75Th.U. S.WOMEN’S OPEN
全米女子オープン。
テキサス州ヒューストンで開催されていた。
チョンピンズ・ゴルフクラブ。
2つのコースがあって、
トータルで36ホール。
予選ラウンドの2日間は、
サイプレスクリークコーストと、
ジャックラビットコースで、
全出場選手が競う。
予選を通過すると、
メインコースのサイプレスクリークで、
2日間、シビアな戦いを展開する。
日本の渋野日向子は、
初日・2日目の予選はトップで通過した。
3日目も3アンダーで1打差の首位だった。
しかし最終日の日曜は荒天で中止。
その翌日の今日の月曜日は、
前日よりも10度も気温が下がった。
フェアウェイは雨でぬかるんでいて、
ボールについた泥はグリーンに乗せるまで、
ルールでふき取ることができない。
そんな中で2バーディー、5ボギー。
スコアを3打落とし通算1アンダー。
4位に甘んじた。
この最終日に4打伸ばして、
通算3アンダーで優勝したのが、
韓国のキム・イェリム。
ゴルフジャーナリストの船越園子。
Yahoo!ニュースで指摘している。
「渋野日向子の敗因は、
プレー以前に、
すでにあった」
それは防寒対策を怠ったことだ。
ほかのプレイヤーたちは、
ニット帽を被ったり、耳当てを付けたり。
セーターの下のアンダーシャツは、
タートルネックの暖かいもの。
セーターの上にはダウンベストなどを着ていた。
さらに脱いだり着たりが楽にできる、
たっぷり目のジャケットを羽織る。
それに対して、
「渋野の出で立ちは、
あまりにも薄着で無防備だった」
私も見ていて違和感を覚えた。
赤いセーターは首が丸出し、
その上に羽織っていた白いジャケットは、
ウィンドブレーカーのような薄手のもので、
これを脱いだり着たり。
1ラウンドで何十回も繰り返した。
酷寒の中で、
この動作に費やす神経とエネルギーが、
シブコの集中力を奪い取ってしまった。
渋野はビームスと契約を結んで、
そのウェアを着用する。
プレーするマネキンだ。
だからビームスが防寒着や防寒具も、
用意すべきだったと思う。
渋野自身にもこんな経験はなかった。
それでも首位と2打差で上がってきた。
本当に惜しいチャンスを逸した。
残念でならない。
しかし、ゴルフは、
渋野日向子にとって仕事である。
仕事ならば万全の準備が必須である。
二度と寒さに負けることはないだろうが。
「勝ちに不思議の勝ちあり。
負けに不思議の負けなし」
野村克也が好んだ言葉だ。
さて、
「Go Toトラベル」
全国一斉に一時停止される。
菅義偉首相がとうとう表明した。
新型コロナウイルス感染第三波の影響と、
内閣支持率の急落が理由だ。
停止期間は、
12月28日から2021年1月11日まで。
個人の自由な移動は制限されないものの、
年末年始の旅行は自粛が広がる。
「Go Toトラベル」事業は、
旅行会社などを通じて予約した
宿泊や交通費が割引き対象になる。
2万円を上限に代金の半額分を
国が補助する。
旅行代金から35%がまず割り引かれる。
残りの15%分としては、
旅先で使えるクーポン券が配られる。
「ガースー首相」肝入りの政策は、
当初来21年1月末までが期限となっていたが、
6月末まで延長すると変更されていた。
しかし書き入れ時の年末年始に、
Go Toトラベル事業停止は、
その趣旨からすると大いに痛手だろう。
観光庁の調査では、
「Go Toトラベル」の宿泊者数は、
7月下旬から11月15日までで延べ5260万人。
国が支援した額は約3080億円。
私は初めから、
やるべきことはほかにあると思っていた。
だから一旦停止に関しても、
もっと早く止めておくべきだったと思う。
政府は「勝負の3週間」と国民を説得した。
11月25日から12月16日まで。
しかしコロナ感染は拡大するばかりだった。
Go Toもこの時期に止めればよかった。
判断が遅い。
後手に回っている。
毎日新聞巻頭コラム「余禄」
アンデルセン童話の「裸の王様」を持ち出す。
王様のパレードを見ていた子どもたちが、
「王様は裸だ」とばらしてしまうお話。
その結末はどうだったか。
「大人たちもやっぱり裸だと叫び出す」
「王様にもみんなの言う通りのように思えてくる」
だが”今さらパレードをやめるわけにはいかない”。
「王様はなおさらもったいぶって歩き、
侍従たちはありもしない裳裾(もすそ)を
ささげて進んでいった――
王様とその側近たちだけは
フィクションを演じ続けたのだ」
「今さらやめられない」
アベノマスクの時もそんな空気になった。
Go Toトラベルへの菅首相の異様なまでの固執。
首相は人の移動と感染の関係を否定しつつ、
「エビデンス(証拠)は存在しない」と発言し、
「GoToが悪者になった」と嘆いていた。
コラム。
「感染症の専門家はもちろん、
医療現場の苦境を心配する国民も、
この期(ご)に及んで
危機感の衣をまとわぬ”裸の王様”に
あぜんとさせられた」
「感染抑止のためならば、
なぜ直ちに踏み切らないのか」
「自分が裸と分かった後にも、
なおもったいぶるのは
人のさがなのだろうか」
さがの強い人なんだろう。
私は意思決定のことを思った。
会社の経営でも店の運営でも、
決断は極めて難しくて大事な仕事だ。
しかし、
何をどうするかの意思決定も重要だが、
いつ実行を決断するかは、何より大事だ。
止める決断はなおさら大事で難しい。
Go To トラベルの発想自体、
目先の、ごく部分的な経済対策だ。
だから停止、あるいは中止することになる。
それはわかっていた。
それよりも、いつなのか。
勇気ある決断は、
遅すぎてはいけない。
後手に回っていはいけない。
日々の決断が求められるのは、
首相だけではない。
〈結城義晴〉