毎日毎日、COVID-19感染の話で恐縮。
PCR検査数が少ないことは前提として、
新規感染者数に一喜一憂しても、
始まらないことも了解したうえで、
感染者数を確認する日々だ。
今日の新規感染者は全国で754人。
国内で確認された感染者数は、
累計で3万人を超えて3万494人。
死者数は累計で1009人。
東京都は今日、295人で累計1万0975人。
大阪府も132人で3047人。
愛知県が78人と急増、累計は1019人。
埼玉県は35人で2032人、
千葉県は21人で1444人、
神奈川県は18人で2204人。
兵庫県が24人で965人、
福岡県が18人で1310人、
そして北海道が9人で1386人。
安倍晋三首相の昨日の発言。
「再び今、緊急事態宣言を出す状況にない」
しかし新たな手立ては明らかにされない。
Go To トラベルキャンペーンの言葉が、
空しく響くだけ。
私は一昨日、「策に溺れる」と書いたが、
策を弄する気力が失せたか、
あるいは万策尽きたか。
それともダンマリで逃げるか。
4月の第一波のときの緊張感とは違う。
「慣れが一番怖い!」
日本の昨日、今日、明日。
世界の昨日、今日、明日。
日本の過去、現在、未来。
世界の過去、現在、未来。
あなたの会社の過去、現在、未来。
あなた自身の昨日、今日、明日。
一体どうなるのか。
それを深く考えねばならない。
ところで私宛に質問が来た。
旺文社マネジメントスクールが、
6月19日に今年度の開講講座を行った。
学習院マネジメントスクールが、
昨年から主宰者が変わり、
名称も変更された。
私はずっといちばん最初の、
「流通概論」の講義を担当してきた。
今年はオンライン講義となった。
その受講生からの質問だ。
[質問]「過去」と「現在」について
今回ドラッカーの話が多くありましたが、
私は最近ドラッカー学会で、
井坂先生の講義を受ける機会がありました。
その際に、ドラッカーは
未来思考ではなく過去思考である
という話を聞き、
過去に焦点を当てることで
見えてくることがある
(=未来にフォーカスしても
何も分かることはない)
ということを学びました。
結城先生が冒頭、
「昨日の論議が
現在の視野を狭いものとしている」
とおっしゃっていて、
「過去」と「現在」に目を向ける際に
見方の違いがあるように感じました。
もし違いがあるようでしたら、
「過去」と「現在」を観察する際の
ポイントを教えて頂けますと幸いです。
[結城義晴の返事]
井坂康志さんは私が主催する、
商人舎ミドルマネジメント研修会で
講師をお願いしていて、
よく理解し合っている人です。
私も井坂さんも、
ともに故上田惇生先生の弟子と
言ってもいい関係にあります。
井坂さんが、
「ドラッカーは未来思考ではなく
過去思考である」
と言われたのは、
ドラッカーの本質です。
ドラッカーは、
「未来を予測したり、
予言したりしてはならない」と言います。
未来のことは、
誰にもわからないからです。
だから過去から現在にかけての現象を
モニタリングせよ、観察せよ、
と教えます。そうすれば、
「すでに起こった未来」が見えてくる、
と言うのです。
「われわれは未来について
ふたつのことしか知らない。
ひとつは、未来は知りえない、
もうひとつは、
未来は今日存在するものとも、
今日予測するものとも違う
ということである」
(『創造する経営者』より)
私もまったく同感です。
おわかりのことと思いますが、
ドラッカーが使う「昨日」という言葉は
過去を象徴しているし、
「今日」は現在を、
「明日」は未来を象徴しています。
一方、
私が講義の「パラダイムの転換」の中で
引用した言葉は、
ドラッカーの『新しい現実』からのものです。
「いまだに昨日のスローガン、
約束、問題意識が論議を支配し、
視野を狭いものにしている。
それらが、今日の問題の解決に対する
最大の障害になっている」
過去のスローガンや約束、問題意識が、
現在の視野を狭いものにしていることは
よくあります。
ドラッカーの指摘はそれです。
私は最高の名著の一つだと思っていますが
ドラッカーに
『経営者の条件』という本があります。
そのなかに、
「集中のための第一原則は、
生産的でなくなった過去のものを
捨てることである」とあります。
生産的でなくなった過去のものを捨てる。
生産的な過去のものは活かす。
それが未来を創る。
「昨日のスローガン、約束、問題意識」
のなかで「生産的でなくなったもの」が
議論を支配していると、
視野を狭くしてしまう。
ドラッカーの最後の著書は、
『ネクスト・ソサエティ』という本です。
ドラッカーは過去や現在を
モニタリングして、
「次の社会」を見るという作業を
最後の最後まで続け、
次の時代の鍵を導き出しました。
その意味でドラッカーは実は、
未来に希望をもった「未来志向」の人です。
つまり私と井坂さんとは
同じことを言っているのです。
これは間違いありません。
なにしろ、ともに
ドラッカーから発想しているからです。
私がよく講演で使うドラッカーの言葉を
最後に挙げておきます。
「未来を築くために
初めになすべきことは、
明日何をなすべきかを
決めることではなく、
明日をつくるために今日
何をなすべきかを
決めることである。」
『創造する経営者』より。
ニューヨーク州アンドリュー・クオモ知事。
PCR検査と抗体検査を、
誰でもいつでも、
保険がなくても、不法移民でも、
無料で受けられるような、
「今日の態勢」をつくっている。
そして1日6万件以上の検査が実施され、
その結果、ピーク時には、
1日800人以上の死者が出ていたが、
7月11日には死者ゼロと激減した。
明日をつくるために今日
何をなすべきか。
それこそが今、求められているし、
為政者はそれを日々、
明らかにしなければならない。
〈結城義晴〉