今日は月刊商人舎7月号の、
最終責了日。
今号も午前様です。
すみません。
一日中、原稿を書き、
見出しをつけて、写真を選び、
キャプションをつけて、入稿。
実際に、すべてをそろえて入稿するのは、
商人舎GMの亀谷しづえだが。
今回は、と言うか今回も、
ほとんどの記事を内製化した。
つまり、社内で書いた。
今月号では最後の原稿で、
自著をちょっと使った。
2008年4月に㈱中経出版から発刊した本。
『お客さまのためにいちばん大切なこと』
㈱商業界の代表取締役社長を辞したのが、
2007年8月末日だった。
その後、当時の中経出版に挨拶に行った。
「流通図書の会」という集まりで、
協力し合った仲間の会社だったからだ。
当時の杉本惇社長にお会いしたら、
「本を書きませんか?」と、
お薦めいただいた。
そこで翌2008年4月17日の、
「商人舎発足の会」を目指して、
執筆することになった。
私は30年間、商業界でお世話になった。
その思いをすべて、この本に込めた。
担当編集者には、
腕利き編集者の飯沼一洋さんが起用された。
飯沼さんはそのころ、
10万部、15万部のヒット書籍を連発する、
辣腕編集者だった。
その杉本社長、飯沼編集者に支援されて、
2008年4月に発刊することができた。
発足の会がこの本のお披露目だった。
杉本社長にもスピーチしてもらった。
飯沼さんも壇上に上がってもらった。
参集してくださった皆さんには、
お土産としてお持ち帰りいただいた。
だから小売りサービス産業では、
トップの皆さんがほとんど、
読んでくださったはずだ。
ほんとうにありがたいことだった。
この本の「おわりに」は、
いまでもちょっと気にいっている。
単行本の一番最後のページで、
謝辞などを入れるところ。
「はしがき」だとか「あとがき」など、
いろいろ称する。
少し長いけれど、
一部、引用させてもらおう。
「おわりに」
「私はこの本を書くために生まれてきた」
商業の世界に入って、
ここに骨をうずめよう。
私がそう、心に決めたのは、
著書のまえがきに、
この言葉を書いた人がいたからです。
倉本長治。
その本の名は、
「店は繁盛のためにあり」(㈱商業界・昭和31年刊)
商業は、これまで、
士農工商の序列の中で
一番下に位置付けられていました。
そんな偏見はなくなったとは言っても、
日本では、働きたい会社の
ランキング上位には入ってこない。
まだまだ、日本の商業やサービス業は、
「近代化の過程」にあるのだと思います。
最も強い者が、支配者となり、
その仲間が人間を打ち倒す軍人や侍になった。
次に強い者が、自然と闘い、
農作物を生産する農民となった。
三番目に強い者が、
道具を使ってモノをつくる工の民となった。
そして一番体の弱い者が、商人となった。
私は、士農工商が生まれたプロセスを、
このように解きほぐして考えました。
しかし、現代のビジネス社会では、
かつて一番弱かった商人や
営業担当のビジネスマンが少しずつ、
力を得てきました。
この本の冒頭に掲げたように、
米国「最も働きたい企業ランキング」には、
労働集約型の、本来ハードワークを
要求されるはずの会社が並びます。
彼らの会社ではもちろん、
みなよく働き、
働きに応じた報酬が提供されます。
労働集約型産業の中に、
働く人々のモティベーションが
くっきりと示されているのです。
そしてそこに見えるのは、
アメリカ人らしい「人間力」
とでもいうべきものです。
マーチャントとして、
商人として、一番大切なことが、
彼らには、はっきりと
わかっているように思われます。
日本でも、それが見えてきました。
私は、「商業の現代化」と、
目標を設定しました。
この本は、消費財産業や
ホスピタリティビジネスに働く人々に、
「元気を出そう」と呼びかけるために、
書かれました。
自分の中から元気を生み出す。
そしてその元気を振りまく。
つまり「元気を売ろう」を
訴えるために書かれました。
毎日、元気を出す。
毎日、元気を売る。
これを繰り返しているうちに、
「人間としての力」がついてくる。
それが、多くの人々に伝わっていく。
やがて、
「商業・ホスピタリティ産業の現代化」が
成し遂げられる。
私の願いです。
2008年4月 結城義晴――
いまでも、この「おわりに」の思いは、
まったく変わらない。
昔むかし、
最も強い者が武士となった。
次に強い者が農民となった。
その次に強い者が工の民となった。
一番弱い者が商人となった。
かくて士農工商が生まれた。
私の発見。
まだまだ古いところでは、
この意識や序列は残されている。
「近代化」だけでは、
それを正すことはできなかった。
「現代化」がそれを果たすに違いない。
それでもこういったことには、
長いながい時間を要するものだ。
欧米では人種差別の問題が、
コロナ禍をきっかけに起こっている。
もしかしたらCOVID-19が、
その古くて悪い社会の序列そのものを、
改革するきっかけになるかもしれない。
月刊商人舎7月号を責了して、
そんな感慨をもった。
ありがとう。
〈結城義晴〉