月刊商人舎4月号、本日発刊。
通巻84号。
毎月毎月、
1冊の単行本のような雑誌を作って、
84カ月。
まるまる7年間が経過した。
読者の皆さんに、ご愛読を感謝したい。
企画から始まって、
取材や編集、執筆、
制作やデザイン、校正、
印刷、製本。
多くのプロセスに多くの人がかかわる。
雑誌づくりは総合作業だ。
すべての人に感謝したい。
今月のテーマは、
「真似る。」
ずっと頭の中にあったテーマ。
[Cover Message]
「真」に「似る」と書いて「まねる」。完璧に模倣すること。正しく見倣うこと。小売業やサービス業の商売は「真似る」ことで成り立ち、成長してきた。江戸時代のお店(たな)は、真似の殿堂だった。丁稚どんとして商売の道に入り、番頭さんの真似をし、店主の真似をし、やがて暖簾分けでお店を保有する。チェーンストアの時代になると、業界の最優秀店舗を真似して、プロトタイプをつくり、その自分のプロトタイプを真似して、多店化していった。チェーンストアは合理的、科学的、論理的に模倣するビジネス成長戦略であった。その最優秀店も、消費と流通の先進国アメリカやヨーロッパに範を求め、真似た成果であった。しかし模倣の戦略と戦術ばかりが市場にあふれ、その市場も飽和に近くなると、成長は止まり、収益性は落ちてくる。そこで独自性や差別化、差異化、そしてポジショニングが求められてくる。しかしこの局面に至っても、真似る行為の優秀性はいささかも棄損されるものではない。完璧に模倣する。正しく見倣う。そして他が真似できない境地に至る。これは実に深い。模倣から生まれた模倣困難性こそ、「真似る」ことの神髄である。
そして[contents]
今月号はトップに、
[特別提言]
米英トップ小売業の
コロナ対策に学べ
刷り上がった雑誌を手に取る。
至福のときです。
誰が言ったか、
やってみたい三つの仕事。
野球の監督と、
オーケストラの指揮者と、
雑誌の編集長。
さて今日は夕方5時半から、
イオン㈱の決算記者会見。
初めての試みだが、
Web決算説明会。
映像は良くない。
音声はまあまあ。
真ん中が、
イオン㈱吉田昭夫代表執行役社長、
左が山下 昭典代表執行役副社長、
山下さんは財務・経営管理担当。
右が三宅香執行役で、
環境・社会貢献・PR・IR担当
私は横浜のオフィスで、
パソコンの大型モニターで見た。
初めてのことなので、
吉田さんも山下さんも、
そして三宅さんも緊張気味だった。
吉田さんは社長就任後、
初めての本決算説明会だが、
そつなく語っていた。
内容は商人舎SuperNewsで。
イオンnews|
営業収益8兆6042億円過去最高も経常利益4.3%減
営業収益は過去最高で8兆6000億円。
前年同期比1.0%増。
期中に消費増税などあって、
この図体でよく増益したと思う。
営業利益が2155億3000万円で1.5%増、
経常利益が2058億2800万円の4.3%減。
㈱セブン&アイホールディングスは、
年商6兆6443億5900万円で、
前年同期比2.2%減だった。
こちらの商人舎SuperNewsは、
セブン&アイnews|
’20年2月期年商6.6兆円2.2%減も経常利益2.8%増
セブン&アイは決算説明会を中止した。
減収だったが、営業利益(3.1%増)、
経常利益(2.8%増)、純利益(7.5%増)は、
いずれも過去最高益。
営業利益率は6.4%、経常利益率は6.3%。
両者の収益の違いが鮮明になった。
さてイオンの説明会。
コロナウイルスの影響。
営業的には第3四半期までピークが続き、
年末商戦まで影響を受けるとの見方。
総合スーパー、スーパーマーケット、
そしてドラッグストアは好調だけれど。
したがって、今期予想は、
営業収益は8兆から8兆4000億円だが、
営業利益は500億から1000億円。
利益は半減、あるいは4分の1。
そうだろう。
1時間余りの説明会。
三宅さんと吉田さんの説明が、
一通り終わると質疑応答。
画面の下段に2つのボタンがある。
「チャット」と「手を挙げる」。
参加したアナリストやジャーナリストが、
これを押して使命を受ける。
指名されたら質問できる。
私はずっと押し続けたが、
指名されたのは記者会見の常連ばかり。
残念。
コロナが落ち着いたら、
吉田さんと直接、
じっくり話し合おう。
NHKや日経新聞の記者、
流通報道記者会の記者、
ゴールドマンサックスのアナリスト。
こんな顔が突然、アップで出てきて、
質問し、それに答える。
指名された記者やアナリストは、
数字や営業のことばかり聞いていたが、
比較的あっさりと終わってしまった。
そのあとも映像は流れて、
4人の安ど感が伝わってきた。
吉田さんと山下さんが、
身振り手振りで解放感を表した。
三宅さんも笑顔で応えた。
ご苦労様でした。
Webでの説明会。
新しい試み。
とてもよかった。
しかしコミュニケーションは、
フェイス・トゥ・フェイスでなければ、
コミュニケーションにならない。
直接のやりとりをしなければ、
本質はわからないし、
本当のところは伝わらない。
それを非常に強く感じた。
コミュニケーションと情報は別物である。
コミュニケーションは知覚の対象であり、
情報は論理の対象である。
コミュニケーションにとって重要なものは
知覚であって情報ではない。
いずれもピーター・ドラッカーの言葉。
Web会議も同じだ。
これからのビジネス、
これからのチェーンストア、
これからのマネジメント、
これからの仕事。
コミュニケーションの差によって、
雌雄が決する。
間違いない。
〈結城義晴〉