藪下雅治先生、ご逝去。
今年2月20日、91歳での永眠。
ご冥福を祈ります。
今日、その報が入った。
ご息女の藪下万紀子さんから、
お便りをいただいた。
万紀子さんは現在、
㈱藪下研究室代表取締役。
故人の遺志によって、
葬儀は近親者だけで執り行われ、
没後100日以上公表されなかった。
いかにも藪下先生だ。
故渥美俊一先生の正反対。
お生まれは、
1928年、昭和3年。
9月1日。
私は1952年、昭和27年、
9月2日生まれ。
まったくの偶然ながら、
ふたまわりと1日の違い。
だから互いに辰年の乙女座。
さらに血液型も偶然ながらO型で同じ。
糖尿病の家系も一緒。
よく似たことが多くて、
若い時から目をかけていただき、
可愛がってもらった。
静岡のお茶を生業とする家に生まれ、
旧陸軍士官学校に進む。
幸か不幸か従軍はしなかった。
戦後はスーパーマーケットの草創期に、
その創設に参画して、
近代小売業経営を体験し、
やがて指導者やコンサルタントの道へ。
自ら㈱藪下研究室を主宰しつつ、
ペガサスクラブに参画。
その主宰者の渥美先生とタッグを組んで、
日本のチェーンストア産業構築に貢献。
財務と計数分析、
能力開発と人材教育など、
多岐にわたって、
あまたの企業を指導した。
渥美先生が、
ストラテジックマネジメントを中心に、
マーチャンダイジングから、
オペレーションまで、
さらに法律問題から経済問題まで、
総合的に指導したのに対して、
藪下先生は、
フィナンシャルマネジメントと、
ヒューマンリソースマネジメントを、
専門領域とした。
お二人は実に絶妙の役割分担で、
ペガサスクラブは歴史的な仕事をした。
故川崎進一先生は、
お二人の先輩格で、
1910年、新潟県生まれ。
東京大学経済学部卒業後、
流通や財務専門の学者として、
新潟大学人文学部教授、
東洋大学経営学部教授を歴任。
その川崎先生を最高顧問に迎えて、
ペガサスクラブは盤石の陣容だった。
川崎先生は2001年12月25日、
91歳でご逝去。
私は商業界の取締役で、
遺稿集を発刊した。
『生きよ、学べ。』
渥美俊一先生は、
1926年(大正15年)生まれで、
東京大学法学部卒業後、
讀賣新聞記者を経て、
前述のペガサスクラブを主宰。
川崎、藪下両先生とともに、
日本のチェーンストア産業を構築。
2010、7月21日、83歳でご永眠。
亡くなられた年は、
川崎進一91歳、
渥美俊一83歳、
藪下雅治91歳。
川崎、藪下両先生は大往生だ。
私が駆け出しの1970年代終盤、
㈱商業界は一つの全盛期を迎えていた。
一方で商人道や商業精神の啓蒙をし、
他方でチェーンストア産業の発展を支えた。
故倉本長治先生が健在で、
なおかつ指導者の凄い先生方が、
ずらりと揃っていた。
それが川崎進一先生、
渥美俊一先生、
故奥住正道先生、
故城功先生、
そして藪下雅治先生。
この一廻り下の世代が、
島田陽介先生、
故高山邦輔先生、
石原靖曠先生、
山本浩史先生。
私にとって恩人ばかりだ。
その藪下先生が、名古屋で、
「コントローラー・セミナー」を、
開催されていた。
40年も前のことだ。
6カ月間、2泊3日で6回のコース。
小売業のフィナンシャルマネジメントを学ぶ。
私はこのコースに通った。
販売革新編集者として、
ご招待を受けたものだ。
本当に良い勉強をした。
私の計数の基礎は、
この藪下塾で確立された。
同窓生には、
松本隆文さんや古江博さんらがいた。
松本さんは京都の㈱マツモト社長。
古江さんは㈱西友の幹部となって、
最後は㈱九州西友の社長。
その藪下先生、
いろいろなことを教えていただいたが、
印象に残る言葉がある。
「どんなことでも、
100の事例を知っていたらベテランだ。
200の事例ならエキスパートで、
300の事例ならばオーソリティだ。
500の事例があれば本が一冊書ける」
現場主義、実例主義の先生だった。
「僕には娘しかいないけれど、
渥美先生には息子さんばかり6人いる。
もし、渥美先生に娘さんがいたら、
日本のチェーンストアは、
もっと違っていただろうな」
だからだろうか、
日本のチェーンストアは男社会だ。
「結城さん、講演は間(ま)です」
ん~、素晴らしい。
2008年4月17日の、
商人舎発足の会でも、
発起人になっていただいた。
心から哀悼の意を表しつつ、
いくばくかのものでも、
藪下先生のご遺志を、
引き継いでいきたいと思う。
西端春枝先生、
小口牧通さん、
そして藪下先生。
訃報が続く。
今日、私は、
月刊商人舎6月号を、
実際に手に取った。
発刊の日から大阪に出張していたからだ。
これもまったくの偶然だけれど、
藪下先生に教わった決算の特集だった。
その[Message of June]
数字は好きですか?
あなたは数字が好きですか。
実は私は大好きなのです。
数字の向う側の世界を、
数字を通して垣間見る。
そして前向きに、肯定的に、
モノを考える。
数字に媒介してもらうことによって、
雑念やしがらみや怨念が消える。
ゲーム感覚で、むしろ純粋な気分で、
状況が見えてくる。
数字はそういった
浄化の機能を持っているのです。
想像力を刺激する要素を
そなえているのです。
ただし、数字で人を
縛ってはいけません。
せっかくの浄化作用や想像の力が、
いっぺんにかき消されてしまいます。
いちじく
にんじん
さんしょに
しいたけ
ごぼうに
むくろじゅ
ななくさ
はつたけ
きゅうりに
とうがん
数字と商品を素直に結びつけて、
商業ビジネスにかかわる私たちは、
毎日、毎日、夢を、
追いつづけています。
数字は清くて、正しくて、
美しくて、しかも現実的です。
数字と商品を愛でることこそ、
私たちの仕事なのです。
さあ、あなたは数字が好きになりましたか。
私と同じように大好きになりましたか。
〈結城義晴『Message』より〉
藪下雅治先生、
ありがとうございました。
合掌。
〈結城義晴〉