結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2020年04月05日(日曜日)

ニコル シーダブリューさんの逝去と「商業は森だ」

C.Wニコルさんご逝去。
日本に帰化しているので、
日本名はニコル シーダブリューさん。
直腸がんだった。
79歳。
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作家で環境保全活動家。

1940年、イギリス・ウェールズ生まれ。
1962年に空手修行のため初来日。
大変な親日家で、
1980年、長野県に居を定め、
執筆、環境保護、探検活動を続けた。
1995年に日本国籍を取得した。

長野県上水内郡信濃町に、
荒廃した森があった。
ニコルさんは荒れ果てた里山を購入し、
26年かけて、人の手によって再生。
「アファンの森」と名付けた。

東日本大震災の後は、
津波被害を受けた宮城県東松島市で、
高台に小学校を再建する事業を支援した。
このときにも、
木造校舎や周辺の森づくりに尽力した。

著書に「誇り高き日本人でいたい」がある。

2005年に英国の名誉大英勲章を受けて、
サーの称号が与えられた。

2012年3月14日。
「ドール経営者セミナー」で、
私、ご一緒した。
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このセミナーの主催は㈱ドール、
協賛がファイブ・ア・デイ協会。

会場は、東京。
水天宮ロイヤルパークホテル。

私の講演テーマは、
「知識商人の経営作法」
80分の講演。
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私の後の講演が、
二コルさんだった。
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ニコルさんのテーマは、
「心に木を植える~人と自然の共生~」

素晴らしい40分の講演。

アファンの森の映像や音響が、
ふんだんに盛り込まれていて、
視覚的にも楽しんだし、
懇親会では交流もした。
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ニコルさんの話。

「最近の子供たちは、
自然の中で育っていないから、
落ち着きがない、
我慢できない、
集中できない」

こんな症状を、こう呼ぶ。
「ネイチャー・ディフィシェンシー・シンドローム]

「本来、子供は自然に触れると、
五感を使って探検をする。
しかし今の子供は
バーチャルの世界の中で満足している。
男は18歳になっても、
腕立て伏せや懸垂ができない。
斧やマッチが使えない」

本当の話だ。

「30年前、黒姫に住み着き、
山を知りたくなった。
猟友会に参加して山歩きをすると、
原生林が切られていることがわかる。
山の斜面を丸坊主にすると、
鉄砲水が起こる。
雪解け水で地滑りを起こす。
食べ物が減り、熊が出没して、
畑を荒らす。
森の大切さ、
森の知恵を猟師たちから学んだ」

一方で、
「日本の自然が破壊されている。
山の奥のゴミ捨て場は
不法投棄、産業・医療廃棄物がひどい。
こうした日本の現状は、悲しい」

1966年、ニコルさんが生まれたウェールズ。
「石炭採掘からでたボタを捨てた山が、
地滑りして、中学校を襲い、
121人の子供が死んだ。
政府は、ボタばかりの森を再生し、
5%の森林面積を60%にまで広げた。
カワウソやサケが戻り、
豊かな自然がよみがえった。
いまは、故郷を誇りに思っている」

日本でも同じような活動をした。
「アファンの森」づくりをして26年。
現在9万5000坪の森には、
29種の絶滅危惧をはじめとする多くの動物、
196種類の植物、137種の山菜がある。
生物多様性のある自然は、
癒しの場所でもある。

ドイツの森林面積は日本とほぼ一緒だが、
ドイツは100万人の森林従事者がいる。
それに対し、日本は5万人しかおらず、
しかも高齢者ばかり。

「人間が荒らした自然は、
人間が手入れしなければならない」
そこで全国的な活動を進めるために、
『アファンの森財団』を創設した。

この財団では、
虐待を受けた子供たちを、
年に5回、森に招き、
自然に触れさせている。

ニコルさんも子どものころ、
ひどいいじめにあった。
「トラウマのある子供たちが
森に入ると笑顔になる。
東日本大震災で被災した、
東松島の人たちも招いた。
それが縁で、今、東松島の藪を切り開き、
高台に木造校舎を作る復興計画がある」

「木造であっても設備はハイテクで、
自然と共生する学校。
出来あがったら、国内をはじめ、
カナダ、インドなど、
海外の学校とネットワークを作っていく。
そんな構想がある」

「私は残る人生を
この仕事にかける決意だ」

「傷口を癒し、
心をたくましくし、
健康的にする。
自然の力は強い」

私は、ニコルさんの話に感動した。
もう12年も前のことだが、
記憶は新しい。

そしてニコルさんから私は、
大きなヒントをいただいた。

「商業は森である」
私はそう、言い続けている。
著書にもそれは書いた。

森の大きな木は大企業、大きな店。
小さな木は小企業、小さな店。
森には雑草も生えていれば、
一輪の百合の花も咲いている。

すべてが森として必要な植物だ。

だから森には動物がいる。
様々な生物がいる。

その商業という森が、
荒らされているとしたら、
人の手によって再生されねばならない。
生きた森でなくてはならない。

商業を荒廃した森にしてはいけない。

㈱商業界は自己破産したが、
倉本長治の遺志を継いで、
人間の手によって、
荒廃した森を生き返らせる。

ニコル シーダブリューさんの死から、
再びその意を強く持った。

合掌して、感謝。

〈結城義晴〉

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