二十四節気。
1年を24回で割る。
一つの節気は15日が基準。
新型コロナウィルスは、
その潜伏期間が1日から14日で、
平均5.8日と報告されている。
だから二十四節気を意識して、
その経過を考えておくのがいい。
「啓蟄」(けいちつ)は、
一昨日の3月5日に始まって、
3月20日に終わる。
毎日新聞の巻頭コラム「余禄」
「蟄(ちつ)虫(ちゅう)戸(こ)を啓(ひら)」
これは二十四節気をさらに3つに分けて、
1年を72分する「七十二候」。
啓蟄の期間の一番最初の「初候」のこと。
冬ごもりしていた虫が穴から出る。
「騒がしい世相に気をとられていたら、
今年はおとといさりげなく、
やって来ていた」
私もこのコラムを読んで、同感した。
「しかし目覚めた虫たちも、
いつもとは少し様子の違う春に
気づいたかもしれない」
と、コラムニスト。
「冬ごもりを終えた自分たちと
入れ替わるように、人間たちが
巣ごもりを始めていたからだ」
面白い。
「新型コロナウイルスの感染拡大による
“春ごもり”である」
我々の仕事に絡めると、
「巣ごもり消費」だ。
だからeコマースと、
内食提供業が繁盛する。
その巣ごもり消費を、
英語で「ネスティング」という。
「巣」を意味する「nest」に「ing」をつけて、
「nesting」
「旅行や外食より自分の家を
居心地よくして楽しむライフスタイル」
東日本大震災の後も、
ネスティング現象が起こった。
これを中国語では、
「宅経済」という。
中国では日本より早く、
コロナ感染拡大によって、
当局の外出規制がなされた。
そこでネットゲームや動画を楽しむ。
ネットショッピングも増える。
「宅経済」が社会を支える。
日本では学校の一斉休校、
企業のテレワーク。
「加工食品や食材の宅配サービス、
学習参考書や書籍、在宅学習サービス」
家の中で生活するための商品やサービス。
史上最も早い桜の開花予想が聞こえる。
皮肉なものだが、
次の二十四節気は、
3月20日の「春分」
順番からすると、
宅経済⇒巣ごもり消費⇒nesting
このライフスタイルは、
人々の意識の中に残る。
商売をするとき、
商売を考えるとき、
頭の中に入れておきたい。
「ほぼ日刊イトイ新聞」
巻頭エッセイは「今日のダーリン」
変な表現だが、
「昨日の今日のダーリン」
とてもいい。
「強気しかない」
のっけから糸井さんが断言する。
「弱気になったら風邪をひく」
と言う人は多い。
もちろん、なにかの
科学的な根拠があるわけじゃない。
そう言いながら
風邪を引いているケースも
あるだろう。
「実はぼくも
“弱気になったら風邪をひく”
と思っている。
風邪をひきかけているから、
弱気になるのかもしれない」
わかる。
そこで糸井さんが考える。
「”弱気になる”ことによって
いいことはあるのだろうか」
「なにかに対して、
“弱気”になるような場面があって、
それが、”強気”に比べて
いい結果になるのか?」
「どう考えても、
それはないと思えるのだ」
私の経験をつらつら振り返ってみても、
「弱気になっていいことはない」
断言できる。
糸井さんは考える。
「強気」でいて不利になることは、
あるのだろうか。
「慢心したり、油断したり
してしまうことかな。
いや、それは”強気”だから
起こりうることではない。
慢心も油断も、それはただ
慢心であり油断である」
その通り。
ここでアントニオ猪木の有名なことば。
「出る前に負けること考えるバカいるかよ!」
「(手強い敵に)勝てますか?」
質問したアナウンサーに、
猪木さんはそう答えて平手打ちした。
糸井さんは当時、思ってしまった。
「負けることを考えない」というのは、
「勝負の世界ではあまりにも
無謀なのではないか」と。
しかし、いま、あらためて考える。
「”負けることもある”と考えて
戦っているような者は、敵からしたら、
まことにありがたい相手なのだ」
本当の勝負師は例外なく、
「負けることもある」とは考えない。
「形勢が不利になったときに、
あきらめやすいだろうし、
リスクを犯してでもという
捨身の攻撃をしてこない」
「つまり、強い弱いの前に、
“気の弱い”の相手なのだ」
「”弱気”が風邪をひかせるかどうか」
それはさておいて、
“弱気”でいいことなんか、
ないのではないだろうか」
「かなり前の段階で
強気弱気を往復することがあっても、
いざ勝負のときに”弱気”は、
絶対にいけない」
結城義晴著「Message」
「正規軍とゲリラ」から。
正規軍は、
勝たなければすなわち
負けである。
ゲリラは、
負けなければ、
それで勝ちになる。
ゲリラも負けていいとか、
負けるかもしれないとか、
そんなことを思って闘っては、
負けるに決まってる。
新型コロナウィルスとは、
勝負をするという関係ではないけれど、
「弱気」はいけない。
「強気」で行こう。
もちろん万全の予防措置をしたうえで。
よく食べ、よく眠り、
よく働き、よく学び、
よく遊び、よく考える。
糸井さんの最後の言葉。
「弱気は、謙虚とか冷静とも
ちがうんだよなぁ」
そう、「弱気」が一番いけない。
意味がない。
まずは次の節目の「春分」まで、
弱気の虫は退けよう。
〈結城義晴〉