結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2021年01月31日(日曜日)

多和田葉子の「仕事の酸欠」と「邪魔してくれる要素」

一月、往ぬる。

最後の日が日曜日。
今日の私は完全巣ごもり。

私の住む神奈川県は今日、
COVID-19の陽性が390人判明した。
横浜市は260人。

死者は神奈川県が6人、横浜市が2人。

減ってきた。

緊急事態宣言の効果が出ている。

東京都は633人で3日連続1000人以下。

全国の新規感染者は2673人。
死者は65人。

しかし1月をトータルすると、
新規感染判明が15万4247人、
死者は2261人だった。

これはともに月間で過去最多を記録した。

さらに感染スピードの速い変異種が上陸。
その防御のための水際作戦が、
成功しているのかどうか、わからない。

どんな水際作戦が有効なのかさえ、
はっきりしない。

だからまだまだ油断はできない。

そんな一月が往った。

私は今日、完全巣ごもりで、
仕事した。

今日の「折々のことば」
第2069回。

仕事にとって
重要なのは、
仕事を邪魔してくれる
要素だということ
〈多和田(たわだ)葉子〉

岩波新書の『言葉と歩く日記』から。
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多和田さんは1960年生まれ。
私より8つ若くて、
私の妹と同じ年だ。

ドイツのベルリンに住んで、
日本語とドイツ語で、
小説や詩やエッセイを書く。
日本では『犬婿入り』で芥川賞、
ドイツではゲーテ・メダルを受賞。

村上春樹さんも、
英語で書いた小説を、
日本語に翻訳して、
独自の文体をつくった。

片岡義男さんも、
『英語で日本語を考える』を書いていて、
多和田さんのこの日記に出てくる。
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二つの言語を習得し、
その間の表現やニュアンスの差異を考え、
国や文化の違いを見切る。

それが多和田さんのこの本だ。

編著者の鷲田清一さん。
「作家の近所に住む挿絵画家は、
仕事をコンピューターでやるようになって
ひどく疲れやすくなった」

「筆を洗い鉛筆を削ることがないので、
途中で一息つくことも
立ち止まることもない。
だから友人の電話で
仕事を中断させられると
嬉(うれ)しくなると」

私もかつては、
原稿用紙にペンで書いていた。

商業界時代は商業界の原稿用紙、
今は自分の名前入りの商人舎の原稿用紙。
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400字書くと、
次のページに行く。
この「間」が原稿用紙の良さだ。

ペンは大抵、万年筆だった。
カートリッジのインクが切れたりする。
そこで吸引式のものに変えりした。

万年筆は手間がかかる。
しかし、そこがいい。

これまではブルーのボディのパーカーが、
一番馴染んだし、使った時期も長かった。

キャップのところが壊れて、
それでもペン先の滑りが抜群で、
握りやすさもちょうどよかったので、
セロテープを巻いて使った。
この万年筆が使えなくなって、
とても悲しかった。
原稿書きのスピードも落ちた。

ウォーターマンやモンブランも使った。

いずれも、いつのまにか、
どこかへ消えていった。

今、手元に残っているのは、
ケルン空港で帰国時に衝動買いした、
太字のモンブランだけ。
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しかもこれは今、
スーツの胸ポケットの飾りになっている。
たまに本などにサインするときに使う。

みんな、
どこに行ってしまったのだろうか。

若いころは、
ボールPentelを使っていた時期もある。
これは滑りがよくて、
速く書ける。
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原稿用紙やペンは、
仕事を推進してくれる要素であり、
邪魔してくれる要素でもある。

そして手書き原稿の頃は、
タバコを吸っていた。

というよりタバコで、
一息ついたり、
立ち止まったりしていた。

パソコンで原稿書きをするようになって、
タバコもやめた。

今は、何が「邪魔する要素」なのだろう。

多和田さんもこの本で書いている。
「この日記を書き始めてから、
毎日手書きで原稿用紙の升目を
埋めるようになった」

多和田さんは鉛筆だが。

コラム編著者の鷲田さん。
「引き寄せたり遠ざけたり、
加減を見たりと調子を変える、
そんな隙の時間がないと、
仕事自体が酸欠になる」

そう、仕事が「酸欠」になるのは、
避けなければならない。

仕事には酸欠にならない要素が、
準備されていなければならない。

「仕事を邪魔してくれる要素」こそが、
意外にも重要なのだ。

イオンの全館禁煙措置。
イオンnews|
国内115社全事業所で「就業時間内・敷地内禁煙」

このとき、「仕事の酸欠」には、
どんな対処法を考えているのだろう。

タバコを吸わせない分、
仕事の効率が上がる。
万が一にもそう意図していたら、
これは失敗する。

顧客や従業員の健康や環境を、
第一に考えていれば、
きっとうまくいく。

しかしその時にも、
「仕事を邪魔する要素」という、
パラドックスは必須だと思う。

〈結城義晴〉

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