10月1日。
神無月。
3月から勘定して8番目、
だからOctober。
今日から消費税が上がる。
まだシステムが追い付かない店もある。
システム切り替えの投資額が大きくて、
廃業する店もある。
さらりと2%だけ、
上げておけばよかったのに。
しかし、知識商人は、
右往左往すべからず!
日経新聞「きょうのことば」は、
ずばり「消費税」。
その日経による定義。
「モノやサービスを取引する際にかかる間接税」
ただし消費税は多段階間接税。
製造業、卸売業、小売業・サービス業に、
それぞれの段階で課税される。
売上税は単段階間接税。
小売業・サービス業の最終段階に課税される。
日本やヨーロッパが消費税、
アメリカが売上税。
日経新聞。
「特定の人に負担が偏らず、
多くの人に薄く負担がかかる。
累進課税制度がある所得税に比べ、
低所得層に負担が重いとされる」
税金には2つの種類がある。
直接税は負担者がそのまま納税者となる。
間接税は負担者と納税者が異なる。
直接税は所得税や法人税などで、
間接税の代表が消費税や売上税。
このほかに、
「酒税」のごとく特定品目の税がある。
日本で消費税が初めて導入されたのは、
竹下登改造内閣の1989年4月。
平成時代に入ってからだ。
税率は3%でスタートしたが、
このころは直接税と間接税の比率は、
国と地方を合わせて、
79対21だった。
1997年4月に5%に引き上げられ、
2014年4月には8%に上がった。
そこで2018年度の直間比率は、
68対32に変わった。
さらに今日からの消費増税で19年度は、
67対33となる見込みである。
平成の30年間、そして令和になっても、
消費税を軸とした間接税シフトが、
日本税制の基調となってきている。
きょうのことば。
「2019年度の一般会計予算で
消費税収は19.4兆円で、
全体の約3割を占める」
「政府は、
10%への引き上げによる税収を
年間約5.6兆円と見積もる」
「2.8兆円は少子化対策や
低所得の高齢者支援などに回し、
残りの2.8兆円を
借金の返済などに回す方針だ」
この国の借金は1000兆円を超えている。
2019年度末の長期債務残高は、
1122兆円に達する見込みだ。
これは国内総生産の約2倍となる。
それなのに増税対策として、
2兆3000億円もの大盤振る舞いがなされる。
それがポイント還元などに使われる。
ああ。
さらりと2%だけ、
上げておけばよかったのに。
今回の増税対策によって、
結果として消費税率は5通りとなる。
⑴増税された標準税率の10%。
⑵食品や新聞の軽減税率の8%。
⑶コンビニなどフランチャイズ店の、
キャッシュレス決済の6%。
コンビニはポイント還元分2%を、
即時還元、つまり割引する。
⑷中小企業には、
キャッシュレス決済の優遇策が施される。
ポイント還元5%だから、
標準税率は5%。
⑸中小企業の軽減税率商品は、
結局、3%となる。
これで10%、8%、6%、5%、3%、
「5パターンの混沌」となった。
その中小企業も、
キャッシュレス決済の登録は、
約200万軒のうちの4分の1ほどだから、
登録していない店は、
標準税率10%と軽減税率8%。
そこでたいてい、店の側は、
少しでも「得」をしようと、
策を弄する。
顧客の側も、
少しでも「得」をしようと、
あれこれ算段する。
結局、これは、
「損得」を優先する取引になる。
私が一番、憂慮しているのは、
商売十訓の第一訓が、
ないがしろにされてしまうことだ。
「損得より先に善悪を考えよう」
もちろんお客様にとって、
「得」になることには、
あくまで敏感であるべきだ。
しかしそれが、
店の信頼につながることなのか。
お客様と長いながいお付き合いが、
できることなのか。
そのことをいつも考えていたい。
ただし損得よりも善悪を考えても、
価格競争は絶対に激しくなる。
5%還元されない企業が、
5%分の安売りや販促を、
次々に仕掛けてくるからだ。
激烈な肉弾戦。
㈱ヤオコー川野幸夫会長が言う、
「体力勝負」。
その体力勝負をしながら、あくまで、
フェアーな態度をとり続けねばならない。
そのためには、
「ティンバーゲンの定理」
政策目標の数と政策手段の数は
同じにしなければならない。
「ティンバーゲンの定理」考案者は、
オランダの経済学者Jan Tinbergen。
1969年、世界初のノーベル経済学賞受賞。
「N個の独立した政策目標を
同時に達成するためには
N個の独立した政策手段が
必要である」
「2つやりたいことがあったら、
2つの対応策を準備せよ」
価格対策の目標には、
徹底したローコスト&ロープライス。
付加価値開発の目標には、
そのための徹底的な対策。
両方、同時に対策を準備して、
徹底してやらねばいけない。
そう、この定理は私たちが感動した、
ワールドカップラグビー日本代表の戦略だ。
肉弾戦のフィジカルな強化と、
精神戦のフェアな心の養成。
つまり今日から、
日本の心ある商業が、
ラグビーワールドカップのような闘いに、
突入するのだ。
リーチマイケル率いる、
日本のフィフティーンと、
まさに同志的な心持ちで、
勝ち抜く闘いである。
ともに、頑張ろう。
〈結城義晴〉