月刊商人舎9月号、発刊しました。
COVID-19禍の米国小売産業
2020 US Retailの「すでに起こった未来」
表紙は青いマスクをした自由の女神。
[Cover Message]
アメリカ合衆国は、世界最大にして最高の消費大国である。しかし同時に今や、世界最大のCOVID-19感染国である。9月3日時点の感染者数611万3590人は世界の23.5%、死者数18万5720人は世界の21.5%を占める。「コロナは時間を早める」――これは真っ先にアメリカで現象化している。しかしだからこそ、アメリカ第一のウォルマートは真っ先にコロナ対策を確立し、「6-20-100」の4原則を打ち出した。6フィートのソーシャル・ディスタンシング、20秒以上の石鹸を使った手洗い、華氏100度(摂氏37.78度)以上の熱がある場合の自宅待機。もちろんマスク着用。これが世界の小売業の標準となった。そう、アメリカ小売業はコロナ禍に対して、「すでに起こった未来」を現出させているのだ。JCペニーが、ニーマンマーカスが、ロード&テーラーが次々に倒産した。企業の浮沈は早まった。業態地殻変動も起こっている。オンラインビジネスの方向性も示された。有店舗オンラインはピックアップに傾斜している。しばらくは直接アメリカを学ぶことができないが、その趨勢を知ることによって、コロナ禍の日本小売業の明日を占うことは可能である。
そして、☆特別企画☆は、
コロナ禍のラスト1マイル戦略
[目次]
記事の中で、
「Fortune」誌のグローバル500は、
世界の企業500社を、
単純に売上規模の大きい順位に並べたもの。
その2020年度のトップ10。
1位ウォルマート
2位シノペック
3位ステートグリッド
4位チャイナナショナルペトロリアム
5位ロイヤルダッチシェル
6位サウジアラムコ
7位フォルクスワーゲン
8位ブリティッシュ・ペトロリアム
9位アマゾン
10位トヨタ自動車
第1位はウォルマートで断然トップ。
年商5240億ドル、
1ドル100円換算で52兆円。
2位から4位までは、
中国の石油と電力会社で、
国営企業。
2位のシノペックは、
中国の石油会社で4070億ドル。
12兆円の差をつけた。
3位のステートグリッドは、
中国の電力会社。
4位もその名の通り中国の石油会社。
5位にオランダの石油会社、
6位はサウジアラビアの石油会社。
まあ、国が経営しているような会社が並び、
ウォルマートだけが純然たる民間企業だ。
7位にドイツの自動車製造業。
フォルクスワーゲン。
そして8位のBPはイギリスの石油会社。
9位にアマゾンがジャンプアップしてきて、
ベスト10に2社、小売業が入った。
アマゾンの営業収益2805億ドル(28兆円)は、
前年比20.5%増。
純利益115億8800万ドル(1兆1588億円)で、
こちらは15.0%増。
来年はトップ5に滑り込むかもしれない。
10位のトヨタはもちろん、
日本の自動車製造業。
トヨタの健闘は嬉しい限りだが、
来年はコロナ禍の影響で、
トップ10を滑り落ちるかもしれない。
トップ10には中国3社、
アメリカ2社。
あとはドイツ、イギリス、オランダ。
そして日本とサウジアラビア。
11位エクソンモービル、
12位アップル。
そして13位にCVSヘルスが躍進してきた。
もちろんアメリカのドラッグストア。
2568億ドルの32.0%増。
多分、トップ10に食い込む。
そして小売業が3社となる。
CVSヘルスは、
ドラッグストアとPBMを中核とした、
ヘルスケア企業である。
BPMは、
Pharmacy Benefit Managementで、
処方薬適正管理の企業。
ウォルマートもケアマークと契約している。
ウォルマートと
アマゾンと、
CVSヘルス。
みんなアメリカの会社だが、
来年は小売業3社が、
世界のトップ10に名を連ねる。
もちろんCOVID-19の影響で、
エネルギー産業と自動車産業の趨勢は、
きわめて不透明だ。
私はずっと主張している。
21世紀は生活産業、小売業の時代だ。
それがコロナウイルス感染拡大で、
図らずも実現することとなる。
平和産業、人間産業、そして地域産業。
イオンの理念だが、
これは小売業のビジョンでもある。
小売業の躍進は、
平和を象徴するものだ。
それが何よりもうれしい。
頑張る元気が湧いてくる。
〈結城義晴〉