リーチマイケル。
ラグビー日本代表主将。
30歳。
ニュージーランド出身で、
国籍は日本。
父はスコットランド系ニュージーランド人
母はフィジー人。
ポジションはフォワード。
ナンバーエイト、フランカー。
身長189cm、体重105kg。
15歳で日本に留学生として来日。
札幌山の手高校入学、卒業。
東海大学体育学部へ進学。
東海大学体育会ラグビーフットボール部。
2011年に卒業後、
東芝ブレイブルーパスに加入。
同年開催のワールドカップ日本代表。
12年に東海大学同級生の知美さんと結婚。
13年に日本国籍を取得すると、
「Michael Reach」から、
「リーチ マイケル」に表記を変えた。
2014年4月、
エディー・ジョーンズヘッドコーチから、
日本代表キャプテンを指名される。
歴史的な勝利を収めて、
今日、記者会見で発言。
朝日新聞が報じた。
「ある競技から刺激を受けていた」
それはバレーボール。
同じ時期にワールドカップを日本開催中。
リーチは自身のアイルランド戦前夜に、
女子バレーボールの日本対セルビア戦を見ていた。
セルビアは世界ランキング1位。
日本は同6位。
女子日本代表のキャッチフレーズは、
「火の鳥NIPPON」
この試合に日本はフルセットの逆転勝ちをした。
リーチは「とても感動した」と語った。
日本代表の中田久美監督は、
このリーチの言葉を選手に伝えた。
アタッカーの鍋谷友理枝。
「私もラグビーのスローガンの
“ワンチーム・ワンハート”で、
何ができるかと考えてコートに立った」
セッターの佐藤美弥。
「ラグビーの選手たちも
“勝つ気持ちが大事だ”と言っていた。
そういう気持ちで今日の試合に臨んだ。
強い思いが結果につながった」
16リオデジャネイロ五輪4強のオランダに、
セットカウント3対1で快勝。
中田久美監督はリーチの言葉に返礼した。
「光栄に思う。選手の力になった」
〈1998中田久美写真集より
「競技、種目を越え、
スポーツ界がどんどん変わっていけばいい」
バレーボール女子は、
このワールドカップで6勝5敗の5位。
世界ランキング6位からは、
一つ上の成果だった。
まあまあの成績だが、
セルビア戦、オランダ戦では、
金星を挙げた。
私が中学・高校のころのバレーボールは、
9人制だった。
もちろんオリンピックでは、
1964年の東京の「東洋の魔女」のころから、
もう6人制となっている。
9人制は前衛・中衛・後衛。
役割やポジショニングが決まっていて、
ローテーションがない。
6人制はバレーボールを、
革命的に変えた。
6人がローテーションで、
ぐるぐる回る。
バックアタックなど、
後衛の選手がアタックする。
これらの新戦術はほとんど、
日本が考案したものだ。
ただし、このローテーションの反動か、
1998年から「リベロ」という、
守備専門のポジショニングが生まれた。
おもしろい組織変更だ。
自由なローテーションが主流となったら、
「リベロ」(自由人)という専門職が登場した。
一方のラグビーは、
15人のポジショニングが、
ほぼ決まっていて、
専門化されている。
リベロもいない。
フォワードは8人で、
その第1列は、
両サイドのプロップ2人と中央のフッカー。
2列目はロック2人。
3列目は両サイドのフランカー2人と、
ナンバーエイト。
リーチマイケルはこの3列目の専門家。
ハーフは2人で、
スクラムハーフとスタンドオフ。
バックスは5人。
当たりに強いセンターが2人、
俊足のウィングが2人、
そして最後にフルバック。
そしてこの中から、
キッカーが1人選ばれる。
五郎丸歩はフルバックでキッカー。
現在の田村優はスタンドオフでキッカー。
ちなみに五郎丸は早稲田大学出身、
田村は明治大学出のラガー。
サッカーのポジションは、
やはりフォワード、
ミドルフィールダー、
ディフェンダー、
そしてゴールキーパーと決まっている。
しかしバレーボール6人制のように、
かなり流動的、臨機応変で、
ほとんど全員がシュートを放つ。
1970代までのサッカーは、
攻撃と守備が完全に分業制だった。
しかし西ドイツに、
フランツ・ベッケンバウアーが登場して、
それをひっくり返してしまった。
皇帝ベッケンバウアー。
ポジションはセンターバックだった。
ラグビーでいえばフルバックだ。
しかしベッケンバウアーは、
攻撃的センス抜群の選手で、
最後尾からパスを繋ぎ、攻撃に加わり、
シュートまで放つという、
画期的なポディションを確立させた。
ここから「リベロ」が誕生した。
現在はチーム戦略の進化によって、
リベロはすたれてしまったが、
それでも力量があれば、
その役割は消えることはない。
システムとして最も進化したのが、
バレーボールと言えるかもしれない。
世界が「スピード」を求めたからだ。
ラグビーにも「7人制」のセブンスがあって、
ワールドカップも開催されている。
しかしラグビーゲームの主流は、
15人制の専門職集団の激突だ。
そのスペシャルティこそが、
ラグビーの魅力なのだと思う。
難しそうだが、
知れば知るほど面白い。
それがラグビーだ。
サッカーは全員守備の全員攻撃。
バレーボールも全員守備の全員攻撃、
プラス「リベロ」。
ラグビーももちろん、
全員守備の全員攻撃が基本で、
タックルがそれを象徴するものだが、
一方で、専門性の高い技術と知見を求められる。
ベースボールも、
アメリカンフットボールも、
その意味では専門性が高い種目だ。
スペシャリストとオールラウンダー。
ビジネス実務では、
スペシャリストとゼネラリスト。
わが社はバレーボール派なのか、
ラグビー派なのか、
それを明確に戦略化する必要がある。
どちらが優れているとは言えない。
しかしリーチマイケルが、
中田久美らに感動し、
また中田久美らが、
リーチマイケルに元気づけられた。
その本質は、
“ワンチーム・ワンハート”にある。
ゼネラリストとスペシャリストが、
ワンチーム・ワンハートで仕事を進める。
それが戦略や種目を超えて、
何よりも大切なのだ。
〈結城義晴〉