埼玉県の蕨市と戸田市。
東京都との境目。
店舗クリニックした。
その理由は、
ビバモール蕨錦町がオープンしたから。
核店舗はスーパービバホーム蕨錦町店。
そしてヤオコー蕨錦町店。
鈴木國朗さんとご一緒。
一瞬だけマスクを取って。
スマイル。
朝の8時から夕方6時ごろまで、
10店舗を巡った。
アメリカでもヨーロッパでも、
アジアでも日本でも、
結城義晴のやり方。
時にはじっくりと1日中、
その店に腰を据えて調査することもある。
これは故森龍雄先生の方法論。
アメリカのウォルマートなど、
1日中、1店舗に張り付いて、
隅から隅まで調査する。
その結果が一冊の本になった。
森龍雄著『ウォルマートの成長戦略』
商業界刊のいい本だった。
編集担当は故高橋栄松さんだった。
私は1978年の春先に、
関西スーパーで1週間研修を受けた。
それは開店から閉店まで、
店をウォッチングすることでもあった。
さらにロサンゼルスのラルフでは、
24時間ウォッチングをやった。
1985年だったか。
しかし最近の米国研修などでは、
通常、1日10店ほどを訪れる。
業態やフォーマットを理解するためだ。
今日もヤオコーは3店。
それからライフコーポレーション、
マルエツ、サミット、オーケー、
そして西友と東武ストア。
この蕨市は日本で一番面積が狭い市だ。
そのかわり単位当たりの人口密度は、
日本の市町村で最も高い。
そこで激戦が展開されている。
ヤオコーが新店をオープン。
競争はどう変わるか。
「埼玉蕨の陣」
月刊商人舎4月号でお届けしよう。
クリニックの途中、ここに寄った。
㈱日本流通未来教育センター。
2002年10月設立。
㈱マルエツと㈱ライフコーポレーションが、
共同でつくった教育機関だ。
ライフ会長の清水信次さんと、
当時のマルエツ社長の吉野平八郎さん。
お二人が意気投合してつくったのが、
他社にも公開する教育・訓練の場。
生鮮食品の加工技術の実務訓練、
店長・バイヤーなど中堅幹部教育、
新入従業員向けの基礎教育など。
私も一度、ここで講義する依頼を受けた。
実現しなかったけれど。
かつてこの地はマルエツの本部だったか。
私の勘違いかもしれないが。
マルエツの前身は、
高橋悦造の魚悦商店。
浦和市の魚屋として創業。
その後、1965年に、
スーパーマーケット1号店開店。
1970年、丸悦ストアーに名称を変えて、
1974年、マルエツに商号変更すると同時に、
多分、本社をここに移してきた。
その後、1977年2月、
東京証券取引所市場第2部に上場。
日本の食品スーパーマーケットで初の上場。
高橋八太郎さんが社長だった。
1978年には、
千葉県の㈱プリマートを経営統合。
首都圏で100店を超える店舗を展開して、
日本最大だった。
その後、1981年には、
神奈川の㈱サンコーと合併。
サンコーがダイエー傘下だったから、
存続会社はマルエツになったけれど、
実質的にダイエー傘下に入った。
この時点で、1都3県に145店を展開。
その後、ダイエーがイオンの子会社となり、
マルエツもイオングループの企業として、
ユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングスの一員となった。
懐かしい。
私が㈱商業界に入って、
販売革新編集部に配属された1977年、
首都圏の代表的なスーパーマーケットは、
マルエツ、いなげや、
そしてサミットストアだった。
あとは北関東のカスミストアととりせん。
ヤオコーもベルクもエコスも、
まだ規模は小さかった。
マルエツは群を抜いて、
店数が多かった。
考えてみると現在も、
ユナイテッドは520店。
店舗数は日本最大のスーパーマーケットだ。
故田島義博学習院大学院長。
流通理論の権威であった。
その著『成長と膨張』にある。
「規模拡大は、
成長によってももたらされるが、
膨張によってももたらされる」
「外見的には同じような規模拡大も、
成長と膨張では、全く意味が違う」
マルエツの規模拡大が、
膨張であったとは言わないが、
常に店舗数ナンバー1ではあった。
私はその歴史を見てきた。
田島先生は書いている。
「すべての規模拡大が、
規模経済を結果するとは限らない」
規模の不経済を生むこともある。
さらに恐ろしいことを書いている。
「企業が膨張ではなく、
本当の成長をしているとしても、
成長そのものが、
成長阻害要因を生むことによって
成長を制約するようになる」
マルエツがそれだとは言わないが、
第1に規模拡大には成長と膨張があって、
膨張であってはいけない。
第2に規模拡大は、
規模の経済を成果とするだけでなく、
規模の不経済を生むことがある。
第3に、きちんとした成長そのものが、
成長阻害要因を生んで、
成長を制約することがある。
不思議なことに、
ウォルマートにはそれがない。
今回の単行本にも、
このことは書いた。
現場のクリニックは、
様々なことを考えさせてくれる。
ありがたい。
〈結城義晴〉