今日も横浜商人舎オフィス。
昨日は大阪で講演の予定があったが、
新型コロナウイルス感染第三波のため、
急遽、中止となった。
主催者のみなさん、
いい判断でした。
大阪府は今日、
新型コロナウイルス対策本部会議を開催。
独自基準の「大阪モデル」で、
「赤信号」を点灯させた。
吉村洋文大阪府知事は、
「医療非常事態宣言」を出し、
ツイッターでメッセージを発した。
大阪府の重症患者は136人になって、
1カ月前の4倍に急増。
府内の医療体制はひっ迫している。
吉村知事のコメント。
「感染の山は
抑えられているかもしれないが
重症者はあとから増えてくる。
重症者が急に減ることはないが、
社会全体での陽性者を減らさないと
重症者も減らない」
その通り。
重症患者は急に減ることはない。
そのために日本全体で、
陽性者を減らす。
何度も何度も書いているが、
尾身茂さんの言葉。
新型コロナ対策分科会会長。
「新型コロナは、
人々の行動が
感染動向を左右する」
「社会全体の感染防止への意識が
低下していないか判断しながら
アクセルとブレーキを踏む必要がある」
何よりも大事なのは、
「社会全体の感染防止意識」
欧米に比べて日本は、
それでも社会全体の意識が高い。
それを政府や自治体は、
自らの成果にしてはいけない。
小売業やサービス業の営業も、
似たところがある。
従業員全体の顧客満足意識が、
低下していないか判断しながら、
経営のアクセルとブレーキを踏む必要がある。
これをヤン・カールソンは、
「真実の瞬間」と表現した。
カールソンは、
スカンジナビア航空を立て直した経営者。
「私たちは毎日、5万回もの
“真実の瞬間”を持っている」
「真実の瞬間」は、
商品やサービスを提供する側と、
その提供を受ける側との接点のことだ。
「真実の瞬間」への配慮の総和が、
会社や店の業績となり、
地域や国の景気となる。
現時点で言えば、
「ウイルス感染防止」の一瞬の意識が、
真実の瞬間である。
一つひとつの「真実の瞬間」を、
おろそかにしないこと。
その意味で今日の大阪モデルの「赤信号」。
タイミングとして遅くはない。
大阪講演が中止となって、
私は原稿執筆に専念した。
さて、大原孝治さんが、
容疑者となって、
東京地検特捜部に逮捕された。
金融商品取引法違反(取引推奨)の容疑だ。
㈱ドンキホーテホールディングス前社長。
株式の不正推奨疑惑。
今年の4月に会ったばかり。
だからこの話題に、
触れないわけにはいかない。
創業者の安田隆夫さんとは、
㈱商業界の時代に何度かお会いしたが、
大原さんとは初めてだった。
詳しい事情がわからないので、
ノーコメント。
このまま起訴されるにしても、
あるいは容疑が晴れるにしても、
どちらにしても遺憾なことだ。
しかしこういった時にこそ、
人間の真価が問われるものだ。
朝日新聞「折々のことば」
第2010回。
出会った実例が、
はめこもうとしても
定義の枠をあふれるとき、
手応えを感じるのが、
学問をになう態度として
適切だ。
(鶴見俊輔『思い出袋』から)
「権勢を手放したくない者、
面子(めんつ)を護(まも)ろうとする者は、
自らの主張を反証するような事例を
認めようとしない」
「これに対し、学問を志す者は
自らの仮説への反例の出現を歓迎する。
それによって真理に
より近い視点に立てるから」
感銘しつつ、首肯(しゅこう)する。
編著者の鷲田清一さん。
「辻褄(つじつま)合わせに走ったり、
反例を否認したりすることほど
反学問的なことはない」
反学問的どころか、
反政治的であるし、
反経営的であるし、
反実務的である。
鈴木敏文元セブン&アイ会長の「仮説と検証」も、
「出会った実例が、
はめこもうとしても
仮説の枠をあふれるとき、
手応えを感じる」という類の、
仕事のやり方である。
〈結城義晴〉