅配ビジネスだが、
テスコがラストワンマイルを、
マルチフォーマット&オンラインで、
綿密に組み立てていることがわかる。

このエクスプレスとメトロを、
上手にミックスしたのが、
イオンのまいばすけっとだ。

特にディスカウントするわけでもないし、
しかしコンビニよりはるかに安くて、
そのうえ内食需要に対応して便利。

ラストワンマイルは、
eコマースだけではない。

むしろマルチフォーマットが、
ラストワンマイルの総合戦略となる。

〈結城義晴〉

[追伸]
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結城義晴・著


コロナは時間を早める

結城義晴・著


流通RE戦略―EC時代の店舗と売場を科学する

鈴木哲男・著

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(イーストプレス刊)

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