日本では、
「即位礼正殿の儀」の祝日。
ただし今年だけ。
「即位礼正殿の儀」とは、
いわゆる即位式、
あるいは戴冠式。
「国民に寄りそいながら、
憲法にのっとり、
日本国および日本国民統合の
象徴としてのつとめを
果たすことを誓います」
令和の今上天皇の宣言。
国と国民統合の象徴――。
わかりにくくて、難しくて、
そのうえ、しんどい「つとめ」だ。
拠り所は「憲法」。
しかしその憲法も揺れている。
なおさらわかりにくくて、難しくて、
しんどいことになる。
国を司る人々も、
国民も、
そのしんどさを、
共有しなければならない。
サンフランシスコにいて、
そんなことを考えた。
さて、平和堂米国研修第18団。
出発してから6日目になる。
朝から二度目の講義。
まず青山健司団長がスピーチ。
平和堂東海営業部部長。
そして結城義晴の2時間講義。
初めにイノベーションとは何か。
ドラッカー曰く。
イノベーションとは、
「人的、物的、社会的資源に対して、
新しい、より大きな富を生むこと。
その能力を与える仕事」
「富」という概念は、
「利益」ではない。
いわば「幸せ」のようなものだ。
顧客の幸せ、仲間の幸せ、
店や会社の幸せ。
そして社会の幸せ。
それを新しく、より大きく、生み出す。
取り分けて顧客の幸せ。
ドラッカーは言う。
「イノベーションとは、
顧客にとっての価値の創造である。
顧客への貢献によって評価される」
〈イノベーションの原理〉は5つ。
第一は、機会を徹底して分析する
第二は、自分の目と耳で確認する
第三は、焦点を絞り、単純なものにする
第四は、小さくスタートしなければならない
第五は、最初からトップの座をねらわなければならない
それからフォーマット戦略と、
ポジショニング戦略。
ダラスとサンフランシスコで、
自分の目と耳で確かめてきた事実をもとに、
できるだけわかりやすく、易しく、
しかし多角的に、丁寧に、
ゆっくりと講義した。
講義が終わったら、すぐに視察研修。
まずサンフランシスコダウンタウン。
Amazon Go。
Amazonのレジレス店舗。
業態はコンビニエンスストア。
2016年12月5日に、
ワシントン州シアトル、
アマゾン本社の一角にオープン。
初めはアマゾンの社員・従業員限定だった。
2年間の試験期間を過ぎて、
昨2018年1月22日に一般公開された。
それから1年9カ月。
シアトルに5店、シカゴに4店。
ニューヨークには3店。
このサンフランシスコには4店。
1号店は50坪クラスだったが、
この店は30坪。
店舗入り口を入ると、
左側にイートインスペース。
そしてゲートわきに店員が一人。
このゲートのセンサーに、
スマホにダウンロードしたアプリから、
QRコードの画面を出して、
それをかざす。
ゲートが開いて、
店内に入ることができる。
ビルの1階で細長い店内。
左サイドも奥まで見通せる店づくり。
一番奥にキット商品。
ミートやデリカテッセンも、
コンビニ商品化してある。
天井にはカメラ500台、
センサーやマイクもセットされて、
顧客を認識し、購買を確定する。
売場の左側には従業員の出入り口がある。
商品補充をするための通路で、
奥にストックヤードがある。
Amazon Goを体験して、
どう感じるか、どう考えるか。
それが知識商人としての将来に役立つ。
サンフランシスコ市街を後に、
1時間走ってバカビルに向かう。
そしてナゲットマーケット。
1926年創業のローカルチェーン。
現在は15店舗で、
4つのフォーマットを展開している。
入口に創業者の写真が掲げられている。
この店は2000年代に入って、
ヨーロピアンスタイルを取り入れて開発された。
入口左手にコーヒーショップ。
そして青果部門は、
言葉が出ないほど美しい。
床は薄茶色でピカピカ。
青果の鮮度は最高レベルで、
カラーコントロールが効いている。
最新のセルフデリ売場も用意されている。
鮮魚部門は壁面にトタンを活用している。
「fishwiseプログラム」を採用している。
