万代知識商人大学。
日本のスーパーマーケット業界で、
多分、最初につくられた企業内大学。
その第4期の修了旅行。
2日目は、視察店が盛りだくさん。
ポジショニング戦略を学ぶ。
そのポジショニングは様々だから、
多くの企業、多くの店を体験する。
朝7時にホテルを出発。
ベイブリッジを渡って、
対岸のバークレイへ。
朝9時のオープン。
店の一角を占める「アレグロ」カフェで、
コーヒーなどを飲みながら待つ。
焙煎工場を併設した気持ちのいいカフェ。
朝8時からオープンして、
朝食需要を取り込んでいる。
小型のギルマン店は、
ワンウェイでお客を誘導する。
青果部門からからチーズ売場へ。
ブリュワーズと名付けられた、
クラフトビールの売場。
その手前にはワイン売場。
最後に集中チェックスタンド。
ステンドグラスの壁面の裏が、
店舗導入部の青果売場。
ぐるりと店を1周する。
もちろん青果売場に向かわずに、
入口から真っすぐ進めば、
デリや飲料の簡便即食ゾーンに入って、
コンビニエンスな買物ができる。
小型店のレイアウトとして、
よくできた設計だ。
このギルマン店から
車で10分足らずにあるのが、
バークレイボウル。
バークレイボウルは、
バークレイ市に2店舗を展開する
支店経営のスーパーマーケット。
セーフウェイの跡地に、
青果を主体とした1号店を出店。
グレン・ヤスダ夫妻が教師を退職して、
食品店を始め、
それからスーパーマーケットに転換した。
これが超繁盛店となって、
週末には大渋滞を引き起こした。
バークレー市はこの渋滞に困って、
土地を用意して2号店出店を促した。
そして10年前にできたのが2号店。
このたび全米食品小売業のなかで、
イータリーに次いで、
第2位の評価を受けた。
凄い。
店舗棟とカフェ棟がある。
そのあいだの屋外プロモーション売場。
77歳になったダイアンさん。
旦那さんのグレンさんは84歳。
でも、第一線で仕入れに携わっている。
2階のバックルームも案内してくれた。
青果は5温度帯別に倉庫がある。
こちらはセントラルキッチン。
1・2号店の惣菜やオリジナル商品を、
ここで製造している。
ダイアンさんが、
手づくりのポテトチップスを、
味見させてくれた。
米油で揚げたポテトは美味。
売場も部門別に説明してくれた。
全米でブームのコンブチャは、
バルク販売で試飲コーナーを設ける。
卵売場はこのボリューム。
バークレーボウルには、
サンフランシスコ市内からも、
レストランのオーナーシェフたちが、
食材の買い出しに来る。
青果はバークレイの代名詞。
オーガニック商材だけで、
これだけの品種と量を扱う。
キノコの種類も豊富。
マツタケは1ポンド26.50ドル。
454gが100円換算で2650円。
日本の市価は100g2500円くらいだから、
4分の1の価格だ。
1時間ほどのツアー。
最後はバークレイボウルの
レシピ本をいただいた。
バークレーから北上して、
45分ほどで、バカビル。
導入部は青果部門と
その対面にあるデリ。
ピカピカの床とスポット照明。
そのコントラストと青果の美しさ。
青果からチーズ、
そして店舗右翼壁面のミート売場と、
内側の酒売場。
ヨーロピアンスタイルの重厚な内装。
これは米国東海岸の店づくり。
西海岸の地域では珍しいが、
このクラシックなつくりが、
顧客の支持を得た。
奥壁面のデアリー(乳製品)売場。
グルテンフリーのコーナーもある。
青果売場左の柱廻りのスペースに、
目立つプロモーションコーナーがある。
現在は、クリスマスデコレーション。
ナゲットマーケットは、
15店の小さなローカルチェーンだ。
しかし「働きがいのある企業100社」には、
毎年のようにランキングされる。
その理由の一つが、
ファンタスティックな店である。
あんな美しい店で働きたい。
そう思わせる店だ。
それがナゲットマーケットのポジショニングである。
5分ほど車を走らせると、
ウインコフーズ。
倉庫型のディスカウントスーパーマーケット。
スーパーウェアハウスストア。
入口のウォール・オブ・バリュー。
直訳すれば「価値のある壁」。
超お買い得価格品を集めたコーナー。
エンド陳列が連続した一丁目一番地。
ほぼ100%の顧客がこの壁を通過する。
ここでは近隣の店舗との価格比較をして、
安さを訴求する。
比較するのはウォルマート、セーフウェイ、
そして地元チェーンのレイリーズ。
パン工場のようなインストアベーカリー。
ここでつくった焼き立てを量販する。
ウィンコは従業員持株会社である。
