安野光雅さん。
昨2020年12月24日、亡くなった。
肝硬変。94歳。
画家で絵本作家、
エッセーもよかった。
朝日新聞は、
「遊び心にあふれる絵本や、
淡い色調の風景画で知られる」と紹介。
25年ほど前のNHK番組、
「風景画を描く」。
ゴッホが描いたオーヴェールの教会の前で、
水彩画を描いて見せてくれた。
その柔らかな線と水彩の絵画、
好きだった。
安野さんの顔は私の祖母に似ていた。
彼女も99歳8カ月まで生きた。
安野さんは1926年生まれ、
島根県津和野の人。
戦後、代用教員となった。
それから山口師範学校を出て、
小学校で美術を教えた。
そのあとでプロの画家になった。
最初の絵本は1968年の「ふしぎなえ」。
不思議なトリック絵本。
これがある意味のデビュー。
1984年、国際アンデルセン賞画家賞、
2008年に菊池寛賞、
2012年、文化功労者。
晩年の2017年のエッセー「本が好き」
その「あとがき」の冒頭の文。
「子どものころから本が好きだった」
「少年倶楽部」を愛読した。
そして最後の一文。
「今日、喫茶店で
珍しく本を読んでいる
中年の男の人を見た。
こんなことが、
はなしのたねになる時代は
悲しいではないか」
同感して、ご冥福を祈りたい。
さて日経新聞コラム「大機小機」
コラムニスト富民氏。
「コロナ後の世界/3つの潮流」
なかなか、いい。
[2世紀前]――
「インドで発生したコレラの大流行で
世界の中心がアジアから欧州に移り、
産業革命で西洋文化が開花した」
[1世紀前]――
「スペイン風邪の大流行を境に
主役が欧州から米国に移り、
技術革新と情報革命、流通革命で
新産業が勃興して米国文化が開花した」
今、新型コロナ大流行――
世界はどう変わるか。
[第1の潮流]
「世界秩序の再構築」
「米国が社会の分断に悩む中で、
コロナの封じ込めに成功した中国は
覇権をうかがう勢いだ。
だが、中国の独裁・強権政治は
国際社会に警戒心を生んだ」
「欧州連合(EU)は英国の離脱で
かつての勢いを失った」
「主役無き時代を迎える中で中国と同様、
コロナ封じ込めに成功しつつある
インド太平洋経済の浮上が注目される」
ヨーロッパからアメリカへ。
そしてインド太平洋圏へ。
「インドの感染者数は
米国に次いで多いが、感染率は低く、
1週間あたりの新規感染者数も
ピークの5分の1に減少している」
「経済活動再開で今年の成長率は8%を超え、
世界で最も高くなる予想だ」
インドは、
コロナ対策も経済政策も両立させている。
「インド太平洋主要10カ国の国内総生産は
米国、EU、中国に次ぐ第4位だが、
平均年齢は中国より10歳若く、
ポテンシャルは大きい」
そこに、
「日本を加えれば経済規模は
EU、中国とほぼ並ぶ」
「世界の中心が米中2極から
4極になる可能性がありそうだ」
悪くない分析だ。
「世界秩序が揺らぐ中で、日本は
インド太平洋諸国と連携して
自由貿易を推進し、
価値観を共有する国々とともに
世界が直面する諸課題の解決に向けて
主導的役割を果たすときだ」
同感だ。
日本のチェーンストアが向かう方向も、
インド太平洋圏だろうと思う。
ウォルマートは、
イギリスから退散し、
日本からも事実上の撤退。
インドには橋頭保を築いている。
「新しい国際ルールを
積み上げていくことによって、
21世紀の新しい世界秩序が
生まれることを期待したい。
[第2の潮流]
「新企業群の誕生」
「デジタルとグリーン革命で
新しいビジネスモデルが次々生まれつつある」
「主役が交代して
新興企業群が世界経済をけん引する時代が
始まろうとしている」
小売流通産業はその意味で、
古いビジネスモデルかもしれない。
しかし古代から続く商売を、
新しいビジネスモデル、
つまり新しいフォーマットに変えると、
この第2の潮流に乗ることが可能となる。
[第3の潮流]
「新文化の開花」
「在宅勤務の普及で
余暇が増えて生活様式が変わり、
人々が公園に集い始めた」
「かつてホイジンガが提起した
“ホモ・ルーデンス(遊ぶ人)”の時代の到来だ。
遊びは文化の原点だ」
「明治以来、日本人は
“ホモ・ファーベル(作る人)”だったが、
新しい生活スタイルに変わったとき、
新ジャポニズムが開花するのではないだろうか」
ホモ・ファーベルでありながら、
ホモ・ルーデンスへ。
安野光雅さんの遊び心。
今こそ必要な時代となった。
合掌。
〈結城義晴〉