対面の精肉部門も素朴な美しさ。
対面コーナーから、
多段ケースのセルフコーナーへ。
ワインとクラフトビールも充実しているし、
美しい売場となっている。
奥主通路はリーチインケースが連続する。
グルテンフリーのマークが掲げられている。
グルテンフリーアイテムには、
このマークが付けられている。
店舗中央を平冷凍ケースが走り、
その両サイドはリーチインケース。
この冷凍食品売場もファンタスティックだ。
店舗左奥にスペースがあって、
ここで一部、アパレルを展開。
そしてこのスペースには、
扇形にエンドが組まれている。
日用雑貨売場の石鹸コーナーは、
バスタブを活用して演出。
素晴らしい。
天井、床、什器、そして商品が、
まるで芸術作品のように配置されている。
レジ前には品ぞろえ豊富なバルク売場。
そしてどこよりもフレンドリーな、
チェックスタンド。
人のホスピタリティと、
店のファンタスティックさと、
そのうえで価格の安さがある。
これをアクチュアリーロープライスと呼ぶ。
見かけと違って本当に安いという意味。
店をぐるりと見終わってから、
ミーティングルームで、
インタビュー。
応対してくれたのはブラッドリーさん。
アシスタント・ストアディレクター。
ヒューマンリソース担当の副店長で、
人の問題を強調してくれた。
映画俳優のようないい男。
活発な質問もあって、
質疑応答は30分を超えた。
ホスピタリティ溢れる人材は、
どう教育するのか。
「もともとそんな人を採用するのです」
トレーダー・ジョーと同じ返事だった。
ナゲットマーケットは、
Fortuneの「働きたい企業ランキング」に、
いつも選出されている。
今年は求人数42人に対して、
応募者総数1万7358人だった。
そのなかから採用するから、
選り取り見取りということになる。
青山健司団長と握手。
もちろん私も握手。
そして全員で写真。
最後の最後は、
ウィンコフーズ。
最新の年商76億9000万ドル。
1ドル100円換算で7690億円。
店舗数は125店。
ディスカウントスーパーマーケットで、
倉庫型のスーパーウェアハウスという。
従業員持ち株制度が導入されていて、
社員のモチベーションはすごく高い。
ファサードの壁面に、
An Employee Owned Companyと書かれている。
店舗面積は9万4000平方フィート(7500㎡)。
標準化が進んでいる。
天井はむき出しで、
ノンフリルの低投資型店舗だ。
約150人のアソシエイツが、
効率よく店舗運営をし、売場を管理している。
入口を入ると「The Wall Of Values」がある。
いわばエンド陳列の連続。
そして競合店価格比較POPがある。
ウォルマートより安い。
地元のローカルチェーンのレイリーズよりも、
ナショナルチェーンのセーフウェイよりも、
世界最大企業のウォルマートよりも安い。
壁がおわると青果部門。
単品大量販売を徹底する。
バナナはいいものが安い。
野菜や果物も、
リーチインケースに、
段ボールやクレートで陳列する。
しかしそれでも美しい。
青果に続いてバルク売場。
これがセオリー。
そして店舗中央まで対面コーナー。
精肉と鮮魚とデリカテッセン。
対面コーナーの前の、
平冷凍ケースにも、
超お買い得品が並ぶ。
ニューヨークステーキが、
1ポンド(454グラム)9.28ドル。
ミルク売場では、
1ガロンが3.17ドル。
冷凍食品のケースの陳列線は長い。
通路がレジに対して平行に設定されて、
店が横に見通せる。
店舗左サイドには、
広大なインストアベーカリー部門。
ウィンコフーズも、
安いけれど鮮度感も味もいい。
レジではサッカーサービスを展開しない。
その分は徹底して価格に反映させる。
ウィンコの徹底ディスカウントも、
ナゲットのアクチュアリーロープライスも、
どちらも見事なポジショニング戦略である。
ポジショニングができない企業は、
アメリカでは生き残れない。
それをナゲットとウィンコが示している。
(つづきます)
〈結城義晴〉