ほとんどの従業員が株主となる。
だから現場の士気は高い。
一人ひとりが1セントを大事にする。
その結果、70分の1の規模ながら、
ウォルマートを凌ぐ価格力をもつ。
それがウィンコのポジショニングだ。
オークランドから、
サンフランシスコへ。
そして市内のショッピングセンターへ。
ウェストレイクセンター。
セーフウェイはかつて、
オークランドに本拠があった。
このエリアのシェアナンバー1の企業だ。
その入り口の花売場は、
どの店も素晴らしい。
青果売場も日本に持ってきたら合格。
しかしアメリカでは普通。
つまりポジショニングが希薄だ。
奥主通路のミート売場。
ダラスなど競争力のないエリアでは、
1Buy 1Get Free、1Buy・2Get Freeなど、
情けない売り方をする。
だがサンフランシスコのこの店では、
それが見当たらない。
売場のいたるところで、
クリスマスデコレーション。
早仕掛けの手をかけた装飾。
しかし、この時期は、
サンクスギビングデー一色のはずだ。
結局、ポジショニングを喪失しかけて、
的確なプロモーションが打てていない。
一方、同じ商業集積のなかで、
すぐ裏側にあるのが、
トレーダー・ジョー。
入るとすぐに、
最新フィアレスフライアー掲載の、
ニューアイテム・エンド。
売れ残った品を格別安く販売する、
「おつとめ品コーナー」。
ちょっと珍しい。
トレーダー・ジョーは通常、
売れ残ってまだ食べられる商品は、
フードバンクに寄付する。
2018年のフードドネーションは、
398ミリオンダラー。
100円換算で、398億円。
凄い量を寄付している。
しかしこのエリアには貧困層が多く住む。
だから見切り商品は売れるのだと思う。
常時、見切りをするわけではないけれど、
商品入れ替え時期などには、
こういった珍しいこともある。
トレーダー・ジョーは、
抜群のポジショニングをもつ。
しかしそれでも地域に合わせる。
同じショッピングセンターの核店舗、
ホームデポ。
世界ナンバー1のホームセンター。
そのデザインセンター。
ホームデポのレギュラー店舗に、
さらにカスタマーサービスを強化して、
専門性の強いフォーマットをつくった。
クリスマス用品売場は、
ウォルマートを凌ぐ。
ホームセンター業界は、
ホームデポとロウズの複占状態である。
つまり業態の成熟化が進み、
ポジショニングを確立した企業しか、
残ることができない。
さらに市内を移動して、
スプラウツファーマーズマーケット。
近隣型ショッピングセンターの核店舗。
大型の八百屋で、いわば、
ベジタリアンのための食品店。
ベジタリアンと言っても、
ピュア―ベジタリアンばかりではない。
魚や貝類、乳製品を食べるのが、
ノンミートイーター。
白身の肉を食べるのが、
ホワイトベジタリアン。
ここまで入れると客層は広がる。
それらベジタリアン的な顧客を、
すべて対象にするのがこの店だ。
顧客層をターゲティングし、
ポジショニングを明確にする。
それがスプラウツだ。
オーガニック青果の扱い品目数を、
毎日告知する。
今日は193アイテム。
店舗中央の青果部門の手前に、
これも広大なバルク部門。
ベジタリアンも、
おいしい手づくり惣菜は食べたい。
チキンなどのミートを主にした、
ヘルシーな惣菜が並ぶ。
言わずと知れた会員制ホールセールクラブ。
この業態そのものが、
差異性を有する。
つまりポジショニングを持つ。
入口からいきなりアパレルの特売。
中央の平場もアパレルの大展開。
その代わりに、
クリスマス商材はもう収束気味だ。
コストコはなんと、
9月からクリスマス販促を始めて、
11月に終わる。
その端境期にアパレルを持ってきた。
凄い「早仕掛け・早仕舞い」である。
会員制であること。
会員費が収入として入ること。
それを活用して、
粗利益率11%の商売をすること。
そして早仕掛け・早仕舞い。
売価はウォルマート以上に、
エブリデーロープライス。
1年中、価格は変わらない。
しかしフォークリフトで、
商品の陳列位置を変えて、
売れ残りが出ないようにする。
トイレットペーパーから、
ダイヤモンドまで扱う店。
これも他にない業態だ。
トイレットペーパーは、
プライベートブランド24ロール。
この1SKUだけで1年間に、
1ビリオンドルの売上げである。
なんと1000億円。
単品量販の最右翼業態。
それがコストコである。
コストコでは女性陣が、
大量のお買い物。
米国トンガリ小売業に学んだ、
ポジショニング戦略。
いかが?
(つづきます)
〈結城義晴〉