2019年11月最後の日。
あっという間に11カ月が終わった。
思い返せば、
今年の月刊商人舎1月号。
その[Message of January]
リスクを冒せ。
4月末日、今上天皇が退位され、上皇へ。
翌5月1日、徳仁皇太子が天皇に即位し、
新元号が始まる。
新しい時代がやってくる。
この新天皇の即位に伴って、
4月27日から5月6日までが、
10日間の超大型連休になる。
新しい価値観と生活スタイルが生まれる。
6月にはフランスで、
FIFA女子ワールドカップが開催される。
9月20日には日本で、
ラグビーワールドカップが開幕する。
そして10月1日、
消費税率が10%に引き上げられ、
残念ながら軽減税率が導入される。
幼児教育・保育も一部無償化される。
翌2020年7月24日から8月9日まで、
東京オリンピックが開催される。
続いて8月25日から9月6日まで、
パラリンピックが開かれる。
日本社会は大きく変容していく。
消費も商売も、商品も売場も店も大きく変質する。
想像を絶するスピードで変革されていく。
背景に世界的ポピュリズムの進行もある。
時代が大きく変わるときに、
仕事にも経営にも求められるものがある。
それはリスクを恐れないことだ。
リスクを冒すことである。
「経済活動とは、現在の資源を未来に、
すなわち不確実な期待に賭けることである。
経済活動の本質とは、
リスクを冒すことである」
このピーター・ドラッカーの言葉は、
大きく変貌を遂げる2019年に、
心と頭と体に自覚させておかねばならない。
――リスクを冒せ。
〈結城義晴〉
新天皇の即位と新しい元号も決まった。
10日間大型連休はそれほどでもなかった。
ラグビーワールドカップは、
想像をはるかに超えて盛り上がった。
ゴルフの渋野日向子フィーバーは、
全く予想できなかった。
消費増税と軽減税率導入、
キャッシュレスとポイント還元。
安売り攻勢は予想通り。
M&Aも起こった。
しかしコンビニの異変と退潮は、
これもちょっと想像を超えた。
それでもあらためて、思う。
リスクを冒せ。
昨日の商人舎流通スーパーニュース。
最近はこのwebサイトからの引用が多い。
ファミマnews|
新規加盟時の「加盟金」「開店準備手数料」廃止へ
ファミリーマートが、
思い切った政策を発表。
フランチャイズチェーンは新規加盟時に、
開店のための資金を必要とする。
ファミリーマートは従来、
契約時に必要な資金300万円を求めた。
⑴加盟金50万円
⑵開店準備手数料100万円
⑶開店時の商品代金と両替金150万円
この⑴加盟金と⑵観点準備手数料を、
2020年2月1日から廃止する。
これによって、
新規加盟の店が契約時に必要な資金は、
150万円へと半減する。
新規加盟の際の初期投資を抑えることで、
新しいオーナー獲得競争を勝ち抜く。
この新規加盟資金の半減によって、
本部の収益性には影響が少ない。
ファミリーマートはそう発表している。
株主へのアナウンスだろう。
実際、今期の出店計画は、
新店が285店と発表されているが、
来年も同程度と推測すると、
半減分のトータル金額は、
150万円×285店で4億2750万円となる。
しかし来年の2月1日以前に、
300万円を払って加盟したオーナーは、
違和感や差別感を感じないのだろうか。
一方、セブン-イレブン。
月刊商人舎11月号特集、
「波の下にある潮流」の記事の中から。
㈱セブン&アイ・ホールディングス社長
井阪隆一
業態別の構造改革とリストラ策を打ち出す
セブン-イレブンは構造改革を進めつつ、
新しいインセンティブを導入する。
インセンティブとは、
「やる気を起こさせるための外的刺激」、
つまり報奨金のことだ。
政策の第1は、
FC制度の改革と加盟店への分配の見直し。
「加盟店が安心して経営に専念できる」と、
目的が示されている。
第2が本部のコスト構造の改革で、
第3が既存店成長のための新レイアウト変更の加速。
第1の制度改革について、
井阪社長の発言があった。
「毎年約3%の最低賃金の上昇があり、
ここにきて人手不足と同時に
加盟店労務費の上昇が
加盟店オーナーの経営を
大変厳しくしている」
そこでインセンティブ・チャージを
変更する。
この変更は最低保証のようなものだ。
現行は、24時間営業店舗で、
本部に払う粗利分配方式ロイヤルティから
マイナス2%という制度がある。
それに2017年9月からの特別減額で、
さらにマイナス1%のインセンティブがある。
セブン-イレブンのロイヤルティは、
自分で土地建物を持つAタイプの場合は、
通常、粗利益の43%とされているから、
それが40%に減額されている。
ここに新たに、
定額のインセンティブ制度を導入する。
月額売上総利益額(粗利益額)に関して、
550万円を超える店は、
現行インセンティブに加えて、
3万5000円の定額インセンティブを、
550万円以下の場合は、
月額20万円のインセンティブを、
それぞれに適用させる。
月間550万円の粗利益額とすると、
40%を本部に収めるから、
店舗は330万円の収入となる。
しかしここから、
パートタイマーの人件費など、
もろもろの経費を払い、
廃棄ロスなども負担する。
したがって、550万円を切る店舗は、
ひどく収入が低い。
土地建物を本部が用意するCタイプの場合は、
もっと本部ロイヤルティが高い。
加盟店の収入ももっと下がる。
一方、非24時間営業店は、
月額売上総利益550万超の店舗には、
1万5000円のインセンティブ、
550万以下の店舗には、
7万円のインセンティブとなる。
24時間営業の店とはずいぶん差がある。
しかし、
「これによって加盟店は
年間平均約50万円の利益改善になる」
シミュレーションすると、
利益の増額分は、
たとえば、日販45万円未満の店は、
年間で約94万円、
50万円以下の店で74万円、
55万円以上で57万円、
60万円以上の店でも42万円となる。
月刊商人舎は書いている。
「FC本部は加盟店からの
チャージによって収益を得る。
今回の新インセンティブ制度は
底上げを図るという名目で、
そのチャージ額を
加盟店の営業状況に応じて
変えるということだ」
「立地・環境が良くて
高売上げを上げている店舗には
低額のインセンティブとし、
軌道に乗らず不採算の店舗には
高額のインセンティブとする」
互助会のような施策である。
新インセンティブの導入によて、
本部利益は約100億円の減益になるが、
加盟店のモチベーションが高まり、
「既存店売上高が1%改善すれば、
セブン-イレブン・ジャパンの収入は
85億円アップする」
本部サイドの論理では、
このインセンティブ変更は、
理屈通りではある。
しかし加盟店側は、
互助会制度のようになる。
ファミマやセブンの変更を見て、
「フランチャイズチェーンの、
ボランタリーチェーン化」
と、私は評している。
チャージやインセンティブに関しては、
本部やトップの発言をもとに計算した。
もしかしたら誤りもあるかもしれない。
その際は訂正を指摘してもらいたいが、
外側の人間から見ると、
ちょっとわかりにくい制度や改革である。
それがフランチャイズチェーンの、
特質なのかもしれない。
そのあたりも、
ボランタリーチェーン化してもらえば、
私はありがたい。
リスクを冒して。
〈結城義晴〉