菅義偉自民党総裁が決まって、
一夜明けた。
昨日、書いたが、
脱派閥の人事はできない。
政治を変えようとはせず、
行政を変える。
それが新総裁のやり方だ。
まあ、自民党首脳人事は、
完璧な派閥バランスと、
総裁選の論功行賞によるものとなった。
この後の組閣人事でも、
この路線は変わらないだろう。
それはそれでいい。
反対はしない。
その力を存分に発揮してもらおう。
ただし菅義偉は今のところ、
一国のリーダーというよりも、
行政のトップである。
これもこれでいい。
日経新聞電子版の「経営者ブログ」
㈱IIJ会長の鈴木幸一さん。
鈴木さんはブログで、
西川善文さんを悼む。
9月11日にご逝去。
82歳だった。
50歳代で住友銀行頭取に就任、
その後、三井住友銀行頭取、
三井住友フィナンシャルグループ社長。
全国銀行協会会長を歴任。
「最後のバンカー」と呼ばれた。
何しろ水と油と言われた、
住友銀行とさくら銀行(太陽神戸三井銀行)を、
その剛腕で合併させてしまった。
メガ銀行の「鼎占」現象を生み出したのは、
西川善文さんだ。
ダイエーの再建にも、
メインバンクとして深くかかわった。
後年は小泉純一郎首相の要請で、
第二代日本郵政公社総裁、
初代日本郵政社長に就任。
鈴木さんは西川さんとの、
プライベートな交流を描く。
そのあと最後に、
トニー・ジャットの言葉を紹介して述懐。
イギリスの歴史学者。
著書は『20世紀を考える』
「社会が、
民主主義的になればなるほど、
真の知識人の影響は
限定されるものとなっていくのです」
「権力を握った者たちに対する、
知的で文学的な、
もしくは文字媒体による批判は、
影響力や権力が限定された
仲間社会でまわされている場合に
最もうまく機能します」
まあ、20世紀前半の、
同人誌的な社会か。
「ご都合主義以外では、
公衆を権力者に対抗して動員する、
唯一の方法は
スキャンダルをすっぱ抜き、
評判を引きずり下ろして、
代替的な情報の軸を打ち立てることです」
鈴木さん。
「テレビの時代になって、
すべての知識人は、
単純化を競うようになってしまった」
ん~、同感。
オペレーションの単純化は必須。
しかし考え方の単純化は危険だ。
「インターネットの時代になって
国際的な広がりは膨らんでいるにしても、
単純化と”スキャンダルすっぱ抜き”の影響が
ますます大きくなっていくことは
変わらないようだ」
これを「ポピュリズム」という。
鈴木さん。
「総裁選挙である」
「いずれにしろ、知識人の存在が、
どこかに消えてしまっていることに
変わりはないようだ」
「三角大福」時代。
故大平正芳元総理大臣は、
「戦後政界指折りの知性派」と評された。
三木武夫も田中角栄も、
そして福田赳夫も、
みな、故人になってしまったが、
大平ほどではないにしろ、
それぞれにそれぞれの知性を備えていた。
今、そんな政治家は少ない。
いや残念ながら、もう見当たらない。
しかし少なくとも流通世界には、
「知性派」がいて欲しいと思う。
それは学歴ではない。
学び続ける意志をもつことだ。
大平の盟友、田中角栄は、
学歴はなくとも、
「コンピュータ付きブルドーザー」だった。
さて今日は朝から、東京の小平へ。
第一屋製パン㈱本社。
その小平工場で、
新しい機械と新しいラインの視察。
キャップをかぶって、マスクをし、
ツナギの衛生服を着て、十全に消毒。
COVID-19もシャットアウト。
第一屋製パンの製造部門は、
トヨタ自動織機の指導者が現場に入って、
徹底的に「トヨタ生産方式」を導入した。
そのあと、恒例の取締役会。
何よりも現場が大事だ。
その現場が仕事しやすい環境をつくる。
それが経営の役割だ。
西川善文さんの言葉。
「決して、現状に甘んじてはいけない。
現状維持は、沈むことである」
どんな会社もどんな組織も、
茹でガエルになってはいけない。
そして今、コロナは、
現状維持の好きなカエルを、
あっという間に茹で上げてしまう。
〈結城義晴〉