ドナルド・トランプが、
ダラスに来ている。
フリーウェイが妙に混んでいると思ったら
対向車線を大統領専用車が通過した。
我々のリムジンバスのドライバーが、
ぼそぼそと教えてくれた。
テキサス州は共和党の牙城。
トランプにとっても、
極めて重要なエリアだ。
さて平和堂米国研修第18団。
2日目の朝を迎えて、
セミナー。
団長の青山健司さんが朝の挨拶。
平和堂東海営業部部長。
司会は平和堂旅行課の種村基さん。
それから結城義晴の講義。
2時間。
テキストは400ページ近くの厚さである。
それを全部理解し、納得してもらいたい。
この2年ほどは若手の主任クラスが増えた。
だからわかりやすく丁寧に講義する。
今回強調したのは、
サムの10ルール。
第1は、
Commit to your business.
自分の仕事に献身・専心せよ。
自分の仕事を愛し、誇りを持ち、
献身的にそれをやり遂げる。
第2に、
Swim upstream.
世間に逆流・逆行せよ。
直訳すれば、川上に向かって泳げ。
川の流れに逆らって泳ぐのは辛い。
しかしそれをしつつ、
顧客から支持される。
サム・ウォルトンは1980年に、
エブリデーロープライスを始めた。
これは世間に逆行する考え方だった。
メーカーは協力してくれなかった。
しかしサムは川上に向かって泳ぎ続けた。
10年後の1990年。
主要なノンフード商品群が、
エブリデーロープライスに成功した。
そしてその年、ウォルマートは、
シアーズとKマートを抜いて、
全米第一の小売業となった。
仕事にコミットし、
世間に逆行した。
それが世界最大企業に成長するための、
礎となり、原動力となった。
そのウォルマートの戦略が、
「早仕掛け・際の勝負・早仕舞い」
今、店頭はハロウィン一色。
しかしサムズクラブは、
もうクリスマス商材を前面に出す。
この早仕掛けと際の勝負は、
今年の日本の年末商戦でも、
重要なポイントになる。
9月20日の事前講義の復習も交えながら、
視察研修に必須の項目を確認した。
最後に今日の訪問企業の歴史や特徴、
直近の問題などを整理して、
2時間はあっという間に過ぎた。
講義が終了したら、
すぐに視察研修に出発。
まず、クローガー。
その「フレッシュフェア」。
生鮮・惣菜強化の都市型スーパーマーケット。
デリカテッセンは、
ボアーズヘッドを入れている。
さらにチーズショップは、
「マレーズ」。
ニューヨークデリの店だが、
クローガーはこの会社を買収し、
デリ部門の核の一つにした。
メーカーのプロモーションを、
積極的に、そして多様に活用して、
活気のある売場づくりを展開している。
そしてウォルマートにも負けないような、
ハロウィンのプレゼンテーション。
蜘蛛の巣を張る演出で、
商品は取りにくいが、
それがハロウィンらしさを醸し出す。
今日はクローガーを2店舗、訪れる。
もう一つは非食品強化の大型店。
マーケットプレイス。
青果部門は市場の演出。
スポットライトが効果的に使われて、
商品が輝いて見える。
マレーズのショップは、
大型店ではコの字型のレイアウトで、
対面販売形式をとる。
マーケットプレイスは早仕掛けで、
クリスマスを提案。
ワインは早仕掛けのクリスマス演出。
奥壁面沿いの長い陳列線。
クローガー自慢の商品群が並ぶ。
メーカーの販促資材をフル活用して、
プロモーションを盛り上げる。
こちらも凝った演出。
これでクローガー全体の経費率は、
16.8%に抑えられている。
マーケットプレイスは、
アパレルを充実させて、
ウォルマートに対抗する。
そのアパレルブランドが「dip」。
試行錯誤が繰り返される。
ファーマシーは必須のカテゴリー。
その前に見事な島陳列。
店舗奥ではクリスマスを提案するが、
レジ前では盛大なハロウィンの販促。
どんどんWal-Mart化している。
レジは3人目を待たせない政策を貫く。
HEBの高級大型店。
セントラルマーケット。
店頭にはハロウィンの演出。
今回の訪問店舗をランクづけると、
第1位に評価できる。
入り口を入ると「氷の壁」。
これがセントラルマーケットの出迎え方。
トロピカルフルーツで、
おもしろい演出。
そのトロピカルフルーツで、
試食をしていた。
もち米を炊いたご飯とマンゴー。
なかなか面白い味をしていた。
ワサビ醤油をつけて寿司風に食べると、
きっと、うまいだろう。
根菜売場もグラデーションで陳列。
手前がハーブ、奥がトマト畑。
リンゴの圧倒的な品揃え。
柑橘類は壁面のイラストがすごい。
鮮魚と精肉が向かい合った売場。
何度来ても「いいなあ」と感心する。
ワインはソムリエがコンサルセールス。
グロサリーもユニークな品揃えで、
その上に壁面のイラストが楽しい。
ベーカリーは試食、試食。
そして最後は、
惣菜やデリカテッセンが、
ショップ形式によって、
これでもかと提案される。
セントラルマーケットはぶれない。
今回のなかでは最高の出来栄えだった。
次にいよいよ、
トレーダー・ジョー。
全米どこの店に行っても、
トレーダー・ジョーらしさは変わらない。
青果部門には1本19セントのバナナ。
しかし壁面などの演出は、
どの店も同じものはない。
エンドはボリューム感があって、
新製品が並ぶ。
その新製品は、
いずれも自社開発。
プライベートブランドが9割を占める。
リカー売場が全体の25%。
ワインは安くてうまい商品ばかり。
この店ではインタビューをした。
答えてくれたのはアンソニーさん。
通訳は藤森正博さん。
次々に質問が出る。
大西久美さんは、
フレンドリーさの秘密を質問した。
フレンドマート日野店の精肉主任。
Good Question!
