緊急事態宣言後の週末。
午後1時半、
不要不急の要件で、
東横線に乗った。
最後尾の車両で私を含めて4人。
ソーシャルディスタンシング。
しかし自由が丘のいつもの花屋。
monceau fleurs(モンソーフルール)。
フランスのパリ17区に、
モンソー公園がある。
公園一角のアパルトマンの地階に誕生。
だから店名はモンソー公園の花。
fleursは英語でflowers。
日本でフランチャイズ展開するが、
その本店がこの自由が丘店。
店の外の街路に面した売場には、
2人ずつ3組の顧客。
結構、賑わっている。
みなさん、もっと離れてください!
ソーシャルディスタンシングですよ!!
店の前の遊歩道には、
チューリップが咲く。
春の花々も。
花屋は生活必需の店か。
これは極めて重要な論点だ。
私は2020年の日本ならば、
「生活必需」に入ると思う。
だからソーシャルディスタンシングを、
もっともっと意識して、
爽やかな春の土曜日の午後に、
花の美しさを顧客に見せる。
それは生きるに必需のことだ。
日経新聞社説。
私、ときどき注文をつけるが、
今日は実にいい。
他紙は「奥歯に物が挟まる」、
日経は「歯に衣着せぬ」。
タイトルは、
「休業の要請に待ったかけた国は猛省を」
いきなり言い始める。
「最後の切り札である緊急事態宣言の
効果をおとしめる仕打ちではないか」
コラムニストは怒っている。
「新型コロナウイルス対策で
幅広い業種に休業を
要請しようとした東京都に、
政府が待ったをかけた」
「都は政府と協議を重ねて
ようやく折り合い、
10日に休業要請の対象業種を発表した」
小池百合子知事はちょっと株を上げた。
「緩やかな行動制限で
収束をめざす日本では、
個人の行動の見直しと
企業の協力が不可欠だ」
「休業して
協力しようとしている事業者を
逆なでするような迷走をもたらした
政府に猛省を促したい」
三越伊勢丹も松屋も、
首都圏などの店舗について、
デパ地下を含めて休業を継続している。
大丸松坂屋百貨店、そごう・西武、
東急百貨店、高島屋、阪急阪神百貨店は、
一部店舗は休業したり、
食品売場だけ営業したりしている。
「休業要請は外出自粛とともに、
人の接触機会を8割減らす対策の両輪だ」
「政府は外出自粛の効果を
2週間みたうえで
休業を要請する方針を示しているが、
それでは効果が薄まろう」
「危機感が高まる都に、2週間待たずに
休業要請を認めたのは当然だ。
首都圏3県も足並みをそろえれば
効果が上がる」
足並みがそろわない現状は、
「コロナ軍」からすれば、
思うつぼの敵失だ。
「休業要請の対象から
百貨店や居酒屋を
外させたのも疑問だ」
この点も賛成である。
「百貨店は広域から集客し、
対面販売で狭い食品売り場は
感染リスクが高い」
ソーシャルディスタンシングを、
徹底できない商売。
そういった店は今、
営業してはならない。
「大手百貨店の多くは
すでに休業しており、
営業再開には業界内から
反対する声がある」
百貨店業界の見識は、
政府以上ということになる。
「居酒屋も時間を短縮するとはいえ、
酔って騒げば”三密”になりやすい」
これも正しい。
だから国や都が、
「補償」(損失を埋め合わせること)を、
「保証」(請け負うこと)して、
休業するのがいい。
店の側も売上げや利益を我慢する。
そこで「三方一両損」となる。
「政府が休業要請に慎重なのは、
経済への打撃とともに
補償への警戒感がある」
「しかし今は感染拡大の防止が第一で、
補償がないからといって
休業しなければ危機は深まる」
最大の経済対策は、
感染拡大抑制と、
治療薬・ワクチン開発だ。
私の持論。
「海外でも休業による損失を
全額補償する国はない。
従業員給与の一定割合を給付したり、
定額を支給したりする例が多い」
「東京都の休業協力金も
50万円の定額給付である」
もちろん50万円では全然足りない。
「こうした補償なら
経済対策に盛り込んだ中小企業への
最大200万円の給付や、
1兆円の自治体向け交付金などを工夫し、
迅速に実行すれば、ある程度賄える」
「足りなければ柔軟に追加すべきだ」
それが政治だ。
真摯な議論と迅速な結論。
「今回の問題は
司令塔があいまいな実情も
浮き彫りにした」
これはマネジメントの問題だ。
「特措法は具体策を知事に委ねている。
感染状況や事業者への影響は
地域によって異なり、
地元の事情に通じた知事が
総合判断するのが望ましいからだ」
小池さんは、
「代表取締役だと思っていたら、
中間管理職だった」と、
皮肉を言った。
「国が目標を示すのはよいが、
細部にまで介入しては、
知事の手足を縛りかねない」
これもビジネスやチェーンストアの、
マネジメントの大原則だ。
日経社説は、
商売や経済の観点に立っている。
だから「歯に衣着せぬ」となった。
それが実にいい。
商売の観点の一番の原則は、
「損得より先に善悪を考えよう」
今、倉本長治の言葉が光っている。
〈結城義晴〉