結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2020年06月02日(火曜日)

「特別定額給付金」と「流動性の罠」の「金が子を生まぬ御代の春」

6月2日。
横浜は開港記念日。IMG_64950
例年、横浜市立の小中高校は休校。
しかし今年の今日は授業を行う。

その横浜市歌。

わが日(ひ)の本(もと)は島国よ 
朝日かがよう海に
連なりそばだつ島々なれば 
あらゆる国より舟こそ通え

されば港の数多かれど 
この横浜にまさるあらめや
むかし思えばとま屋の煙 
ちらりほらりと立てりしところ

今はもも舟もも千舟 
泊るところぞ見よや
果なく栄えて行くらんみ代を 
飾る宝も入りくる港

作詞は森林太郎こと森鴎外。
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作曲は南能衛(みなみ よしえ)

小学校のころから歌っているが、
実に格調高くて、
気持ちが高揚してくる名曲です。

そんな6月2日の朝、
自宅の郵便受けを開けたら、
ありました。
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横浜市特別定額給付金のご案内。
届けられた。

4月28日の国会衆議院予算委員会で、
安倍晋三首相が表明した。
全国民への一律現金10万円支給。

令和2年度補正予算で計上された事業費は、
12兆8802億9300万円。
給付事業費が12兆7344億1400万円で、
事務費が1458億7900万円。

13兆円に及ぶ金額。
国家予算一般会計の12%強。

生活に困窮している人たちに、
半分くらいは素早く給付して、
残った予算をPCR検査などに、
投資したらいいとは思う。

まったくの素人の発想で、恐縮だが。

しかし、一番シンプルに、
一律10万円と決まった。

仕事も同じだが、
一つの考え方を示し、
命令を出すだけでは事は運ばない。

そのための情報を入手して、
手順や方法を用意して、
実施する。

手順と方法がなければ、
仕事ではない。

つまりストラテジックや、
マーケティングがあっても、
オペレーションがなければ、
成果は得られない。

オペレーションまで、
十分に視野に入れた政策こそ、
政治と行政が手を取り合って、
国民のために実行すべきものだ。

アベノマスク然り。
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思いつきだけで、
オペレーションがなければ、
仕事ではない。

すでに2009年3月、
麻生太郎内閣のときに、
定額給付金は実施されている。

その前年のリーマンショックに対して、
緊急経済対策の一施策として、
給付された。

対象者への支給額は1万2000円で、
予算総額2兆円だった。

正直を言えば私は、
もらったことすら覚えていない。

今回も麻生財務大臣は、
2009年当時の定額給付金を、
「つくづく失敗だった」と述懐する。
「二度と同じ失敗はしたくない」と言う。
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定額給付分は手元に残ったり、
預金に積み上がったりするだけで、
経済効果は少ないからだ。

預金にしても、
現在は超低金利が続く。

普通預金で年率0.01%など、
預金者にメリットは全くない。

自分の金を銀行から引き出すだけで、
手数料が取られる始末だ。

それでも将来が不安であるから、
預金に回したり、
箪笥預金にしたり。

これが日本国民のジレンマ。
アベノミクスの矛盾だ。
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そこで「限界消費性向」

消費者の家庭における総所得のうち、
消費に回る金額を「平均消費性向」という。
さらに、新たに増加した所得のうちから、
消費に回る金額の割合を、
「限界消費性向」という。

2009年の麻生内閣のときは、
限界消費性向が10~25%あたりだった。
それを「つくづく失敗だった」と、
現副総理は反省した。

今回も同じくらいだと考えると、
限界消費性向が10%ならば、
日本全体で1兆2880億円が消費に回る。
25%ならば3兆2200億円。

コロナ禍でもっと多いと見ると、
4兆円から5兆円となるか。

したがってあくまで仮定の話だが、
13兆円の半分くらいを、
生活困窮者に支給するのが、
経済効果と生活支援との全体最適だった。

それでも国民1人一律10万円だから、
世帯人数が多い地域や県ほど、
1世帯当たりの給付額が大きくなる。

都道府県別に見ると、
1世帯平均人数は、
全国平均が2.33世帯だから、
23万3000円の所得増。

多い順にあげると、
⑴山形県 2.78人
⑵福井県 2.75人
⑶佐賀県 2.67人
⑷富山県 2.66人
⑸新潟県 2.65人
⑹岐阜県 2.65人
⑺滋賀県 2.59人
⑻鳥取県 2.57人
⑼福島県 2.56人
⑽秋田県 2.55人

これまでは過疎化に泣いた県が、
定額給付金の恩恵だけは大きい。
それは良いことだ。

一番少ないのは、
もちろん東京1.99人。

少ない順に、
北海道 2.13人
鹿児島 2.20人
高知 2.20人
大阪 2.22人
京都 2.22人
福岡 2.26人
神奈川 2.26人

東北や北陸などは、
世帯人数5人以上の割合が高い。

子ども1人に対して10万円は、
生活費として実に大きい。

東京都は全体の人口は多いが、
世帯人数は1.99人で2人を切る。

貯蓄にも回るだろうが、
消費に回った分は、
今の状況ならばまず、
スーパーマーケットなどが享受する。

しかし一方で、
6月から新しい税金などが、
次々に徴収される。

痛税感と給付金。
なんというタイミングの悪さ。

特別定額給付金申請書に、
「給付金不要」という欄が設けられていて、
希望しない人は、
「不要欄に✔を入れてください」とある。

いちばん、ばからしい。

受け取って、
いちばん好きな店で、
政府よりも何十倍もスピーディに、
すぐに使ってしまおう。

それが経済を回すことになる。
限界消費性向を上げることになる。

しかし社会不安のときには、
人々は思う。

「今一番必要とするものは現金だ」
そしてお金を手放さない。

これを「流動性の罠」という。
ジョン・メイナード・ケインズ理論の中核。
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お金は流動性の高いものだ。
つまり「流動性」そのものだ。

しかし人々は、
社会不安の中では現金を持ちたがる。
だから、「流動性」が減少し、
消費性向は低下し、
貯蓄率は上昇する。

この状態にあれば、
いくら現金を給付しても、
消費水準は変化しない。

現在がそれだ。

ケインズは「流動性の罠」があるときには、
政府が有効需要を生み出すべしと教えた。
そのための一つの例が、
政府の支出であり、給付金だろう。

しかしコロナ禍の今、
政府が支出しても、
消費性向は上向かない。

横浜市の特別定額給付金の申請締切日は、
9月10日となっている。 IMG_7018 (002)0

日の本や金も子をうむ御代の春
〈小林一茶「文政句帖」より〉

一茶は金を借りていたのだろう。
その利息が増えて、金が子を生んでいく。

しかし2020年の今、わが日の本は、
金が子を生まない罠にかかっている。

〈結城義晴〉

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