「本日の一部報道について」
DCMホールディングス㈱の、
今日のニュースリリース。
「本日、NHK他において、
当社が株式会社島忠に対して
公開買付けを行い、
傘下に収める方向で
調整を進めていると報道されましたが、
これは当社の発表に
基づくものではありません」
「当社は常々今後の成長戦略として、
株式会社島忠も含め、
他社との提携・様々なM&Aの
可能性を検討しておりますが、
いまだ決定しているものはありません。
今後何らかの決定を行いましたら、
速やかに開示いたします」
NHKが16時45分に報じた。
「DCM 島忠を傘下に」
日経新聞電子版は18時59分。
「DCMが島忠へTOB検討」
だからNHKのスクープ。
㈱DCMホールディングス(石黒靖規社長)は、
ホーマック、カーマ、ダイキの持株会社だ。
37都道府県にホームセンター673店を展開。
2006年に3社が経営統合。
その後も、青森のサンワ、
山梨県のくろがねやなども傘下に入れ、
さらに千葉県のケーヨーとは、
資本業務提携をしている。
20年2月期の営業収益は、
4373億7100万円、前期比1.9%減、
経常利益は201億0700万円、1.0%増。
減収増益。
営業利益率は4.8%、経常利益率は4.6%。
ずっと業界1位だったが、
非上場のカインズが昨年、
4410億円を売り上げて、逆転。
それもあってか、
業界第7位の島忠に対して、
10月にもTOB(株式公開買い付け)を実施して、
50.1%を超える株式を取得する。
NHKは「そのための最終調整」と表現する。
島忠は東京や埼玉を中心に60店舗。
創業130年の老舗で業界7位。
昨年8月期の売上高は1399億円。
タンス製造業からスタートして、
家具やインテリアの品揃絵に特徴を持つ。
島忠がTOBを受け入れてDCMの傘下に入ると、
2社の売上高は単純合計で約5700億円。
報道はここまで。
しかしそれに、
ケーヨーの売上高1148億円を加えると、
6800億円となり、
カインズに大きく差をつけて、
業界ダントツとなる。
ホームセンターの国内市場は約4兆円だ。
DCMは島忠とケーヨーの加算によって、
ちょうど17%のシェアとなって、
クリティカルマスを突破することになる。
「クリティカルマス」とは、
売上規模臨界点の仮説のことだが、
それを超えると市場から、
特別のご利益が与えられるとされる。
その企業の成長はある意味で安定する。
その臨界点は一般に17%といわれる。
もちろんケーヨーは、
営業損失15億6000万円、
経常損失7億5300万円、
純利益は3億4200万円だから、
すぐにも統合することはできない。
経営統合すると、
DCMの連結決算が悪化して、
株価に影響するからだ。
しかしクリティカルマスの視点は、
いまDCMに必要である。
日経記事はやや慎重で、
「DCMHDは今後、
商品開発力や営業エリアなどの
相乗効果を検証し、
TOBを行うかを決める方針だ」
月刊商人舎8月号は、
特集[業態地殻変動]
この特集の中の記事。
「ホームセンターは
フードとの親和性を
発見した。」
――ホーム・デポvsロウズの
「米国の複占化」を追い続ける
私はこの記事の中に書いた。
「ホーム・デポやロウズの革新と
米国ホームセンター市場の変遷を
見続けてきたのが、
日本のホームセンター企業である」
アメリカでは2社による「複占」である。
「LIXILグループは6月、
傘下のホームセンターLIXILビバを
TOBによってアークランドサカモトに
売却することを発表した」
「両社の合併によって
売上規模は3000億円を達成して、
カインズ、DCMホールディングス、
コーナン商事、コメリに続く
第5位に躍り出る」
「2020年代に入って、
日本のホームセンターは
さらに米国を模して
M&Aを進捗させるだろう」
「それはコロナ禍によって
加速するに違いない」
DCMの島忠TOBによって、
ホームセンター業界で、
また「業態地殻変動」が起ころうとしている。
そしてそれは、
コロナ禍によって、
加速された。
〈結城義晴〉