朝の東海道新幹線のぞみに乗った。
南九州は梅雨入りして、
東日本も曇り空。
小田原のあたりで一瞬、
富士の頂が垣間見えた。
しかし全容は見えない。
富士川を渡っても、
姿は見えない。
名古屋を通過して、伊吹山。
京都までずっと仕事。
手紙を書き続けた。
朗報です。
新著『コロナは時間を早める』
二刷が、3日早まって14日夕方、
刷り上がる。
印刷製本は三永印刷㈱。
お世話になった。
感謝します。
この本の最後の—ページにメッセージを書いた。
「知識商人に寄す」
――発刊の辞
商人に学問は必要ない、と言われた。商人に難しい理論や論理は無用である、とも喧伝された。しかし「商人の技術」は客観化されて、高等学校に商業科が誕生した。最高学府においては、その「商人の学問」が確立されて、大学や大学院に商学部が生まれた。商売のためのマーケティングが誕生し、マネジメントが構築され、イノベーションが追究された。
商人とは小売り商いをする者に限らない。製造業、卸売業、サービス業、その他の関連産業やIT産業において、営業と販売とマーケティングに従事する者たちすべてを、商人と呼ぼう。
商売の知恵や知識は、それらすべての商人から求められ、深められることを、自ら欲している。商売の精神と技術は、すべての商人から愛され、高められることを、自ら望んでいる。かつても、現在も、商売に関する言葉と論理は、多くの人々によって高められ、深められてきた。
ここにわたしたちは、商人の知恵と知識、精神と技術、言葉と論理とを、時代のメルクマールのごとく総括し、集大成し、上梓することを決意する。現場・現物・現実に即して、Practice Comes First! を貫徹し、難しいことを易しく、易しいことを面白く、面白いことをより深く、考察、分析、論述、表現してゆくことを宣言する。
しかしながら、多くの商人を煽り、貶める甘言はなくならない。あまたの商人を迷わせ、道を外させる詭弁はふえるばかりだ。昭和の時代に起こった商業の近代化が、平成の時代を通して、商業の現代化へと、わたしたちを誘う。さらに次の元号の時代へ向けて、わたしたちは甘言や詭弁を排し、それらを見分けることのできる知識商人をこそ同志と考え、真の商売を探求するものである。それら知識商人の総力によって、商業の現代化を志すものである。その達成のため、世の知識商人との喜ばしき連帯を期待する。
読む、知る、考える、行う。検証する。再び実行する。顧客のために。再び、読む、知る、考える、行う。顧客のために。それが知識商人の尊い態度である。
2018年11月 結城義晴――
鈴木哲男先生の著書にも、
この発刊の辞を入れた。
『流通RE戦略』
EC時代の店舗と売場を科学する
鈴木先生のこの本、
中国の出版社から、
翻訳本が刊行される。
目出度い。
岩波文庫の岩波茂雄は昭和2年5月、
角川文庫の角川源義は1949年5月、
そして講談社文庫の野間省一は1971年7月。
それぞれに格調高い文章で、
発刊の辞、刊行の辞を記している。
結城義晴もそれに倣った。
さて東海道新幹線、
京都駅に着いたら、
JR奈良線で奈良駅へ。
それから車で10分。
「ミ・ナーラ」
1989年(平成元年)10月2日に、
奈良そごうとしてオープン。
そごうの第24号店だった。
しかしそごうが民事再生法を申請して倒産。
2000年12月にこの店も閉店。
2003年7月、イトーヨーカドー奈良店開業。
しかし2017年9月閉店。
さらに2018年4月、ミ・ナーラとして再出発。
核テナントはイオン傘下の「光洋」だった。
中型のスーパーマーケットを出店した。
しかし光洋も今年1月に撤退。
そのあとに4月29日、
関西ロピアが開業した。
この土地は、
奈良時代の権力者・長屋王の邸宅跡である。
そごう、イトーヨーカドーが、
出店、撤退をしたあたりで、
地元では「長屋王の呪い」と言われ始めた。
そのあとにミ・ナーラと光洋が開業したが、
光洋も3年足らずで退店し、
その「呪い」は信ぴょう性を帯びてきた。
しかしオープン前の4月14日に、
私はこの地を訪れ、この物件を見て、
大丈夫だと思った。
「奈良県中から顧客が来る」
そう、断言した。
1階の広い売場の半分以上は、
現在、フードコートになっている。
話題(?)の「スギ薬局」が入店している。
1階フロアの奥にロピアの関西5号店。
店頭にはデジタルサイネージが9基。
青果部門は単品量販の売り方が、
一段と拡充された。
八百物屋あづまの壁面のイラストも、
さらに洗練された。
よく見ると、高木秀雄さんが、
座っていらっしゃる。
㈱ロピア創業者にして名誉会長。
雨の平日にもかかわらず、
この顧客の数。
壁面には奈良の大仏。
これはロピアのアーティストたちによる、
直描きの作品。
ウェグマンズ張りの汽車の模型が走る。
リカー売場の上段には、
小野田酒専門店の暖簾。
バイヤーの名前がショップ名になる。
売場では奈良県の顧客たちが、
嬉しそうに話し合っている。
㈱関西ロピア社長の福島道夫さんと、
執行役員営業本部長の佐藤博和さん。
わざわざ出迎えてくれて、
店内とバックヤードを案内してくれた。
ありがとうございました。
いつも必ず、イノベーションがある。
それがロピアの新店だ。
福島さんも佐藤さんも、
いつもいつも、
商売のイノベーションを考えている。
「商売の知恵や知識は、
すべての商人から求められ、
深められることを、自ら欲している」
「商売の精神と技術は、
すべての商人から愛され、
高められることを、自ら望んでいる」
ロピアの店と売場と商人たちには今、
この商売の「知恵と知識」「精神と技術」が、
確かに宿っている。
私は、世の知識商人との、
喜ばしき連帯を期待するものである。
〈結城義晴〉