訃報。
中曽根康弘元内閣総理大臣。
101歳の大往生、見事。
1918年、大正7年に生まれる。
この年、第一次世界大戦が終わった。
前年にロシアの十月革命が起こって、
この年、ソビエト社会主義連邦が成立した。
中曽根康弘は激動の世界史の時代に、
群馬県高崎市に生まれた。
名門旧制高崎中学を経て、
静岡高校から東京帝国大学法学部へ。
1941年に旧内務省入省。
第二次世界大戦の終戦後、
1947年、初の衆議院選挙に、
28歳で当選。
それ以降、政治家の道を歩むが、
まるで絵に描いたような、
日本の指導者への軌道である。
初入閣は1959年、
第2次岸信介内閣の科学技術庁長官。
しかし1966年、
自民党内で自ら中曽根派を設立。
これが早すぎたと思う。
弱小派閥のトップとして、
ここから中曽根康弘の苦労が始まる。
その後、中曽根自身は、
歴代内閣で防衛庁長官や通商産業大臣、
自民党では幹事長や総務会長の要職を歴任。
1972年、佐藤栄作長期政権が終了すると、
自民党は「三角大福中」の時代に入る。
三木武夫、田中角栄、大平正芳、福田赳夫、
そして中曽根康弘。
それにしても凄い人物ばかりだった。
田中は第6代自民党総裁となって、
1972年7月から1974年12月まで首相。
三木は第7代総裁で1974年から1976年、
福田は第8代総裁で1976年から1978年、
そして大平は第9代総裁で1978年から1980年。
それぞれ2年ずつ内閣総理大臣を務め、
それぞれに個性ある政治を展開した。
中曽根は「風見鶏」などと揶揄されながらも、
その後の鈴木善幸首相のあとを受けて、
待望の第11代自民党総裁に登り詰めた。
1982年11月25日から1987年10月31日まで、
約5年間・1806日間の長期政権を担う。
これは歴代7位の記録だ。
その間、中曽根が推進したのが、
「戦後政治の総決算」であり、
国家構造における行政改革であった。
「行革」は、
土光敏夫臨時行政改革推進審議会会長と、
中曽根康弘首相に対して、
尊敬を込めて充てられた名称である。
結果として、国鉄をはじめ、
電電公社、専売公社の民営化が実現した。
流通業界では、
イトーヨーカ堂が業務改革を進め、
それが「業革」と称された。
中曽根首相は外交と安全保障においても、
大きな成果をあげた。
ドナルド・レーガン大統領と、
日米同盟を強化して、
「ロンヤス時代」と言われた。
忘れてならないことは、
中曽根総理大臣が中国や韓国とも、
良好な関係をつくったことだ。
しかし首相として、初めて、
靖国神社への公式参拝をした。
左派やマスコミから見ると、
終始、右翼的な姿勢をとり続けた。
それが中曽根康弘の信念だった。
2003年に政界を引退。
衆院当選20回と選挙に強く、
国会議員在職は56年。
1997年に大勲位菊花大綬章を受章。
流通業界では清水信次氏と懇意にしていた。
㈱ライフコーポレーション会長。
中曽根内閣が推進した「売上税」を、
清水チェーンストア協会会長が阻止したが、
それを乗り超えて盟友となった。
結果として中曽根元首相は、
流通業界にも理解が深く、
大いに貢献してくれたと思う。
ご冥福を祈りたい。
清水さんも頑張って、
中曽根さんと同様に、
100歳を超えてほしいところだ。
さて、商人舎流通スーパーニュース。
イオンnews|
英国「Ocado」と提携し「次世代ネットスーパー」設立へ
イオンが動き出した。
英国ネットスーパー企業Ocadoと提携。
相手は子会社Ocado Solutions。
日本国内の独占パートナーシップ契約だ。
イギリスのスーパーマーケット業界は、
今やオンラインビジネスしか成長しない。
実店舗競争はすでに、
アルディとリドルに主導権を、
奪取された観がある。
そのオンライン競争も、
中心はテスコとオカド。
しかしオカドが、
業界で最も早い成長スピードを誇る。
そのオカドはAIとロボットを駆使して、
最先端の中央集約型倉庫を運営する。
顧客フルフィルメントセンター(CFC)。
これを精緻な宅配システムで、
家庭に届ける。
Ocado Solutions社は、
Ocado Smart Platform(OSP)のノウハウを、
外国の小売企業に提供する。
日本ではイオンが手を挙げた。
アメリカはクローガー。
昨年6月25日の、
クローガーnews|
1Q売上高3.4%増・純利益6.8倍/オカド買収
昨年2018年5月、
クローガーはオカドの株式5%を買い、
ライセンス技術を取得している。
出資額は2億5000万ドル(250億円)だった。
もちろんクローガーは、
米国第1のスーパーマーケットで、
国内ではウォルマートに次ぐ第2位小売業。
受注から宅配までの一貫システムによって、
クローガーはプラットホーム戦略を展開中。
これはアマゾン対策であり、
ウォルマート・コム対抗策である。
さらに今年1月28日、
クローガーnews|
オカドとの共同流通センターはAIとロボット活用
クローガーはオカドと共同で、
流通センター開発を進めている。
向こう3年以内に、
20カ所の流通センターを建設する。
オカドの英国内の流通センターでは、
全行程をAI(人工知能)がコントロールする。
その上でピッキング作業はロボットが行う。
写真の「the hive」(養蜂箱)と呼ばれるシステムが、
ロボットを使ってピッキング作業を行う。
ロボットがhiveの上を移動して、
受注した商品をロボットアームで拾い上げる。
それから配送用プラスチックケースに収められ、
バンで配送される。
クローガーのマクマレンCEOは語っている。
「もし自社で
この流通センターを開発したとすると、
5年から10年かかっただろう」
イオンは今回の提携に基づいて、
2020年3月までに新会社を設立する。
AIとロボティクス機能を強化するためだ。
そして2023年には、
OSPを活用したCFCを設立する予定だ。
もちろん日本初のことだ。
私はずっと言い続けている。
もともとイオンとクローガーは似ている。
どちらもM&Aを積極的に展開してきた。
それは本質的に「他者の力」を使うことだ。
オンラインビジネスにおいても、
イオンはクローガーと同一戦略を採用する。
それが一番早いからである。
〈結城義晴〉