立夏のこどもの日。
おもしろくふくらむ風や鯉幟
中日新聞巻頭コラム「中日春秋」が、
正岡子規の句を紹介した。
そして子どもたちを励ます。
「アインシュタインは二回も落第した」
「ルーズベルトはクラスの最下位だった」
偉人や成功者の若き日の失敗、
「だめだった日」。
――そういう逸話は人を奮い立たせ、
励ますものだろう。
「チャーチルの小学校の成績は
最下位だった」
「坂本龍馬はおねしょが治らなかった」
「スティー・ジョブズは子どもの時、
好奇心から殺虫剤を瓶ごと飲んで
病院に担ぎ込まれた」
「小学生のガンジーは
同級生に話し掛けられるのが怖くて、
授業が終わると一目散に帰った」
大野正人『失敗図鑑』(いろは出版刊)から。
大野さんは横浜商科大学商学部教授。
デール・カーネギーの、
「人を変える9原則」
私の講義テキストから。
(1)まずほめる
(2)ポジティブに注意を与える
(3)自分の誤ちを話す
(4)命令せず、意見を求める
(5)顔を立てる
(6)わずかなことでも、ほめる
(7)期待をかける
(8)激励し自信を持たせる
(9)喜んで協力させる
この「(3)自分の誤ちを話す」が、
失敗図鑑と同じ趣意である。
さて、祝日法が示す「こどもの日」の趣旨。
「こどもの人格を重んじ、
こどもの幸福をはかるとともに、
母に感謝する」
今年の母の日は、
今度の日曜日の10日。
ステイホーム週間の最後の日。
つまり、
今日の火曜日から、
日曜日までが、
「子どもと母の日」
ということになる。
商人舎編集スタッフの鈴木綾子。
月刊商人舎5月号の編集後記に書いている。
「毎日3食ご飯を
つくらなければいけない生活が
しんどい。
当然レパートリーはネタ切れなので、
レシピアプリ様様だ。
ただ一生懸命つくっても、
子どもたちが喜ぶのは結局、
定番のカレー」
ははは。
このコロナ禍で、
全国の学校は休校が続く。
昨日の緊急事態の延長宣言で、
5月末まで休校にする都道府県が多い。
安倍晋三首相が2月27日に言い出して、
3月2日から臨時休校となったが、
もう2カ月も継続されている。
それが3カ月間となる。
鈴木綾子の家には、
中学生と高校生の男の子がいるが、
いまや二人並んでパソコンに向かって、
塾のオンライン講義で勉強している。
カレー好きの子どもたち。
「ネアカ・のびのび・へこたれず」で、
すくすくと育ってほしい。
朝日新聞「折々のことば」
第1807回。
子供たちには
過去も未来もない。
で、これは我々には
殆(ほとん)どないことだが、
現在を享楽する。
(ラ・ブリュイエール)
1645年生まれ、1696年没。
フランスの作家、モラリスト。
18世紀啓蒙主義の先駆者。
著書『カラクテール』から。
鷲田さんの読書領域は驚くほど広いし、
岩波文庫はいい仕事をしてきた。
鷲田さんの抜き書き。
「成人は、未来に夢を描き、
備えもするが、
過去の行為を悔いたり、
幸福だった昔を懐かしんだりもする」
「意識はいつも
“まだないもの””もうないもの”に向かう」
「子供は”現在”、つまり、
今ここに在るものしか眼中にない」
「とすれば、
それがなくなるかもしれないという
喪失の不安こそ、
子供が子供でなくなる
最初の一歩なのか」
ブリュイエールの言に従えば、
コロナ禍は子どもを、
子どもでなくしてしまうかもしれない。
私はそれが怖いと思う。
ブリュイエールは名言を残した。
「人間には3つのことしか起きない。
それは”生まれる・生きる・死ぬ”である。
生まれたことは覚えていない。
死ぬことは怖い。
そして、生きることは忘れている」
フランス人伝統のエスプリだ。
「われわれの悩みはすべて、
ひとりでいられないことから
もたらされる」
COVID-19によって、
人類が教えられたことだ。
鯉幟身をくねらせて進まざる
〈山口誓子〉
山口誓子(せいし)は高浜虚子の弟子。
鯉のぼりの句が多い。
子どもの心を持ち続けていたに違いない。
しかしコロナによって私たちは、
身をくねらせて、
進んでいない。
〈結城義晴〉