日本に帰ってきても、
店を訪れる。
故渥美俊一先生が亡くなられたのは、
2010年7月21日。
午前2時、多臓器不全。
83歳だった。
もう10年になる。
亡くなられた日のブログに、
結城義晴は書いている。
「いつも、渥美俊一が見ている。
この思いを心棒にして、
生きていきたい。
仕事をしていきたい。
渥美俊一の遺志を受け継ぎ、
発展、進化させたい。
私の切なる願い」
その渥美先生の私への助言。
「フィールド・ワークをおろそかにするな!」
すなわち「現場を大事にせよ」
「神は現場にあり」
私の主義・主張となった。
そのご逝去のときに、
一茶を模して句を詠んだ。
亡き父よ
店見るたびに
見るたびに
今日も家の近くの競争を見る。
MEGAドンキUNY大口店。
2018年2月2日の商人舎流通SuperNews。
ユニーnews|
ドンキとのダブルネーム第1号「大口店」2/23オープン
2年前の2月23日に、
業態転換してリニューアルオープン。
この店は依然として存在感を示す。
青果部門は店の顔。
しかし地下1階にあって、
品揃えは絞り込んである。
精肉部門も派手な幟やPOPで、
「安さ」を強調する。
冷凍食品から右奥が惣菜部門。
1階・2階の非食品は総合スーパーとして、
近隣の競合店にはない品揃えだ。
私は必ず買物をする。
一方、道路を隔てて向かいにある店。
ライフ大口店。
2018年11月19日の商人舎流通SuperNews。
ライフnews|
ライフ大口店(2層747坪)刷新/食強化でドンキ対策
ユニーがドンキに転換してから、
ちょうど9カ月後にリニューアルオープン。
その時にも意欲的な店づくりだったが、
いま、また良くなった。
店に入るとすぐに右手に惣菜。
ドンキは地下1階の一番奥に、
惣菜や酒部門を配しているのに対して、
入り口を入るとすぐに即食がずらり。
その左手は青果部門で、
美しいプレゼンテーション。
夕方なので多少の棚の空きはあるものの、
良く品揃えされている。
ドンキよりも鮮度も品質もいい。
特にベーカリーから、
奥の鮮魚の対面売場に活気がある。
アメリカの優良店に馴れてくると、
奥主通路に対面売場がない日本の店には、
どこか物足りなさを感じる。
トレーダー・ジョーでもかならず、
デモンストレーションコーナーがある。
日本の店はそれがないことが多い。
ライフ大口店では、
この鮮魚対面コーナーが、
店の楽しさをつくりだしている。
昨日の朝日新聞の「折々のことば」
第1708回。
人間の経済は原則として
社会関係のなかに
埋没しているのである。
「さまざまの社会的活動には
『利得』が普遍的な動機としてある、
つまり市場での価値が
あらゆる価値の公分母だ
とするような社会は、
歴史的には例外的だ」
ポランニーは、
ウイーン生まれの経済人類学者。
オーストリア・ハンガリー帝国時代、
ユダヤ人の次男に生まれた。
(1886年10月21日~1964年4月23日)
経済史を研究し、
経済人類学を確立した。
1909年生まれのピーター・ドラッカーは、
ポランニーの23歳下になるし、
その著『傍観者の時代』で、
ポランニーに触れている。
コラムの編著者・鷲田清一さん。
「たしかに、
経済という語の元となった
『経世済民』でも、
“経”と”済”は世と民のためにあり、
逆ではない」
「経世済民」は中国の古典にあって、
「世を経(おさ)め民を済(すく)う」の意味。
経済は世と民のためにある。
つまり、
「世のため、人のため。」
今年の商人舎標語。
MEGAドンキユニー大口店も、
ライフ大口店も、
互いに競争しながら、
それぞれにポジショニングを築く。
社会関係の中に埋没しているけれど、
それは人間の経済活動の原則である。
「経世済民」であり、
「世のため、人のため。」である。
〈結城義晴〉