安倍晋三第98代内閣総理大臣。
1954年9月21日生まれの65歳。
辞任の意向を表明した。
今年6月13日に慶応義塾大学病院で、
半年に一度の恒例の人間ドックを受診。
今日の記者会見の発言では、
「7月中ごろから体調に異変が生じ、
体力をかなり消耗する状況となった」
持病は潰瘍(かいよう)性大腸炎。
2006年9月26日、
第一次安倍内閣がスタートした。
小泉純一郎首相の勢いを継いで、
「美しい国」を掲げた。
しかし翌2007年7月29日の参議院選挙で、
与党自民党は惨敗して、
過半数割れとなった。
52歳だった安倍首相は続投を判断して、
8月27日に内閣改造を行った。
顔ぶれはすごい陣容だった。
鳩山邦夫法務大臣、
町村信孝外務大臣 、
額賀福志郎財務大臣、
伊吹文明文部科学大臣、
舛添要一厚生労働大臣、
甘利明経済産業大臣、
高村正彦防衛大臣、
与謝野馨内閣官房長官。
この時、初入閣したのが、
岸田文雄内閣府特命担当大臣。
9月10日召集の臨時国会冒頭、
安倍総理は所信表明演説で、
「職責を果たし全力を尽くす」と力を込めた。
しかし、9月12日、突然、
首相辞任を表明した。
懸案のテロ対策特措法は、
延長が困難になっていたが、
この時も潰瘍性大腸炎が悪化していた。
「政権投げ出し」などの批判を受けた。
私も同じ2007年の8月31日に、
㈱商業界代表取締役社長を辞任していた。
私の場合は任期満了での退任だったが、
同じ時期の安倍首相の気持ちは、
わからないでもなかった。
その後、自民党総裁には、
福田康夫前内閣官房長官が就任した。
2007年にはサブプライムローンが破綻し、
2008年9月にはリーマンショック。
自民党は福田内閣、
麻生太郎内閣と政権を維持したが、
世界経済は揺れに揺れた。
福田・麻生政権は、
いずれも約1年の短命内閣で、
2009年8月30日の総選挙では、
民主党に政権を奪われてしまった。
その民主党も、
鳩山由紀夫、菅直人、野田佳彦と、
短命内閣が続いた。
2011年3月11日には、
東日本大震災が勃発していた。
自民党総裁に復帰していた安倍晋三は、
2012年12月の総選挙で、
民主党から政権を奪取して、
第96代内閣総理大臣に就任。
第2次安倍政権を発足させた。
以来、今日まで、
第1次政権を含めた通算在任日数は、
桂太郎第13・15代総理を超えて、
史上最長を記録した。
連続在任日数でもこの8月24日に、
第61・62・63代の佐藤栄作首相を抜いて、
歴代トップの2799日に達した。
その佐藤栄作氏は、
日本で唯一のノーベル平和賞を受賞した。
安倍晋三総理は第二次組閣とともに、
「アベノミクス3本の矢」を打ち出した。
⑴大胆な金融緩和政策
⑵機動的な財政政策
⑶民間投資を喚起する成長戦略
ただし振り返ってみるとこれも、
黒田東彦日銀総裁による、
「大金融緩和政策」一本槍の観は免れない。
民主党政権での円高・株安は是正されたが、
財政政策の成果も健全化も見えず、
成長戦略も実のないものだった。
それでもこの間、安倍政権は、
安全保障政策に注力した。
全面賛同はできないものの、
安全保障関連法を成立させて、
集団的自衛権の限定行使を可能にした。
外交ではトランプ米大統領と、
やや滑稽な蜜月関係を築いた。
そしてCOVID-19パンデミック。
唐突な一斉休校や、
揶揄された「アベノマスク」。
これらの陳腐な判断など、
すでに体調は悪化していたのかもしれない。
それでも長期安定政権はそれ自体、
高く評価されるものだ。
野党の自滅もあるが、
与党内のバランスを取って、
政権を安定させる。
それが国際的に高い価値をもつ。
国内的にも本来、
大きな機能を果たすはずだが、
こちらは行政組織の陳腐化現象が起こる。
それが「忖度政治」となり、
意思決定がまともに、
実施されない体制となった。
しかし安倍さんも昨年9月21日に、
前期高齢者となった。
そろそろ、いい時期かもしれない。
記者会見での発言。
「病気と治療を抱えて体力が万全でない中、
政治判断を誤ることがあってはならない」
自民党総裁選は9月中に実施される。
新総裁が決まり次第、内閣は総辞職する。
そして第99代内閣総理大臣が決定する。
石破茂元幹事長と岸田文雄政調会長が、
有力な候補とされる。
菅義偉官房長官を推す動きも出ているし、
河野太郎防衛相も取り沙汰されている。
いずれにしてもすみやかに、
次の内閣総理大臣を決めて、
COVID-19対策は、
継続、刷新されなければならない。
安倍晋三さん。
「お疲れ様」とねぎらいつつ、
「ご自愛を」と言っておこう。
敗者復活の内閣総理大臣。
それがあなたのユニークな強みだった。
これまでの非礼の段、
お許しいただきたい。
「世のため、人のため。」を、
思っての発言であるし、
あなたも、
「世のため、人のため。」では、
同志だと信じるものだ。
〈結城義晴〉