今日は1日、横浜商人舎オフィス。
裏の遊歩道の緑は美しい。
アロハとストローハットで恐縮。
東京新聞の巻頭コラム、
「筆洗」
中日新聞の「中日春秋」と、
同じ文章の日もある。
そうでない日もある。
中日新聞は中部・東海地方のブロック紙で、
その子会社が東京の地方紙「東京新聞」。
だから両紙の巻頭コラムが、
同じ文章になる日が多い。
朝日、讀賣、毎日、日経、産経を、
「全国紙」と呼ぶ。
チェーンストアに置き換えると、
これがナショナルチェーン。
中日新聞をはじめとして、
北海道新聞、西日本新聞、中国新聞など、
数県あるいはそれに見合う地域の新聞を
「ブロック紙」というが、
これがリージョナルチェーン。
そして一つの県に専念する新聞が、
「地方紙」で、これがローカルチェーン。
新聞の経営軸と、
チェーンストアのドミナント戦略は、
同期している。
今日の地方紙のコラム「筆洗」は、
中日春秋とは異なる内容。
料理メニューのコースの論議。
コースは二つ考えられる。
⑴お値打ちコース四千円
⑵満足コース五千円
この2つのコースでは、
どちらを選ぶか決め手がない。
そこで一つのコースを加える。
⑶豪華プラン一万円
そして三つのコースから選ぶ。
こう設定すると、
⑵の満足コースを選ぶ人が増える。
「値の高いプランを加えることで
⑵を安く感じる効果がある」らしい。
営業マンの「指南書」にある。
「コントラスト効果」。
「対比効果」ともいう。
小売業の世界にも、昔からある。
①売れ筋
②死に筋
②見せ筋
①の売れ筋は、
「品揃えラインのなかで、
最もよく売れている商品」
(商業界『商業用語事典』の故高山邦輔定義)
「特にきわだって販売量の多い品目で、
在庫量の適正な商品」
(『必須単語1001』の故渥美俊一定義)
ABC分析をして、
よく売れるA分類の商品。
わかりやすい。
売れ筋に関しては、
品切れや欠品があってはならない。
②の死に筋は、
「カットしたい商品」
――「言いえて妙」の浅香健一定義は、
『商業用語事典』から。
「品種ごとにあらかじめ各社が決めてある
在庫年令制限を超えて在庫している商品」
(渥美定義)
「ふつうはその品種の商品回転日数の
1.5倍を枠とする」
漠然と「売れない商品」では、
実態を把握できない。
「商品回転率が低い商品」だとしても、
その低いレベルがどのくらいかが、
決められていなければならない。
渥美理論は執拗に、
数字で事実を把握しようとする。
これはとても大事な姿勢だ。
③の見せ筋は、
「販売数量は少なくても、
店に欠くことのできない商品」
(浅香定義)
「店格を高めたり、
値ごろの商品の売れ行きを
よくしたりする効果がある」
これがコントラスト効果である。
ただし私は、
「見せ筋」という語感は、
よろしくないと思うし、
使わない。
どんな店でも、
売場は無限にあるわけではない。
しかもネット販売がこれだけ普及すると、
eコマースには「見せ筋」が、
これでもかと提示されている。
スマホを見れば、
いくらでもそんな商品は出てくる。
だからリアル店舗の「見せ筋」は、
効果が薄らいだ。
浅香健一先生も、
商業界からの依頼で、
一般的な定義をしたものであって、
これをお勧めしているわけではない。
筆洗のメニューコースの話に戻ると、
売れるのは⑴のお値打ちコース。
⑵の満足コースも売れるけれど。
しかし⑶を提案しておくと、
対比効果で⑵が売れる。
ただし渥美理論では、
「売価の上限と下限の幅を狭くせよ」
つまり⑶は否定される。
⑴と⑵で、トータルに低価にせよ。
とりわけ⑴を強調せよ。
それが渥美俊一流。
営業マンの指南書と、
渥美チェーンストア理論は異なる。
私の商品論・価格論の基本はいつも、
コモディティと、
ノンコモディティ。
渥美理論はコモディティ重点型。
コモディティディスカウント主義。
しかしアメリカでも、
ホールフーズマーケットや、
HEBセントラルマーケット。
世界のイータリーなども、
ノンコモディティに高い価値を認める。
消費トレンドは必ず、
高度化、高質化、個性化し、
その結果として多様化に向かう。
歴史がそれを示している。
そして重要なことだが、
コモディティとノンコモディティには、
コントラスト効果も働く。
コラムはG7サミットへ。
日米首脳による貿易協定。
米国産の牛肉・豚肉の関税を、
日本側はTPPの水準に引き下げる。
日本側が求めていた乗用車は、
関税撤廃が見送りとなって、
現在の2.5%に据え置かれた。
「それでも一時期、トランプ大統領が
安全保障を理由に、
日本車を含む輸入自動車に
25%の追加関税を加えると
主張していたことを思えば、
そんなことはなかった分、
今回の合意がありがたく見えてくる」
コラムニストの発見。
「あっ。これがコントラスト効果なのか」
「日本の要求はうっちゃられたのに
上出来の交渉のように考えてしまう。
しかも合意の全貌はまだ見えていない」
しかし国と国の貿易交渉の場に、
コントラスト効果はない。
コモディティとノンコモディティ。
選択の自由が保障されたところに、
コントラスト効果がある。
〈結城義晴〉