日本とニューヨークには、
14時間の時差がある。
その日本は明日が大寒。
今日も寒いらしい。
しかしニューヨークは、
氷点下の気温で、雪も降り始めた。
㈱ロピアのニューヨーク研修3日目。
7時30分にセミナールームに集合して、
まずはロピアのモットーと、
接客七大用語の唱和。
リードするのは田中尚也さん。
開成店鮮魚部チーフ。
接客七大用語唱和は、
リーダーが先に言って、
全員がそれに従う。
さて昨2日目の夜は、
15チームに分かれて、
それぞれに夕食体験をした。
自分たちでテーマを決め、
レストランを探して、
そこでそれぞれの体験をして、
その内容を報告する。
「もっと好奇心をもって、
チャレンジしよう」
好奇心・探求心、
向学心・向上心。
新しいもの好き、
そして行動力・実行力。
テキストのPrologueに書いた。
せっかくニューヨークにやって来て、
一晩に1件の店で食事するだけでは、
本当にもったいない。
この投票結果は明日の朝、発表され、
優秀チームが表彰される。
朝の発表会が終わると、
3日目の視察。
今日はマンハッタンを巡る。
まずコロンバスサークルへ。
いつ来てもすばらしい。
入口のエスカレーターを降りると、
左手に青果部門があって、
この立体陳列とカラーコントロール。
シーフードの対面売場は、
これだけのスペースを割いて、大展開。
ここにはニューヨーカーの健康志向が、
表れている。
ミート部門も長いながい対面の陳列線。
奥にグロサリーが並ぶ。
一方、エスカレーターを降りて、
右手に向かうと、
寿司バーからピザのショップになる。
コロンバスサークルのホールフーズは、
グロサリーストアとレストランが融合され、
「グロサラント」を実現させた店である。
かつては非食品売場だった。
「ホールボディ」と呼んだ。
その後、ビールバーになり、
今、ピックアップセンター。
顧客からネットでオーダーを受け、
ピッキング担当が店内から、
商品を買い物代行し、
ここに一時的にストックし、
顧客に届ける。
あるいは取りに来てもらう。
アマゾン傘下に入って、
ホールフーズのラストワンマイル戦略は、
どこよりも実を結びつつある。
レジもご覧の混みようだ。
その後、ブロードウェイ72丁目。
2層のトレーダー・ジョー。
マンハッタンに来ると必ず訪れる。
地下1階が青果部門とレジ。
午前中にもかかわらず、
こちらも長い行列。
地下2階にエスカレーターで降りると、
生花から乳製品につながる。
エスカレーターを主通路に見立てて、
ワンウェイコントロールにした店だ。
レジは銀行方式で、
長い列に並ぶが、
これが一番早いし、
顧客にストレスがかからない。
ブロードウェイには繁盛店がある。
ゼイバーズ。
左サイドの入り口を入ると、
圧巻のチーズ売場。
そして伝統のスモークフィッシュ売場は、
いつも人気を博している。
惣菜の対面売場にも、
固定客がついている。
コーヒー売場にも行列ができている。
たった1店舗の会社だが、
ネット販売が4分の1を占める。
「ゼイバーズ」のブランドが強いからだ。
そしてそのブランド力は、
リアル店舗によって形成されている。
ゼイバーズから歩いて7分。
今日は雪が降っているのでバスで移動。
フェアウェイマーケット。
自慢の青果部門は、
やはり活気があって強いが、
以前に比べると陳列量が減った。
最初のコンコースの裏側は、
さらに在庫が減った。
鮮魚の対面売場は、
氷を敷き詰めて見事。
その裏側の肉売場も、
良い商品がずらり。
中2階に上がると、
オーガニック青果だけの売場。
乳製品も加工食品もオーガニック。
2階はオーガニック天国だ。
しかしそれでも、
フェアウェイマーケットは、
顧客を失っている。
2013年にナスダックに上場。
最大15店を展開したが、
2016年、連邦破産法11条を申請。
理由は急速出店のやりすぎ。
背伸びしすぎて、
転んでしまった典型事例である。
隣はシタレラ。
デリ専門ショップだが、
シーフードに力を入れ、
青果や精肉も扱って、
スーパーマーケットとなった。
マンハッタンに4店舗、
ニューヨーク近郊のハンプトンに3店舗、
コネティカット州グリーンウィッチに1店舗。
この会社にも固定客がついている。
ブロードウェイの繁盛店を訪問してから、
チェルシーマーケットへ。
ナビスコのビスケット工場跡の物件を、
テーマフェスティバルセンターに転換。
そのなかでロピアの目的は、
ロブスタープレース。
ロブスターの茹でたてを食べる。
この店は小売業の内食と、
テイクアウトの中食と、
レストランの外食を併せ持つ。
レストラン機能は立ちのすし屋。
マンハッタンでも有数の鮮度とうまさ。
私はいつもここで寿司を食べる。
チェルシーマーケットの近くに、
ハドソンヤード。
米国最大規模の再開発第1弾が、
昨年3月15日にオープンした。
マンハッタンの10番街と11番街、
西30丁目から34丁目。
4棟の超高層オフィスビルができて、
まったく新しい空間が創造された。
百貨店はニーマンマーカスだが、
イータリーのスペイン版が、
メルカド・リトル・スペイン。
シタレラも最新店を出店。
見事な青果部門。
斬新な鮮魚部門。
デリ専門ショップから、
スーパーマーケットへと進化した。
そしてVessel(ヴェッセル)。
デザインは英国のトーマス・ヘザウィック。
ハチの巣のようなジオメトリックなデザイン。
154カ所で接続された階段は、
合計2500段、80カ所の踊り場。
総工費2億ドル(約200億円)で、
2万㎡のパブリックパークの中心にある。
このヴェッセルの前で、
圧巻の全員写真。
ここまでで今日の予定は終わった。
ニューヨークは生きている。
いつも新しいものが登場する。
それが私たちに刺激を与えてくれる。
しかし古いものにも価値はある。
KATZ’S。
コーシャ式デリカテッセン店。
マンハッタンのロワーイーストサイド。
創業は1888年。
そのころから東欧ユダヤ系移民によって
パストラミなどのユダヤ料理が、
ニューヨークに上陸した。
マンハッタンで最も古いデリカテッセン。
驚くべき混雑。
「カッター」と呼ばれる調理人が、
パストラミやコンビーフを、
素早く巧みにカットして、
サンドイッチをつくってくれる。
人気メニューはパストラミ・サンドイッチ。
このボリューム。
絶品。
KATZ’S本店の130年を超えて、
人気を博し続けるパストラミ。
ハドソンヤードのヴェッセルとは、
極めて対比的な存在だが、
これこそがマンハッタンの価値である。
(つづきます)
〈結城義晴〉