日経新聞電子版。
【イブニングスクープ】
だから日経のスクープではある。
「セブン&アイ、
米コンビニの2兆円買収を断念」
㈱セブン&アイ・ホールディングスが、
米国のコンビニ約4000店を買収する話。
断念した。
アメリカのコンビニはもう、
ほとんどがガソリンスタンド併設型だ。
セブン‐イレブンをはじめ、
単独コンビニは駆逐されてしまった。
第1の理由は競合業態の24時間化だ。
ドラッグストアという都市部の天敵が、
どんどんコンビニ化していった。
もちろん24時間営業だ。
スーパーマーケットも、
24時間営業を徹底して、
米国コンビニの唯一の優位性を、
奪っていってしまった。
ウォルマート・スーパーセンターまで、
7000坪の店を24時間営業とした。
もちろんネイバーフッドマーケットも、
ほとんどが24時間営業だ。
24時間開いていることが、
何ら優位性にはならなくなった。
理由の第2が本質的なものだが、
ほとんどのコンビニチェーンが、
ジャンクフードの店へと衰退した。
ビールとコーラとタバコの店。
そんなイメージだ。
日本のコンビニとは大きく違う。
それでもテキサスのクイックトリップ。
東海岸のワワ。
ローカルチェーンは、
ファストフードを充実・強化して、
つまり日本化して、
人気だ。
社会にとって必要な店でなければ、
存続していくことはできない。
ただし、
ガソリンのショートタイムでの提供は、
便利な機能として、
コンビニ業態の武器となった。
セブン&アイが交渉していたのが、
石油精製会社マラソン・ペトロリアム。
そのマラソンが保有するのが、
「スピードウェイ」というコンビニ事業。
もちろんガソリンスタンド併設型。
アメリカのコンビニランキング。
第1位がセブン-イレブン・インク。
セブン&アイ傘下の約9000店。
第2位がアリメンテーション・カウチタード。
カナダ資本で約8000店。
そして第3位がスピードウェイで約4000店。
このトップ3の構図は米国小売業では、
よくあるパターンだ。
バラエティストアは、
1位ダラーゼネラル、
2位ファミリーダラー、
3位ダラーツリーだった。
これを私は最近、「鼎占」と名づけた。
この鼎占の中で、
ダラーゼネラルがファミリーダラーを、
買収する案件があった。
しかしそれがならず、
結局、3位のダラーツリーが傘下に収めた。
そして今、「複占」状態だ。
オフィスサプライチェーン業界も、
1位ステープルズ、
2位オフィスデポ、
3位オフィスマックスの、
鼎占だった。
こちらはオフィスデポが、
オフィスマックスを買収して、
やはり「複占」となった。
最強業態のディスカウントストア産業は、
1位ウォルマート、
2位ターゲット、
3位Kマートだったが、
シアーズホールディングスが倒産して、
その傘下にあるKマートは、
どんどん店舗閉鎖している。
こちらも鼎占から複占へ。
しかし、米国コンビニ産業は、
ちょっと違う。
トップ3は明確なものの、
約6割がローカルチェーンや個人経営だ。
寡占化は進んでいない。
人口も増えているので、
コンビニ市場は成長を続けている。
M&Aも加速している。
米国セブン-イレブンも、
2018年1月に、スノコLPから、
約3500億円で1030店を買収した。
今回の1位による3位の買収で、
約1万3000店になるところだった。
もったいない。
理由は買収額の高さ。
約220億ドル。
100円換算ならば2兆2000億円。
現在のレートの1ドル106円ならば、
2兆3320億円。
日経電子版の記事。
「複数の交渉関係者によると、
セブン&アイは同日取締役会を開き、
交渉の打ち切りを決めた。
最大のハードルとなったのが買収額だ」
そのリーク相手の言い分。
「インターネット消費が拡大する中、
実店舗の将来的な価値が減じる可能性もあり
想定通りに収益が上がらなければ、
巨額の損失を計上するリスクがあった。
新型コロナウイルスの感染拡大による
世界経済の減速懸念も影響した」
本音のところだろう。
しかし、この見解は、
産業の盛衰の観察が足りない。
「インターネット消費が拡大」
これは正しい。
「実店舗の将来的な価値が減じる可能性」
これは表層的な見方だ。
リアル店舗の価値は減らない。
良い店ならば大いに発展する。
商人舎流通スーパーニュース。
アマゾンnews|
初のキャッシャーレス食品スーパー(216坪)をシアトルに開設
eコマースの圧倒的王者アマゾン。
「Amazon Effect」とまで言われる。
そのアマゾンがホールフーズを買収し、
いま、自らグロサリーストアを開発する。
リアル店舗の価値を、
CEOジェフ・ベゾス自身が認識している。
もちろんベゾスも、
リアルとネットのコラボを前提としている。
そして米国セブン-イレブン自身、
「エボリューションストア」を
拡大展開する。
これも商人舎流通スーパーニュース。
米国セブン-イレブンnews|
「エボリューション・ストア」を拡大展開
私は昨年、この店を訪れた。
そして可能性を見取った。
順次、このフォーマットに変えていけば、
成長は見込める。
もちろんまだまだ試行錯誤もある。
紆余曲折もある。
やがて現在の米国セブン-イレブンも、
1万数千店のレジレス店舗に変わるだろう。
インターネットの拠点にもなるだろう。
展望はある。
日本国内のそごう・西武や、
現時点のイトーヨーカ堂よりも。
さらに米国コンビニ業界は、
これから寡占化に向かう。
もったいない買収案件だった。
もしかしたら、
アリメンテーション・カウチタードが、
スピードウェイを買うかもしれない。
経営陣の勇気が問われたが、
残念ながらそれが欠けていた。
ああ、もったいない。
〈結城義晴〉