40年前の今日、
ジョン・レノンが凶弾に倒れた。
40歳だった。
ニューヨーク・マンハッタン。
セントラルパークの横に、
ダコタハウスというアパルトマンがある。
1980年の夜の10時50分。
ジョンとヨーコは、
ザ・ヒットファクトリーから帰宅した。
レコーディングスタジオ。
その玄関に、
マーク・チャップマンが立っていた。
ジョン・レノンは、
チャップマンの5発の銃弾に撃たれた。
ジョンは「I’ve shot!」と二度、叫んだ。
アパルトマンの入り口に数歩、
歩いてから倒れ込んだ。
ルーズベルト病院に運ばれたが、
11時、出血多量で亡くなった。
ジョンは生前にいつも言っていた。
「死ぬとしたらヨーコより先に死にたい」
その通りになってしまった。
この事件の1カ月前の11月17日。
ジョンとヨーコはレコードをリリースしていた。
「ダブル・ファンタジー」
ジャケットの写真撮影は篠山紀信だった。
ぼくは㈱商業界に入社して、
3年目を迎えていた。
「販売革新」編集記者の名刺を持っていた。
すでにこのレコードを手に入れていたが、
この事件以来、一度も、
針を落とすことはなかった。
広大なセントラルパーク。
そのダコタハウスに近いところに、
「IMAGINE」と記されたマンホールがある。
生きていたら80歳。
いったいどんなジョン・レノンに、
なっているのだろう。
ダブル・ファンタジーに入ってはいないが、
ジョンは、呼びかけた。
“Imagine”と歌って。
Imagine there’s no Heaven
想像してごらん、天国なんてない。
It’s easy if you try
簡単だろう?
No Hell below us
地獄なんてものもない。
Above us only sky
ぼくらのうえには空があるだけさ。
Imagine all the people
想像してごらん、みんなが
Living for today
今を生きている。
Imagine there’s no countries
想像してごらん、国なんてものもない。
It isn’t hard to do
難しくはないだろう。
Nothing to kill or die for
殺すことも死ぬこともない。
And no religion too
宗教さえもない。
Imagine all the people
想像してごらん、みんなが
Living life in peace
平和に人生を送っている。
You may say I’m a dreamer
ぼくは夢想家だと言われるかもしれない。
But I’m not the only one
でも、ぼく一人じゃない。
I hope someday you’ll join us
いつかきっとみんな加わって、
And the world will be as one
世界はひとつになる。
生きていたらいったい、
どんなジョン・レノンの歌を、
どんな声で歌っているのだろう。
40年も経ってしまったけれど、
今日はご冥福を祈りたい。
ぼくは大学に入って、
すぐにバンドをつくった。
「Himagine」
仲間は阿部恵昭と高橋幸三。
ジョン・レノンが、
ポール・マッカートニーに勧めたように、
ぼくは阿部から勧められてベースを買った。
そしてベーシストになった。
やめておけばいいのに最初の曲は、
ジョージ・ハリスン作の「Something」。
アルバム「アビーロード」の中の名曲。
Something in the way she moves
彼女のしぐさのなにかが
Attracts me like no other lover
ほかの誰よりもぼくを惹きつける
Something in the way she woos me
彼女の甘えるしぐさのなにか
I don’t want to leave her now
彼女から離れたくない
You know I believe and how
どれくらいぼくが本気かわかるだろう
ベースのコピーはひどく難しかった。
ボーカルの阿部も苦労していた。
幸三のリードギターだけが、
自己主張していた。
この曲をモノにできないまま、
Himagineはバラバラになった。
ビートルズは、
とんでもなく凄い。
そしてジョンは40歳で死んだ。
Himagineのぼくらは、
そのころ暇を持て余していたが、
阿部は石巻で、ぼくは横浜で、
まだ、生きている。
幸三はその後、行方がわからない。
ぼくらはあいかわらず、
へたくそなミュージシャンだ。
天国も地獄も、
想像してもわからない。
それでも見あげると空がある。
みんな、今を生きている。
世界のどこかで殺し合いは続いている。
コロナウイルスで死ぬ人もいる。
しかし、ほとんどみんな、
平和に人生を送る。
ジョンは夢想家ではなかった。
だからいつかきっと、
世界はひとつになる。
ぼくもそれは信じている。
合掌。
〈結城義晴〉