2020年9月が始まった。
今年がもう、3分の2、経過した。
ずいぶん早い気がする。
「コロナは時間を早める」
〈完売です〉
そのインパクトによって、
安倍晋三総理の退陣も早まったか。
次期総裁選挙もサクサクと進みそうだ。
これもコロナ禍を理由にした、
「時間の短縮化」によるものだ。
しかし、7年8カ月も続いた、
憲政史上の最長政権。
さまざまな垢や澱もたまっているだろう。
それらを払しょくして、
次の10年を展望できる総理総裁を、
本腰を入れて選出してほしいものだ。
総裁候補同士のしっかりした議論も、
見たいし、聴きたい。
まあ、自由民主党という、
単なる一党の党首選びだから、
外野からなんと言おうと、
聞いてはもらえないだろうが、
その人がそのまま我が国をけん引する、
内閣総理大臣となる。
アメリカ大統領選挙は、
現職大統領に対立する政党ですら、
その党員集会と予備選挙が、
2月から始まって全米を巡りつつ、
8月まで続く。
その結果、今回の民主党は、
ジョー・バイデン候補が決まった。
この後、9月29日に、
現職大統領と対立候補によって、
第1回テレビ討論会が開催される。
10月7日には副大統領のテレビ討論会、
10月15日の第2回テレビ討論会、
10月22日の第3回テレビ討論会と重ね、
11月3日に一般有権者の投票が行われる。
そして最後に12月14日に、
選挙人による投票が実施されて、
大統領が決まる。
何でもかんでも、
アメリカがいいとは思わない。
首長選出のシステムも全く異なる。
しかし突如、8月28日に、
安倍晋三首相が辞任を表明してから、
半月後の9月14日には、
自民党総裁選挙が、
それも党員投票を行わない簡易方式で実施され、
16日には臨時国会が開催されて、
内閣総理大臣が決まってしまう。
いかにも安易だ。
しかもすでに4日間で、
ほぼ密室的に決定してしまっている。
単なる一党とはいえ、
米国では7カ月に及ぶ予備選挙がある。
その間の候補者たちの言動によって、
候補者の人物も政策も、
国民に知らされる。
まあ、そんなシステムを通して、
前回はドナルド・トランプが、
大統領になってしまったのだから、
どんな決め方がいいかはわからない。
今回の自民党総裁選挙で、
立候補を表明した候補者が、
今日、記者会見を開いた。
そしてマスコミから質問が浴びせられた。
それをアベマTVが逐一、報道した。
岸田文雄自民党政調会長も、
石破茂元幹事長も、
その記者会見で懸命に応答した。
それはそれで、
どんなことを考えているか、
どんな人格かが、
よくわかってよかった。
とくに石破茂はカンペも見ずに、
すべての質問に滑らかに、
躊躇することなく即答した。
日ごろからよく、
ものを考えているのだと感じられた。
石破農林水産大臣のころ、
私は「農林水産省改革推進会議」に、
専門委員として参加した。
石破農水相の意志が、
しっかり込められた委員会だと感じた。
つまり行政を把握し、
そこに意志を通す政治家だと思った。
今回は総理総裁の目はない。
もしかしたらずっとないかもしれない。
しかし三角大福中の時代には、
一番の弱小派閥の長だった三木武夫氏も、
椎名裁定によって総理総裁になった。
中曽根康弘氏も、
「田中曽根派」などと揶揄されつつ、
総理となって長期政権を築いた。
今の自民党には、
残念ながらそういった革新性はない。
朝日新聞「折々のことば」
今日の第1922回。
試してみる権利が
あるのだということを、
私たちが心から
信じることだ。
(デヴィッド・グレーバー)
「近代の政体は
強制力を発動する時にはいつも
“人民の名のもとに”を謳(うた)ってきた」
今回の簡易方式の総裁選に関しても、
二階俊博自民党幹事長が発言している。
「政治の空白をもたらしてはならない
という広く多くの国民からの
要望、命令が当然ある。
それを受けて、政治判断をしていきたい」
「国民の命令」とまで言った。
これこそ「人民の名のもとに」である。
グレーバー。
「”民主主義的国家”も
国家による強制と人民の自律との葛藤を含む」
コロナ禍での自粛要請は、
この葛藤を生んだ。
「が、民主主義の根幹は普通の人々が
“自分たちの課題に自分たちで対処できる”
ことにあり、いかに困難であっても
それを試す権利は人民の側にある」
『民主主義の非西洋起源について』から。
グレーバーは、
1961年、ニューヨーク生まれ。
文化人類学者・アクティヴィスト。
ロンドン大学の人類学教授。
今、与野党を見渡してみても、
日本の首長をさせてみたい人間は、
そう、多くはない。
しかしこれぞという政治家に、
総理大臣の座を任せてみたい。
試してみる権利があることを、
心から信じたい。
会社組織でもこれぞという人間に、
代表取締役社長をさせてみたい。
試してみる権利があることを、
心から信じるべきだ。
最後に日経電子版「経営者ブログ」
鈴木幸一さん。
㈱インターネットイニシアチブ会長。
「新型コロナウイルスによる自主規制は、
堂々と、人を怠惰にしてしまうようだ」
同感。
本来、勤勉を特長とする日本人が、
怠惰にならないか心配だ。
鈴木さんは自虐的に言う。
「”小人閑居して不善を為す”ことを
勧められたようなものである」
この9月に関しては、
「三密」を避けつつも、
「閑居して不善を為す」は避けたい。
〈結城義晴〉