サンフランシスコにやって来て3日目。
サクラメントまで出かけた。
ナゲットマーケット。
エルクグローブ店。
ナゲットはインディペンデントの、
ファミリービジネス。
しかしFortune「働きがいのある企業100社」に、
常にランクインする、
凄い会社。
ファンタスティックな店で、
アクチュアリーロープライス。
「まさかとは思うかもしれないが、
低価格戦略です」
久しぶりにエルクグローブまで遠出して、
以前以上に感動した。
床はピカピカ。
故渥美俊一先生が、
「クレンリネスとは床がピカピカなことだ」
と言っていた。
その通り。
床がピカピカならば、
陳列も美しくなる。
商品管理もしっかりしてくる。
このエンドの見事さ。
全員、感動しつつ、記念写真。
今回は同社の新フォーマットにも訪れた。
「フォークリフト・バイ・ナゲット」
ナゲット流のディスカウント型。
これも素晴らしくて、
考えさせられることが多かった。
あんまり素晴らしいので、
月刊商人舎2月号で、
丁寧に写真で紹介し、
事細かに解説しよう。
2月10日を楽しみにしてください。
その後、サクラメントで第1の企業を訪問。
レイリーズ。
アメリカのローカルチェーンは、
ほとんどが経営統合された。
クローガー傘下か、
アルバートソン/セーフウェイ傘下か。
しかしレイリーズは残っている。
尊敬すべき会社だが、
残念ながら矛盾だらけの店だった。
まず、青果部門。
弱い。
レイアウトも店舗左サイドの2レーン目。
一番左には冷凍食品などが並ぶレーンがある。
なぜだろう。
理解不能。
それから店舗右サイドの入り口わきに、
中2階を設けてグロサラントを志向。
ウェグマンズが始め、
ホールフーズもクローガーも、
一部店舗で採用した。
レイリーズもこの新店で挑戦した。
中2階で食事しながら、
眺め下ろすと、レジ側が見える。
さらに惣菜側も見える。
スーパーマーケットで最も美しいのが、
青果部門である。
上から見下ろすことはできるが、
その農産部門が目に入ってこない。
形だけ真似て、その意味を理解していない。
青果も弱いし、ミートも弱い。
サービスデリもホールフーズと同じ価格帯。
1ポンド8.99ドル。
ホールフーズなら許されるが、
レイリーズの味と品質では高すぎる。
残念だ。
しかしキュービジョンは採用していた。
レジで顧客を待たせないシステム。
クローガーの専売特許だが、
なぜかレイリーズが採用。
まったくの推測だがもしかしたら、
クローガーから、
M&Aをかけられているのかもしれない。
そしてディスカウントで尖がる企業。
ウィンコフーズ。
入り口を入ると、
ウォール・オブ・バリュー。
価値ある壁。
競合店との価格比較広告を掲示している。
ウォルマートとは互角以上の闘い。
セーフウェイともレイリーズとも、
完全に水を開けている。
レイリーズは苦しい。
ウォールを抜けると、
プロデュース部門。
安くて鮮度がいい。
バナナは1ポンド52セント。
青果部門からバルク部門に続く。
これはホールフーズと同じで、
安売り店だがセオリー通り。
その左手には、
バレンタイン販促を大展開。
これはウォルマートの大原則。
バルクの隣に、
この店はインストアベーカリー。
さらにデリの対面売場から、
精肉とシーフードの対面売場に続く。
ディスカウントだが人が配置され、
対面コーナーが設けられる。
ミルクから卵までの乳製品は、
リーチインケースで展開。
地球温暖化対策でもある。
エンドはシンプルで価格力を持つ。
レジもずらりと開放して、
できるだけ待たせない政策をとる。
出口にも書いてある。
An Employee Owned Company。
従業員が所有する会社。
ウィンコは非上場企業でありながら、
従業員持ち株会社である。
それが極めて意識の高い企業風土を生む。
全員で1セントを大事にし、
それによってウォルマートと、
互角以上の闘いをする。
これも模倣できないポジショニングである。
最後はウォルマートのスーパーマーケット。
ネイバーフッドマーケット。
ウォルマートの主力フォーマットは、
スーパーセンターだ。
第2がサムズクラブ。
メンバーシップホールセールクラブ。
そして第3がこのネイバーフッドマーケット。
しかしスーパーセンターの食品部門と、
まったく変わらない店づくりだ。
したがって、イトーヨーカ堂と、
ヨークベニマルとの関係性とは違う。
これがマルチフォーマット戦略の急所である。
この店は居抜き出店で、
標準化されたレイアウトとは異なる。
しかしエブリデーロープライスと、
ロールバックの価格戦略は同じ。
青果部門が格段に良くなった。
バナナも品切れするくらいに売れている。
「スーパーボウル」のプロモーション。
アメフトの最終戦が近い。
アメリカ人は全員が応援する。
それに向けたプロモーション。
ウォルマートはプロモーションリテーラーである。
しかも売場の中に、
ピックアップの担当者がいる。
スマホを見ながら、
トートボックスに商品を入れている。
顧客からオーダーを受けた商品を、
あらかじめ袋詰めして、
来店した顧客に渡す。
あるいは宅配もする。
これがウォルマート第4のフォーマットである。
ウォルマートも変化を遂げている。
ナゲットも新しいフォーマットに挑戦する。
ウィンコはさらにフォーマットを深化させる。
新しいことにチャレンジしても、
レイリーズは残念ながら、
仏つくって魂入れず。
それでは拝めない。
2020年1月現在で129店のチェーンストア。
サクラメント市とその周辺で、
22.2%のトップシェアをもちながら、
残念ながら本当のイノベーションを知らない。
怖ろしいことだ。
それを私たちは見せつけられた。
(つづきます)
〈結城義晴〉