アンソニーさん。
「ホスピタリティのある人を、
雇うのです」
身も蓋もない回答。
しかしそれが本質だ。
そしてトレーダー・ジョーには、
そんな人たちが押し寄せる。
Forbes調査。
全米で最も優れた雇用企業。
第1位に輝いたのがトレーダー・ジョーだ。
アンソニーさんは、
次々に質問に答えてくれた。
最後に全員写真。
そして握手。ありがとう。
ホールフーズマーケット。
一昨年8月にAmazonに買収された。
その後、商売のやり方が少し変わった。
しかしホールフーズの本質は変わらない。
店に入ると花が迎えてくれる。
そして秀逸の青果部門。
全体に在庫が減った。
それはアマゾン・プライムで、
2時間後に届けるサービスをしていて、
来店客が減ったからだ。
壁面にダラスとこの店の歴史が、
写真を添えて記されている。
鮮魚部門からBA・B・Q、
そして精肉対面部門へ。
チーズショップは、
ホールフーズ独自の展開だが、
品揃えも豊富だし、クォリティも高い。
この店はやや小型なので、
レジの後ろにビールバーやワインバーを、
設けることができない。
そこでチーズショップの隣に、
ワインバーをつくっている。
顧客もワインを楽しんでいる。
そしてベーカリーからデリへ。
セルフデリはホールフーズが開発した。
アマゾン・プライム会員用レジが、
ずいぶん多く設けられるようになった。
ホールフーズはどんどん変わっている。
スプラウツファーマーズマーケット。
この1年間に11.6%の成長で、
年商は52億0700万ドルとなった。
1ドル10円換算で5207億円。
店舗中央の青果部門と、
その手前のバルク部門が核となった店舗。
バルクフードは全米第一か。
右サイドに、
ブッチャーショップと、
フィッシュマーケット。
左サイドに乳製品・冷凍食品とグロサリー。
青果部門を核として、
便利な食品が揃う。
要は大型八百屋である。
それが受けている。
最後はトータルワイン。
ワインを中心にリカーを総合品揃えした。
この企業にしかない輸入ワインが、
大量に品揃えされる。
国別、地域別、年代別、品種別。
ワインに関しては広くて深い品揃え。
ウェディングドレスが飾られて、
そのためのワインを提案。
入り口横には、
ハロウィンプレゼンテーション。
おどろおどろしい。
店舗入り口右脇には、
ガラスケースに入ったプレミアムワイン。
最高の品はこれ。
スクリ―ミング・イーグル。
1本3399ドル。
約34万円。
ウォルマートにできない商売。
これがアメリカでの生き残り方だ。
トータルワインも、
それを示してくれている。
この定番の視察の間に、
最新実験店を2店、訪問。
サムズクラブナウ。
ウォルマートのサムズクラブは、
メンバーシップホールセールクラブ。
そのレジレス実験店。
昨年11月のオープン。
約900坪の倉庫型スーパーマーケット。
そして完全レジレス店舗。
エミリーさんが丁寧に説明してくれた。
実験店舗の位置づけをして、
さまざまな仮説を立てて、
その仮説を検証している。
ただし、店としての魅力に欠ける。
だからいまだに客数は多くはない。
これが実験になるのかどうか。
それはわからない。
店内で写真を撮っていたら、
女性の店員さんが、
「一緒に撮って!」と言ってきたので、
自撮り。
結構、暇な店です。
従業員はいまのところ20人。
レジがないとはいえ、
補充作業や説明要員が必要だ。
もう一つが、
セブン-イレブンの実験店。
サムズクラブナウは、
前回の第17団でも訪れた。
しかしセブン-イレブンは初めての訪問。
こちらも、
驚かされるほどのイノベーション。
3月22日のオープン。
店内は斬新なデザイン。
天井はスケルトン。
コンビニでありながら、
ワインショップは充実。
グリルホットドックを導入。
クイック・トリップをそっくり真似した。
スムージーやフレッシュジュースも、
セルフで購入できる。
ファストフードのタコスを隣接させて、
コンビニとファストフードの、
コンビネーションストアにした。
これは面白い。
日本のセブン-イレブンよりも、
革新性があるかもしれない。
今日もいい勉強ができた。
このあと、ホテルに戻って、
恒例の調理大会。
その模様は明日、ご報告。
今日はこれにて。
(つづきます)
〈結城義晴〉