終戦の日から盆の明けへ。
夏が過ぎてゆく。
長いながい梅雨。
そして台風と酷暑。
真夏の時期は短かった。
ざんぶりと一雨浴(あび)て蝉の声
〈小林一茶〉
高崎市は、
群馬県最大の人口を誇る。
36万8846人(2019年6月1日)。
群馬県の県庁所在地は前橋市だが、
こちらは33万3586人。
互いに競い合っている。
昔々のTBSラジオ深夜放送番組、
パックインミュージック。
野沢那智と白石冬美がパーソナリティで、
「ナチチャコ」と呼ばれていた。
この番組で、
「前高・高高」合戦があった。
前橋高校と高崎高校が、
互いにけなしあうという趣向。
懐かしい。
その高崎駅前に、
高崎OPA(オーパ)。
一昨年の2017年9月11日の報道。
イオンnews|
ビブレ跡地に「高崎OPA」10/13グランドオープン
2年前の10月13日にグランドオープン。
旧高崎ビブレ。
商業施設の敷地面積は約7400㎡(約2240坪)。
建物構造は地上8階建ての、
関東有数のショッピングビル。
2階から5階はファッション、
6階は家具や文具などの専門店街、
7・8階はフードコートと飲食店ゾーン。
それにエンターテインメント。
1階フロア全面に、
イオンスタイル高崎駅前。
イオンリテール㈱のスーパーマーケット。
2年前のオープンとはいえ、
もうイオンフードスタイルは、
完成の域に近づいていた。
インストアベーカリーとグロサリー。
店舗の奥には、
ドラッグストアと酒ショップ。
グランビューティークとイオンリカー。
そしてイートインコーナー。
ヤオコー高崎高関店。
埼玉県が本拠地のヤオコーも、
この高崎駅周辺に3店を展開。
高崎飯塚店、高崎井野店と、
このマーケットプレース高崎高関店。
商人舎流通スーパーニュース。
ヤオコーnews|
第1Q営業収益5.2%増・営業利益0.5%減/消耗戦開始!?
ヤオコーの第1四半期は増収営業減益。
私は「消耗戦開始!?」と位置づけた。
この店は右手入り口に青果部門と、
インストアベーカリー&惣菜部門。
ヤオコーの店には主に2つのタイプがある。
巨匠・鈴木哲男の見事な命名。
「こってり型とあっさり型」
こってり型は、入口に、
青果と惣菜・ベーカリーを寄せる。
あっさり型は、コの字型レイアウトの、
両サイドに青果部門と惣菜部門を分ける。
この高崎高関店はこってり型。
青果・惣菜から鮮魚につながり、
奥壁面沿いは精肉や日配。
左コーナーにワインとチーズ。
そして最後が冷凍食品売場。
こってり型はこのゴールのところが、
ちょっと弱い。
しかしお盆商戦のこの高崎高関店は、
まんべんなく顧客が入っていて、
ずいぶん売れていた。
なぜヤオコー高崎高関店が、
こってり型の店になっているのか。
それはほんの目と鼻の先に、
この店があって、競合しているからだ。
ベルク江木店。
ベルクは現在、112店舗のスケールだが、
この高崎地区に5店舗を集中出店。
ドミナントを形成している。
高崎大八木店、フォルテ高崎店、
高崎日光店、 飯塚店、
そしてこの江木店。
商人舎流通スーパーニュース。
ベルクnews|
第1Q5.5%増・センター設備改修で経常利益3.5%減
ロジスティックスを充実させて、
好調を維持している。
入口の青果部門には「お盆」の垂れ幕。
「土着」をイメージさせる。
冷凍食品部門は、
「毎日安っ!」のオンパレード。
「メガ盛」も盛大に展開。
そして低価格の惣菜売場。
ローコストオペレーションに徹して、
ヤオコーとは異なるポジショニングだ。
ヤオコーとベルク。
きれいに棲み分けている。
もちろん周辺にはベイシアや、
とりせん、フレッセイが競合して、
群馬県第一の商都高崎は、
スーパーマーケット激戦区だ。
お盆商戦らしい激闘が、
静かに展開されている。
東京新聞巻頭コラム「筆洗」
「夏盛り本日閉店左様なら」
「閉ざされたシャッターに
こんな張り紙があった。
東京・阿佐谷」
作家・ねじめ正一の「ねじめ民芸店」が、
8月7日に店仕舞いした。
阿佐谷に店を開いたのが1972年。
昔懐かしい玩具や季節の品々を売る。
阿佐谷パールセンター商店街の顔だった。
この商店街は「七夕まつり」で有名だ。
コラムの展開は、
ねじめ民芸店閉鎖から、
商店街の衰退へ、
そしてその商店街への、
ドラッグストアの進出へ。
さらにココカラファインとマツキヨの、
経営統合の話へ。
「えっ、ココカラと一緒になるのは
スギ薬局じゃなかったか。
土壇場でマツキヨが
ココカラの心を奪い返したらしい。
なかなか壮絶な展開である」
しかし商店街に関しては、
初めは一番外側の外れに、
スーパーマーケットがあった。
その後、コンビニに席巻され、
最近はドラッグストア。
商店街も業態の盛衰とともにある。
「店舗過多に人口減。
将来を考えれば、今は好調な業界も、
“薬九層倍”の楽な商売ではなく、
生き残りをかけて、競い合う」
「薬九層倍」は「くすり-くそうばい」と読む。
「暴利をむさぼることのたとえ」で、
あまりいい言葉ではない。
三省堂新明解四字熟語辞典では、
「薬の売値は原価よりはるかに高く、
儲けが大きいこと。
薬は売値が非常に高く、
原価の九倍もするという意から」
この辞典の用例に、
丸谷才一「笹まくら」からの引用がある。
「薬九層倍というのは、
あれは製薬会社と医者のことで、
薬の小売店じゃ
そうはゆかねえんだそうだな」
その通り。
競争は時代とともに、
地域ごとに変わってゆく。
主役の座がスーパーマーケットから、
コンビニエンスストアへ、
そしてドラッグストアへ。
しかし古い業態が全滅して、
新しい業態がすべてを、
塗り替えてしまうわけではない。
〈結城義晴〉