結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2021年03月14日(日曜日)

渋沢栄一「青天を衝け」の「士農工商」の体験と融合

NHK大河ドラマ。
「青天を衝け」
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大正15年生まれの父が大好きで、
毎週、毎年、飽きることなく観ていた。

2014年11月4日に逝った。

私はテキサス州ダラスにいた。
20日間のアメリカ滞在。
帰国はかなわず、
通夜や葬式にも出られなかった。

2014年の大河ドラマは、
第53作の「軍師官兵衛」だった。

父は第1回からずっと観ていたから、
53年間、歴史ドラマを楽しんだことになる。

今年の「青天を衝く」は、
渋沢栄一の物語。

今夜の第5回は、
「栄一、揺れる」
無題

吉沢亮演じる栄一が、
本を読んで清のアヘン戦争を知る。
開国した日本の未来を危惧し、
心が揺れる。

このドラマは栄一の個人的な成長と、
幕末から維新にかけての日本の動向とが、
二次元中継で進められる。

やがてそれが一体化していくのだが、
今日は水戸藩主の徳川斉昭が暴走し、
老中の阿部正弘、側近の藤田東湖からいさめられる。
そんなとき、大地震が江戸を襲って、
世間が揺れる。

このドラマの狂言回しとして、
毎回、徳川家康が登場する。

北大路欣也が堂々と演じるが、
今回は「士農工商」を説明する。

自分がつくった身分制度だというが、
実は中国の古典が初出。

司馬遼太郎が調べている。
司馬作の『この国のかたち』(文藝春秋)。

「74 士」の項では、
「士農工商というのは、中国のことばである。
紀元前の中国の古典『国語』にすでに見えていて、
以後、中国や朝鮮における儒教文明の
四民の分け方の慣用句になってきた」

1817年に来日した朝鮮通信使の申維翰は、
日本の国を観察して報告した。
「国に四民あり、兵農工商」

「商は富むといえども、
税法がはなはだ重く、
工はその技が巧みであるが、
製品が廉価である。
農はもっとも苦しいが、
年間の租税のほかに他の徭役はない」

「士」は武士、すなわち兵であると見立てた。

朝鮮王朝の李朝は1392年から1910年まで続く。
その間、朝鮮にも「士」が生まれた。
それは「ソンビ」と呼ばれ、
儒学者をはじめとする書を読む人だった。
中国に倣った「科挙」制度に合格した、
いわば知識人である。

朝鮮の「士」は学者で、
日本の「士」は兵士だ、
と言いたかったのだと思う。

しかしそれでも士農工商の四民を、
日本の江戸時代の特徴ととらえた。

結城義晴著『Message』から。

「士農工商」

「士農工商」の序列は、
誰がつくったのか。
徳川封建政治を支える身分制度として、
当時のお上が考え出したものなのか。
私はそうは思わない。

「士農工商」は
もっともっと前から存在した。
農業や工業や商業が、
そして軍人としての武士が、
生まれてくる過程の中にこそ、
「士農工商」の階級分化の理由があった。

春山満を知って、
私はハッと気づかされた。

「士農工商」が
人間の肉体的な強さの序列によって
機能分化してきたことに。

ずっとずっと昔、
「士農工商」は
フィジカルな能力の高い順に
位置づけられたのだ。

最も強い者が、
人間を打ち倒す軍人になった。
次に強い者が、
自然と闘い、農作物を生産する
農民となった。
三番目に強い者が、
道具を使ってモノをつくる
工の民となった。
そして一番体の弱い者が、
商人となった。

私たちの意識の底に残っている
肉体的序列としての「士農工商」は、
21世紀にはあとかたもなく消えうせ、
頭脳と言葉によって、
社会に変革がもたらされるに違いない。

すなわち、
考える能力と訴えかける情熱によって
ビジネスが再編成されるのだ。
私は、それが新しい商業の出発だと思う。

だから商業人は見つめなければならない。
商業人は、考えつづけなければならない。
商業人は、訴えかけつづけねばならない。
春山満のように――。
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故春山満さんは、
1954年、兵庫県生まれの実業家、啓蒙家。
24歳で進行性筋ジストロフィーを発症、
数年後には首から下の運動機能を失う。

1988年、「ハンディ・コープ」創設。
その後、1991年、自ら会社を設立。
㈱ハンディネットワーク インターナショナル。
介護・医療の独自商品を開発し、販売した。

つまりハンディキャップをばねに、
生涯を生き抜いた商人であり、
知識人だった。

2003年には米国「ビジネスウィーク」誌で、
アジアを代表する指導者として、
「アジアの星」25人に選出された。

2014年2月23日、呼吸不全で死去。
享年60だった。

㈱商業界の取締役編集統括のころ。
2月の商業界ゼミナールで、
春山満さんに出講してもらった。

春山さんは車椅子で壇に上がり、
静かに自分の考えを述べたが、
私は心から感動した。

そして「販売革新」誌の巻頭の、
[Editor’s Voice]に、
「士農工商」の文章を書いた。

春山さんは、
自著『僕はそれでも生き抜いた』の通りに、
命を全うして、
2014年2月に永眠した。
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最も強い者が、
人間を打ち倒す軍人になった。

次に強い者が、
自然と闘い、農作物を生産する
農民となった。

三番目に強い者が、
道具を使ってモノをつくる
工の民となった。

そして一番弱い者が、
商人となった。

渋沢栄一はこの農の民としてまれ、
士になろうと志し、
結局は「商」の民となり、
「工」の民となった。

しかしその本質は、
朝鮮でいう「ソンビ」でもあったと思う。

だから「論語」を重視した。
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つまり渋沢は士農工商を、
すべて経験することになる。

「日本資本主義の父」と称されるが、
それは身分の序列を否定し、
士農工商の融合を図ったという意味の称賛である。

〈結城義晴〉

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