天皇誕生日の祝日。
令和となって二度目の2月23日の祝日。
大化の改新の「大化」以来、
248番目の元号。
日本の歴史の長さを痛感する。
当時の菅義偉官房長官が、
2019年4月1日に、
新しい元号を発表した。
それが今、内閣総理大臣。
ずいぶん昔のことのように感じる。
コロナは時間を早める。
「象徴天皇」という珍しいシステム。
しかしそれがわが日本だ。
私はこの在り方を評価している。
イギリスおよび英連邦王国では、
女王公式誕生日の祝日。
Queen’s Official Birthday。
6月第2土曜日。
英連邦にはイギリス本国はじめ、
カナダやオーストラリア、
ニュージーランドが加盟している。
大英連邦とはイコールではない。
日本では天皇・皇后両陛下の写真が公開された。
そして61歳の天皇スピーチ。
「皇室の在り方や活動の基本は、
国民の幸せを常に願って、
国民と苦楽を共にすることだと思います」
「時代の移り変わりや社会の変化に応じて、
状況に対応した務めを考え、
行動していくことが大切であり、
それがその時代の皇室の役割であると
考えております」
失礼な言い方かもしれないが、
自らのポジショニングが見事に表現された。
「今しばらく、国民の皆さんが、
痛みを分かち合い、協力し合いながら、
コロナ禍を忍耐強く乗り越える先に、
明るい将来が開けることを
心待ちにしております」
今年は新しいことが語られた。
「オンラインでお話してみたところ、
臨場感があり、
人と人とのつながりを
肌で感じることができました」
「オンラインによる活動に
新たな可能性を見出せたことは、
大きな発見と言えます」
「オンラインなりの課題もあるでしょうが、
引き続き状況に応じた形で
活用していきたいと思います」
ここまでの冒頭のスピーチは、
すべて現在のわれわれの商売の在り方と、
一致する。
小売流通業、サービス業、消費産業も、
顧客の幸せを願って、
顧客と苦楽を共にすることだ。
時代の移り変わりや社会の変化に応じて、
状況に対応した務めを考え、
行動していくことが大切であり、
それがその時代の商業の役割である。
今しばらく、顧客の皆さんが、
痛みを分かち合い、協力し合いながら、
コロナ禍を忍耐強く乗り越える先に、
明るい将来が開けることを心待ちにする。
ちいさな喜び、
ささやかな幸せ、
あすへの希望。
そのうえでオンラインの可能性を見出す。
天皇誕生日の言葉は、
あらかじめ用意された文章を、
淡々と読んだものだが、
かの総理大臣より、
内容が的確だった。
心に響いた。
「自助、共助、公助」と言われても、
それが商売や仕事とはつながらない。
ちいさな喜び、
ささやかな幸せ、
あすへの希望。
たとえば菅義偉の就任演説は、
この三つのコンセプトとは結び付かない。
そこに根本的な問題がある。
国民の多くは、
東京五輪組織委員会会長を、
密室で決定してはいけないと、
意思表示した。
しかしその内閣総理大臣は、
二階俊博幹事長をはじめ、
自由民主党の派閥の長たちによって、
あらかじめ密室で選ばれ、
形式的な総裁選挙で選任された。
同じ構図を見せつけられた。
それが日本の選挙制度であるから、
仕方のないことだが、
東京五輪組織委会長選任程度のことで、
これだけ国民が公開性を求めるのならば、
内閣総理大臣の選出こそ、
もっともっと公(おおやけ)であるべきだろう。
その意味でアメリカ大統領選挙は、
ちょっとうらやましい。
いくら書いても詮無いことだが。
それでも必要なのは、
世のため、人のために、
自ら存在することだ。
それを実行して見せることである。
天皇のスピーチは、
それを示していて、
嬉しくなった。
「国民のために仕事する内閣」を標榜しつつ、
「自助、共助」、そのうえで「公助」では、
たとえばコロナ禍の情勢は切り抜けられない。
9月に新しい内閣を組織してからのことを、
思い出す。
日本学術会議メンバー選任を拒否し、
コロナ禍進行中にGo Toキャンペーンを進め、
ワクチン接種は先進国で最も遅れた。
国民に、社会に、
そのうっ憤が溜まっている。
だから最後に、
2020年の商人舎標語。
「世のため、人のため。」
ひとつひろえば、
ひとつだけ街が美しくなる。
1本植えれば、
1本だけ地球がよくなる。
ひとつ売れば、
ひとつだけ喜びが生まれる。
ひとつつくれば、
ひとつだけ価値が生じる。
ひとつ運べば、
ひとつだけ経済が回る。
世のため、
人のため。
客のため、
店のため。
街のため、
国のため。
母のため、
父のため。
子のため、
孫のため。
妻のため、
夫のため。
愛する人のため、
未来の人のため。
2020年代の初頭、
令和2年のはじまりに。
ひとつひろえば、
ひとつだけ街が美しくなる。
1本植えれば、
1本だけ地球がよくなる。
ひとつ売れば、
ひとつだけ喜びが生まれる。
世のため、
人のため。
客のため、
店のため。
己のため。
〈結城義晴〉