突然、スマホが鳴った。
画面を見ると、
「川野幸夫さん」
ご存知、㈱ヤオコー代表取締役会長、
日本スーパーマーケット協会会長。
スマホの緑色の「応答」ボタンを押すと、
いきなり川野さんの声。
「結城さん、今月号はいいねえ」
月刊商人舎5月号のことだ。
「ありがとうございます」
「時間が早まる。
ほんとにそうだよ。
さすが結城さんだ」
「ありがとうございます」
「ヤオコーも、
現場のみんなが頑張ってくれて、
お客様からも支持されて好調だけれど、
お客様のライフスタイルは変わるね」
「だから、
新しいLifestyle Assortmentが、
提案されなければなりません」
「それも時間が早まるね」
「産業や会社や組織の悪いことろも、
早く表面化するし、
逆にイノベーションも早まります」
「働き方改革も一気に進んだし。
だから次のことを考えねばならない」
「その通りです。
私はずっと百貨店は現在の220店が、
120店に減ると言ってきました。
人口100万人に1店が適正だからです。
今回、それも早まります。
ほとんどの業態の構造が変わります」
「そうだね。
世界恐慌(1929年)の翌年に、
マイケル・カレンによって、
スーパーマーケットが登場したけど、
そんなことが起こるね」
「1918年のスペイン風邪のときには、
セルフサービスが誕生しました」
「いま、ネット販売が伸びてるしね」
「しかしスーパーマーケットが、
こんなに評価されたことも、
初めてじゃないですかね」
「社会に必要な小売業だからね」
「それは重要なことですね」
「次のことを始めなければね」
「今からポスト・コロナのために、
準備しておかねばなりません」
「これからも頑張って、
業界を指導してくださいよ」
「了解しました。
ありがとうございます」
英語で言えば、
“It’s my pleasure.”
ヤオコーの川野さんや、
エコスの平富郎さん。
ときどきこういった電話をくださる。
ありがたい。
5月号特集の[まえがき]は、
結城義晴執筆。
パンデミックと流通イノベーション
この原稿の最後のパラグラフ。
小見出しは特集タイトルと同じ。
「コロナは時間を早める。」
「進化を前提に考えれば
驚くほどの進化がもたらされる。
破滅を苦慮してばかりいると、
破綻への道をまっしぐらに下ってしまう。
伸び盛りの企業は伸び、
下り坂の企業は落ち込む。
COVID-19パンデミックの終盤までが
執行猶予の期間である。
組織の勢いをわずかでもプラスにすれば、
ポスト・コロナのシーンで
組織は上り坂に向かうに違いない。
下り坂は確実な破綻のルートを描き、
上り坂は不確定な成長の道筋である。
コロナはそれを早めるだけのものである」
特集の[あとがき]も、
結城義晴執筆。
確かな破綻と不確かな成長
これがいわば「ポスト・コロナ戦略」の、
現時点の結城義晴の結論だ。
月刊商人舎5月号。
出来れば読んでほしい。
さて今日のCOVID-19感染者。
新規感染が確認されたのは、
全国で合わせて55人、死者は18人。
東京都は感染者10人、死亡7人。
8日連続で50人を下回った。
大阪府は感染者12人。
「大阪モデル」の3条件は、
⑴新規感染経路不明者3.14人
⑵陽性率1.9%
⑶重症病床使用率23.9%
明日もこの3基準を満たせば、
緊急事態宣言は解除に向かう。
しかし意外に終息は早いと思ったら、
それは勘違いだし、油断は禁物。
ポスト・コロナは、
まだまだ先のことだ。
それまでは、
最悪を覚悟して、
最善を尽くす。
ただし最善も最悪も、
COVID-19によって、
現象化は早まってくる。
それにブレーキをかけているのは唯一、
日本の中央政府や行政なのかもしれない。
彼らがやっていることは、
「やってる感と忖度」
「後手と先送り」
「論理すり替え」
その安倍晋三政権に抗するのが、
600万人を超えたツイッター・デモ。
[#検察庁法改正案に抗議します]
毎日新聞巻頭コラム「余禄」は、
これを「巣ごもりデモクラシー」と称する。
もしかしたらコロナは、
この史上最長の強力政権に対しても、
時間を早める菌を振りかけたかもしれない。
〈結城義晴〉